『運命の日』
〜最終章〜
「ーーで、これをこうすると、こうなると。」
「そうそう。」
「ねぇ。あんたも大概お人好しよね」
「ん、そうか?まぁだってオレらが出来る事はこれぐらいしかないだろ?」
「…それもそうね」
「それに」
「?」
「『人外が人間の別れを祝ってはいけない』なんてこだわりはないからな」
その発言に、荒人神は、ニッと笑って、
「正解」
と言った。
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「あぁぁ。もうこんな時間か。大分寝たな」
結局昨日は深夜まで皆さんと飲み明かし、最後は飛烏に何故かスライディングヘッドされてKnock out。
いまに至る。あたりを見渡すと、1日目と同じように寝転がっている皆さんの姿があった。
気絶と疲労によって夕暮れまで寝ていたのか、自分が怖い。
ふと、かつて彼女が口にした言葉を思い出す。
「この祭の最後日の夜、『白恋峠』に来て欲しいんだけど…」
と。
白恋峠は一回メリィ達と行ったことがあり、その崖から見える景色は雄大で、森と海の情景が見事にマッチしていた。
「とりま、行くかね」
そう行って酒に倒れた亡者どもをまたぎながらそこを後にした。
結構長い道のりを歩き、息を切らしながら沈みゆく夕日と共に走っていく。
そして彼女が言っていた『白恋峠』にやって来た。
気づけばもう夕日は完全に落ち、小さな星達が輝き始めていた。
「綺麗な…」
と目の前の景色を口に出きた時、後ろから聞き慣れた声が入って来た。
「裕翔?」
それは、例によってメリィだった。
月夜に照らされ、金髪がより鮮明に輝き、彼女が超絶美人ということをより認識出来る。
「お、おおメリィ。」
「やっぱり来てくれたのね」
「当たり前だろ?」
「ふふっ そうね」
「…」
「…」
しばしの沈黙の後、彼女は浮かぶ月を眺め話し出した。
「ねぇ、私達出会ってどれぐらい経った?」
「ん〜、一番最初に会ったのが、俺が森でぶっ倒れてた時だから、あん時4月だろ?えー今8月だから、4ヶ月だな。」
「早いわね。」
「早い。」
「色々な妖怪や人にも会ったわね」
「会った」
「楽しかった?」
「そりゃ勿論。ここでの暮らしは色々びっくりした事もあったけど、おかげで退屈しなかったし、みんないい人達だし。本当天国みたいな所だな。」
「そう… でね、前から思ってたんだけど…やっぱり私達が出会ったのって『運命』…だと思うの。」
「『運命』…」
と言い終えた彼女は体の向きをこちらに向けそろそろと近づいて来る。
こんな至近距離は久しぶりなので、彼女の顔から視線を外す。
すると目の前の彼女が小さな声で
「見て」
と言って、視線を彼女に合わせた矢先。
俺にとって最強の事件が起きた。
「……ッ‼︎」
自分の唇に暖かく柔らかい感触がした。そう気づいた時には、既に唇と唇は重なっていたのた。
(やべぇぇぇぇぇぇ⁉︎)
やっと全身が物事を理解したとき、ドクンドクンと心臓が激しく鼓動し、体中が熱く火照っていく。
それは彼女なりの、優しく暖かい、何か力をくれるような、そんな口づけだった。
それから彼女はすっと唇を話し、そのまま俺の胸にうずくまる。
もう俺はなんやよくわからなくなり、パニックで死にそうだった。
その時、彼女の口から俺に対する大切な言葉を吐いた。
「裕翔…私は…あなたが、好き。大好き……です…」
弱々しく吐いたその言葉が、逆に俺に冷静を与えてくれた。
ずっと想ってくれていた。その『好き』という気持ち。そして今にも、震える心を奮い立たせ、苦し紛れにも教えてくれた。
これに答えないわけにはいかない。
俺の奥底に眠っていた、ずっと隠していた『それ』を。彼女のよりももっと、でかく暖かな気持ちで。
俺の胸にうずくまり子鹿のように震える肩を、そっと優しく抱きしめる。
「俺も、『大大大好き』だ」
また強く優しく、いつぞやの夜みたく、ただ抱きしめあっていた。
二人の気持ちを確かめ会った時、夜の静寂を切り裂く笛のような音がして、二人共視線を空に向ける。
弾けた色彩は、どこか二人を受け入れるような、後押しをしてくれているような気がした。
「裕翔。」
と呼ばれ再び視線を戻す。
その時の彼女の顔は、優しく微笑んでいたが、こころなしか寂しさという感情もあることを感じた。
「裕翔…これ」
て言って手渡されたのは、黄色や緑、水色の
色が入り交じった透き通る石のペンダントだった。
「綺麗だな。ありがとう」
「えへへ。絶対似合うと思って」
そしてまたもや夜空に花が咲く。
しばらく見惚れていると、隣の彼女が二、三歩離れて行き、振り返りながら言う。
「ありがとう。本当にありがとう。あなたと会えて良かった。」
「え?」
「どうか元気でね。」
「え?ちょっと待って…」
そして『運命の時』は来る。
「バイバイ…私の……大好きな人」
その時だった。俺の左脇腹に激しい衝撃が走り渡る。
「ゴフッッ‼︎」
その衝撃は凄まじく、体が吹っ飛ぶほど。
そして、吹っ飛んだ先は、崖の先。森へ落ちて行く。
薄れて行く意識の中、彼女を見ると、後ろで咲き誇る花火の光に照らされ、とても綺麗だった。
その彼女の表情は笑っていた。出会った時と変わらない、天使のような笑顔。そして涙を流していた。
彼女の口は、「さようなら」とそう動いているような気がした。
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「ーーありがとう、飛烏。手伝ってもらって」
「ううん、全然。また今度困ったことあったらいつでも呼んでね。頭突きに行くから」
彼を我が自慢の頭突きをお見舞いし、きちんと力を調節して、この村の境界線に落とした。
隣の彼女は吹っ切れたのか、いつもと変わらない式神使いの姿だった。
そんな彼女の手を引いて、ありったけの笑顔で皆が寝ている酒場に走っていった。
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オレと日照が酒場に戻ってくると、スヤスヤと安心した表情で寝ているメリィと、一仕事終え、あぐらをかき寝そべっている飛烏の姿があった。
周りの奴らはまだ眠ったままである。
「てな訳で頼むぜ、獏」
「ふぅわぁぁ、腹減った」
そういって白と黒のパーカーを来て、空中に浮く少年は、右手をオレらに合わせ、
「君たちは僕の力で眠くなーる」
と言った時、指を鳴らした瞬間に意識が吹っ飛んだ。
その後、自分以外全員眠っているこの状況でその少年は一人喜んでいた。
「久しぶりのご馳走だ。人一人の『存在を喰える』とは」
そう言って手を合わせ、
「では、斎内 裕翔君、いただきまーす」
それから、全員の記憶から、彼と言う概念が消え去ったことを、『夢を喰った』その少年以外にこの先知ることはない。
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ーー気がつくと、俺は暗い空間の中にいた。
「ここは…」
今ふと思い出した、俺は過去に一度此処に来た。
それがいつかはわからないが、確かに来た事がある。
ただあの頃とは違い、何も感じない。ただ自分という存在だけが空間を漂っていた。
「ああ、こんな所で…」
今度は本当に死を確信し、全てを悟り、目を瞑った瞬間だった。
まぶたの上からも分かる鮮烈な光が俺を照らした。
光が弱くなった時、目を開けると、その発光源は、首にかけていた石のペンダントだった。
その光がどんどん大きくなって行く。
そして、その石から光だけが抜き取られ、その大きな光が体の中に入っていく。
すると、今まで起きた事が頭の中で流れていく。
飛ばされたこと。
あの村に来たこと。
大切な人と出会ったこと。
色々な妖怪や人達に出会ったこと。
皆で飲み明かしたこと。
皆で祭を楽しんだこと。
彼女との気持ちを確かめあったこと。
あの村が、俺の『第二の故郷』だということ。
そして、気がつくと、俺は泣いていた。
それが何故か、今なら分かる気がした。
あの人達と、あの村で、あの場所で、過ごした日々と、これからの未来にほんのすこしの希望を抱いて、俺は目を静かに閉じた。
「…うと?……ゆうと!…裕翔‼︎」
「ん…」
誰かに名を呼ばれ目を開けると、白い天井と隣の窓から入る光に包まれ、ただボーッと天井を見つめていた。
横で泣きながら手を握りしめ、こちらを覗き込むその人は、母さんだった。
「母さん…」
「良かった……裕翔…」
彼女の声を聞いて急いで走って来た医師は、信じられないという表情のナースさんとは裏腹に、一緒になって涙を流していた。
どうやら俺が謎の強風に飛ばされたのは、4ヶ月前。しかもその謎の強風は、横の山から落ちて来た大きな岩にぶつかって森に落ちたところを、ちょうど後ろで見ていた方が、救急してくれたと。だから、俺は4ヶ月間眠ったまま。
さぞ母さんと父さん、友人やクラスメイトに多大なる迷惑をかけただろう。
そして、俺が目を覚ました時には、母が「裕翔、私よ、分かる?」と聞いたところ、俺の第一声は「なんかめっちゃ長い夢を見てた気がする。」だって。
うん、全然覚えてねぇや。
俺が起きたのが急だったので、医者達は大騒ぎ。母は父に連絡するため退室。部屋には俺一人になった。
しばらく窓の外を眺めていると、首にどこで手に入れたのかわからない、黄色と緑、水色の透き通る石のペンダントをつけていた。
「あり?こんなん持ってたかな。……まぁいいや。」
自分はあまりペンダントやらはつけないが、何故かこのペンダントだけは離さなかった。
離してはいけない、そう思ったから。
何故か大切だと感じたから。
「さーて、これからだな。本当に俺って幸せ者だな」
と言って、澄み渡る8月の空に向け言い放った。
おわり
はい、これで人命怪々劇
終わりです‼︎
いや〜、長かった〜。始めたのは2月から、なんか泣きそう。
見てくれた方、今までありがとうございました、そしてこれからも僕の作品をよろしくお願いします。
それではまた、いつか会いましょう、
アディオス‼︎‼︎‼︎




