渦の中の前夜祭
いやぁ更新遅れました。最近暖かいから眠くて…。
春だもん仕方ないね。
〜31章〜
暗闇の中から刺す妙な眩しさに顔を歪め、目を開くと、青く咲く花の木漏れ日に照らされ、寝そべっていた。
「あぁぁ〜。あり?みんなは?」
辺りを見回すと、昨夜宴があったとは思えないほど静かな空間になっていた。
その静かな空間に、一匹小さな器に注がれた酒を飲みながら佇む小さき者の姿があった。
「ああ、起きたか。」
「おう、一寸。皆は?」
「皆なら妖怪街道に行ったぜ?」
「ああ〜、そうなんだ。さて、オレも行こうかね。一寸、お前も行くか?」
「おらぁ無論そのつもりだが。」
「じゃ行こう」
そう言ってその小人の服をつまみ、頭に乗せ、妖怪街道に足を運んだ。
「いやぁ、にしてもどうだ?鬼童丸と、若との暮らしは。」
「ああ、非常に勝手が良い。鬼童丸の奴が
我が物になってから非常に生活が安定しておる。最近は口が達者になりおって、憎たらしいったらありゃせんわ。」
そう言って腕を組み、堂々と話す今様色の髪をしたそいつの名は、
御伽 一寸。
これまた世にも珍しい小人族。
もともと小人族は、数が少なく、人前にはでず、家のおこぼれや盗みなどで生きていくが、こいつは特殊で、何故か100里離れた里から抜け出し、道中鬼や妖怪に襲われたりしたが、小人族特有のすばしっこさと、頭の良さを生かしはるばるやってきたのだ。
性格は、正直で単純、好奇心旺盛、無鉄砲な
まさにリーダータイプ。
容姿は幼く、赤色の和服に黒の膝下ぐらいの半ズボン。
大きさは10センチ程度。手のひらに乗るぐらいの大きさ。
小人の特性の一つで常に裸足。武器はつまようじで、腰に帯革のように輪ゴムを巻きつけている。
こう見えて強大な悪鬼を倒した「小さな英雄」である。
「にしても小人っつうのは本当に小せえな。お前はでかくなりたいとか思わんか?」
「なーに言ってんだい。おれがでかくなったら只の人間になる。おれは『小さな英雄』だぜ?それに、大きいより小さい方が面白いからな」
「…そういうもんかね」
と二人で喋り歩いていると、目の前に大きな街道が現れた。
この街道に入れば、妖怪達の住む世界に入ることが出来る。
あいつらは妖怪界でも名の知れたヤツらだから大丈夫だが、普通の人間が迷い込めばまずそのまま帰ってこれる事はない。
「着いた。ここが妖怪街道だ。」
「うむ。なんと禍々しい妖気。これはまた面白くなりそうだ。」
「頼むからじっとしていてくれよ。あいつら珍しいものには目がないからな」
「良かろう。」
小さな英雄を頭に乗せ、跳梁跋扈蔓延る巣窟に足を踏み入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妖怪街道を進み、辿り着いたのは妖怪達の出店が連なる長い参道が広がっていた。
「裕翔!」
背後から声を掛けられ振り向くと、そこには少し恥じらいながらまじまじと見つめるメリィが、赤い綺麗な着物を着て立っていた。
それを見た瞬間俺の思考は停止した。
「へ、変じゃないかな…」
「……ッ‼︎」
ああ、もう声も出ない程に…
「綺麗だ………あっ」
綺麗過ぎてつい声に出てしまった。
それほど華やかで美麗で、金の髪がなびき、それを赤の着物が最高の色彩を際立たせていた。
惚れてまうやろ。
サッと彼女の顔を見ると、もういつもどうり赤面になっていた。
「イチャイチャしてないで早く行くわよ」
黄色と黒の着物を着て、夜重さんと歩いて行くジル様がいつもより大人っぽく見えるのはやはり着物の効力か。
普段着物を着ていない人物が着るといつもより綺麗に見える。
ま、みんなもともとふつくしいのだがな‼︎
「あ、見て見て!あそこ地獄まんじゅう売ってるよ‼︎ねぇ〜、買って〜。」
「買って〜。」
「うん、君たち分かったから両手を掴んでさりげなく扇子をするんじゃない」
騒がしい声のする方を見ると、右に菊、左にジュナが徹人の手を掴み、地面に肩手をつけ
組体操でやる扇子の形になっていた。
「にしても妖怪だらけだな」
「そうね。これからもっと混むわよ」
「じゃはぐれる前に召集かけよう」
てな訳で集まったメンバーはいつものメンツだった。
日照を始めとする地底人、八代、焔魔組。
10人以上が集まった。
子供達がはしゃぎ回る中、俺らメリィと結無
を連れて歩いていた。
「あ、金魚すくいだ」
と結無が金魚すくいに吸い込まれて行く。
すると、他の奴らも群がってきていた。
「よし、やるか。おっちゃん今年の両手最高は?」
「350匹中の312匹だよ」
「ふーん。余裕だね」
と自信満々に前に出て来た徹人はおっちゃんからポイをもらい二つ両手に持ち、構える。
皆が見ている前でこの威勢、こいつ…なかなか出来る‼︎
「制限時間は1分だ。それでどれぐらいとれるか、見せてもらおう」
徹人は始まる前に集中するため眼力を解放し、ただ金魚だけを視界に捉える。
そして、始まりの合図とともにポイを水につけた瞬間だった。
目にも止まらぬ早技で、金魚達が次々に宙に浮き上がる。
水しぶきが飛び散り、金魚達がボールに山積みに積み重なり、もうすでに2椀目に突入していた。
「すげぇ…」
としか言えない。ていうかもう、両手とポイが速すぎて見えないんだけど⁉︎
彼の神技に驚愕していると、1分なんて一瞬で過ぎた。
「終了‼︎」
手を止め、生き残ってる金魚達の数を数える。
「350匹中の342匹だ…ね」
「ああ、あと8匹…」
「いやいや頑張ったぜにいちゃん!」
「よっ、金魚すくい達人‼︎」」
今まで見ていた妖怪共が彼に拍手し賞賛を浴びせる。
どうやら金魚すくいは彼の十八番のようだ。
これは彼特有の能力にしか真似できない代物である。
その後、今度は射的で彗が見事な早撃ちを披露した後、大公園の超巨大噴水の前に集まった。
時刻は夕暮れ時、夜の街道を照らす街灯が、よりおどろおどろしく感じさせる頃、またみんなが大集合した。
「いやはや皆さんまたお揃いで」
「ああ、悠士君。一寸様も」
「どうも」
「で、噴水しょー?て奴はあとどれくらいだ?」
「あと…2分ぐらいでしょう。皆さん好きですもんね噴水ショー。」
と丁寧に焔魔の幹部が教えてくれた。
辺りを見回すと、一人暗闇に佇む小さな鬼が
オレと同じく小さき者をのせ、噴水を見ていた。
「おう、鬼童丸、若。お前らも見に来たのか。」
「あ、悠士さん。お久しぶりです」
「悠士久しぶり〜」
そう言って挨拶を交わす、黒の癖っ毛の小鬼の頭の上に立ち、誇らしげに笑う若緑のショートヘアに紫色の和服。
「いや〜、せっかくの祭なんだからとか言って若様が連れて行けと。」
「まぁ確かにその気持ちも分からんでもない」
「せっかくの祭なんだよ?みんなワイワイしてるのにわたしたちだけ家にいるなんてあんまりだぁぁぁだよ」
「仕方ないだろ、おじさんに朝早くから馬車で送ってもらうつもりか?」
「それはーー」
『ーー皆さんお待たせ致しました妖怪街道一世一代の噴水ショーを、開催いたします。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どこからか突然、街道全体にアナウンスが流れる。
私は、裕翔とあらかじめベスポジを確保して
いたので、まだかまだかと二人そわそわしながらその時を待っていた。
彼が前に買っていたたこ焼きを口の中に放り込もうとした瞬間だった。
『では皆さんお待たせ致しました。妖怪街道噴水ショーです!』
「あっ?」
「始まるわよ」
大公園の超巨大噴水の中央からサッーと水が噴き出す。
その水柱は、瞬く間にぐんぐん大きくなって天に伸びて行く。
そしてその水柱が山のような大きさまで来たその時、一斉に青い光が水面に映し出され、水柱に流し込まれていく。
その水柱の周りから飛び出す幾多の噴水達がまるで生きているかの様に動いていく。
皆が見上げた光景は誰もが目を惹く青の鮮明。
漆黒を照らす華麗なる蒼の神水が、幻想的としか言えない大迫力の空間を作る。
隣の彼は口にたこ焼きを残し、頬を膨らませながら目の前の光景に見入っていた。
何故だかこうして彼といる時間が儚く、短くも感じ、また永遠にも感じた。
それは心が否定しているということ。
彼といる時間に夢中になり短く感じられないほど、心が彼を求めているのだ。
彼は明日の夜にはこの世界から居なくなる。
それまでに伝えなければならない。
この気持ち…
「綺麗だな…メリィ」
「え?あ、ああうん」
「いやぁ、俺は幸せもんだぁ〜。こんな天使と最高の気分になれるなんてぇ〜」
「〜〜っ」
こんなたわいもない会話を何回しただろう。
彼の口から放たれる私への賞賛にはまだ慣れない。
それはそう、彼から放たれる言葉は決してお世辞なんかじゃなく、本当に心からそう思っているからだ。
だから、あんなに純粋に笑えるのだろう。
だがその笑みが逆に私の心に突き刺さり、小さな罪悪感を生む。
「メリィ、あいつの事、よろしく頼むわ」
と悠士は言った。要は、別れの最終日までの間、彼に勘付かれない様に、自分の気持ちを伝えろ、ということだろう。
「ねぇ裕翔…」
何故か口が勝手に喋りだす。
「ん?どしたの」
と彼が真っ直ぐに見つめてくる。
視線と視線がぶつかる。
と瞬間に、胸の奥の鼓動がどんどん早くなって行き、自分でも頬が熱くなっているのが分かる。
伝えなければ、今。
「裕翔、実は私……あ、あなたのことが……す、」
「す?」
「す…、好ーー」
『ーーいよいよ妖怪街道噴水ショーもラストスパート、盛り上がって行きましょう‼︎』
「おお、いよいよラストか〜〜」
そんな私の小さな勇気も、最悪のタイミングで揉み消される。
私は空になった心臓の器を抱え、ただ次々と照らし出されていく七色の水柱を空虚に見つめていた。
その水柱はどこまでも鮮明に光続け、二人を明るく照らし続けていた。
私にはそれが、「来るべき時は今じゃない」
と後押ししてくれているようにも感じられた。
「で、なんだったっけさっきの…」
噴水ショーが終わり、過ぎ去っていく人混みの中、頭を掻きながら彼が寄り添って来た。
だが今の私に、彼の問いに冷静に返せるほど平常心を保てていなかった。
「……わよ」
「え?」
「…なんでもないわよ‼︎」
そう言って彼に背を向け走りだす。
「め、メリィ!どこへ?」
後ろから私を呼ぶ声がしたが、構わず走り続けた。
葛藤に押し潰されそうになる。罪悪感と後悔と安心と不安と怒り。
色々な感情が溢れ出し、訳もわからず無我夢中で走り続けた。
そんな彼女とはうらはらに、月は、星は、街は、木や草、闇夜さえ、彼との別れを受け入れるように、明日という日を迎えに行く準備をしていた。
ーー明日は彼がいなくなる日。
つづく
はい。人命怪々劇、次回あたりで、ラストです。
ああ、今までが走馬灯のように流れていく…。
では次回、最終回で会いましょう、アディオス‼︎‼︎




