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人命怪々劇  作者: 伊庭 トラの助
最終幕
30/32

悪酔いの味方。

いやぁ春休みが終わり‼︎ああああイヤァァァ。

最終幕


〜30章〜



祭の前夜という事で皆英気を養える為、自宅で過ごしている。

町は屋台が並び、提灯の明かりが明るく照らし、人が行き交う。

山や空き地では、沢山の妖怪達が、夜な夜な酒を飲み交わし、魑魅魍魎大宴会となる。

しかも、ここの夏には、元の世界にはない「青文蝶(あおもんちょう)」と呼ばれる青い桜のような花が咲く。

皆それを見上げ、見惚れる程に綺麗な花だ。

どうやら、遅かれ早かれどうやら今日の0時丁度に皆さんで宴が始まるらしいので、それを楽しみにそこについている奴らもいる。


てな訳で、ただいま夜11:30分。あと30分でこの村の丁度1000年目。おそらく天幻村過去最高規模の祭になるだろう。


俺ら人間からすれば永遠さえ感じるその時間も大長寿の妖怪達からすれば一瞬に感じるだろう。


「いや〜。集まってるわね〜」

「数がやばいな」


と苦笑いしてしまうほど、咲き乱れる青桜の

下、色とりどりの色彩が鮮やかにうごめいていた。


俺とメリィはいつもの妖怪達がいる集まりの中に入って、喋っていた。


喋ってから20分後、いよいよ10分前という所に、今回の中心人物がのそのそと登場すると、その場が一気に盛り上がり、待ってましたと言わんばかりのコールを彼に飛ばす。


皆落ち着いた所で、彼は皆の前に立ち、開会の挨拶をする。


「ゔぅん。えー、今回1000年記念という事で、皆さんに集まってもらった訳ですが、オレからいう事は決まって一つです。

今まで沢山の人や妖怪達に世話になりました。

多分それはこれからも変わらないと思う。

だから、今までに『ありがとう』。

そして、これからも!どうか一つ、よろしくお願いします。

さぁ、皆さん用意はいいか?暴れまくれ〜〜‼︎」


ゴォォォン


と鐘がなり、皆酒を掲げ、歓喜を謳う。


『乾杯〜〜〜〜ッ‼︎』


瞬時に会場全体が騒ぐ。人も妖怪も見境なく皆笑って大団円。

俺も負けじと酒を酌み交わす。

すると、隣のメリィが小さな声で囁いてきた。


「裕翔、あのね…」


ん?と耳を傾ける。


「この祭の最終日の夜、『白恋峠』に来て欲しいんだけど…」


「分かった」


と、一言で承諾した。

何故だか理由を聞けなかった。

まぁ、それは今後の事にして、彼女に向け陶器を近づける。それに彼女も反応し、


「乾杯」


と小さく二人の陶器が重なった。


おそらくだがこの宴で一番の苦労人になるのは紛れもなく悠士であろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ったく、屈託のねぇ笑顔だな皆、ちくしょう」


皆酒を飲み回し、どんちゃん騒ぎの渦の中、一人しんみり大衆に向け吐いた。


良くもまぁこんなに集まったものだ。

オレは今までの事を思い出していた。


今まで色んな奴に出会った。


どこまでも元気で明るい天狗。

どこまでも素直で頼もし『かった』河童。

どこまでも自由で仲間思いの吸血鬼。

どこまでも優しくて、好き『だった』人妖。


クソみたいに強くたくましい親父、

天使のような温かくて優しい母さん。


おかしくて、変わってて、奇妙で、残酷で、愉快で、楽しくて、面白くて、幸せな。そんなバカ共。


オレに生き方を教えてくれた尊敬すべき先生達。


「馴れ初めなど捨てろ、それはいずれお前の足枷になる。」


誰かが言っていた。


少なくとも昔はそうだったのかも知れない。

だがそれも過去の話。今はそう思わない。


気づけば、こんなにも愛すべきバカ達がオレの心にいる。


これからもそれだけは変わらない。

ならば守り抜こう、この愛すべき宝物を。この身朽ち果てるまで。全力で。


「ワッツ⁉︎」

「えへへ、びっくりした?した?」

「何だ、三船か…。びっくりさせんなよ」

「私ら幽霊はびっくりさせるのが生き甲斐ですから」


と胸を張って話すその亡霊は、楠若(くすわか) 三船(みふね)

日本の強力な水軍の楠若氏の跡取り娘。新橋色のミディアムショート、麦わら帽子を被り、黒と青の着物の半そでを肩まで捲り上げている。

いかにも漁師というのがわかる。

こいつとは『久宿丸事件(くしゅくまる)』で出会った。


「で、皆は?」

「今、久宿丸メンバーは全員呑んでますよ。」

「未練のクソったれもないな」


ははっと笑った後、亡霊の集まりに消えて行った。

なぜそもそも亡霊が酒を飲めるのか、これは天幻の七不思議である。

陶器の酒を飲み干す、その美酒の快感。

ほんのり甘く、それでいて大胆に。


「ゆうーし‼︎」

「おうジュナ。どした」


気づけば隣にさりげなく座っている小さな吸血鬼がいた。

酒を含んでいたからか、彼女のスキルなのか全く気配が無かった。

いや、これは後者が正解か。

彼女は吸血鬼。しかもその中でもバケモノじみた底力を秘めている。もう少し成長して、自分の力を制御すれば、天幻村屈指の強者になれるだろう。


「ひまだから」


何て純粋な理由。少なくともあの中に居れば暇はしないだろうに。


「お前も笑って踊ればいいじゃねーか?」

「いや、皆あんなに笑って、歌って、なんかバカみたいだから」

「はははっ、何言ってんだよ、お前ももうちょいでかくなったらあんなのになるんだぞ?」

「うわ、じゃあでかくなりたくない。バカは嫌だ。」


なんて生意気な。まぁそれがこいつの良さでもある。


「なぁ何でお前は、オレにばっか構うんだ?」


まっすぐ純粋に、当たり前のように聞いてみる。

すると、彼女はまっすぐに曇りのない目でオレの顔を見ながらこう答えた。


「強いから」


強いから。

その答えは果たして正解なのか、

間違いなのか。

弱い者はどうなのだろう。


「じゃあ、オレが何の能力も持たずただの弱い奴だったら?」


「興味ない。弱い奴は面白くないから。」


と答えた。

もうその思想は完全に挑戦者(チャレンジャー)そのもの。

または、絶対強者の物事の捉え方。

強者と弱者。

弱い奴は死に、強い奴が生きる。

弱肉強食の世界において絶対的なルール。

それもそう仕方ない。何故なら彼女はまぎれもない強者だからだ。影を操り、姉よりも色んなものを作り、使う。戦闘においては、元々の高い戦闘能力に、善悪の区別がはっきりわかっていないため、その純粋さを含め、姉を上回り、兄と互角に渡り合えるほどだ。

彼女にとって『命』は簡単に殺せてしまうちっぽけな物なのだろう。

だが、彼女は変わった。オレと過ごしているうちにちゃんとそういうのを理解させるように努力して、弱者を簡単に殺らなくなった。

だが、まだ若い。いつ道を踏み外すか分からない。


「ーーそれにね」

「ん?」

「わたしは、ゆうしが『好き』だから」

「…」

「だって、面白いし強いし、バカだもん」

「バカは嫌い何じゃないのか…?」

「ゆうしだけは特別」

「…そうか」


ニッと笑みを見せ、照れているのか少し頬が赤くなっていた。

オレは彼女の頭を優しく撫でる。

いつかそんな弱者(バカ)を守れる、強い奴になれと願いながら。


しばらくそうしていると、何か大量の気配を感じた。

何か嫌な予感がしたので、一応皆がいる会場に戻る。


すると、それはやはり的中した。


「あー、ゆうしにいちゃんだぁ」

「うわ、まじかよ何でガキどもが」

「ん?今ガキて言いました?」


ゾーッと嫌な気配が背後から、近づいてくる。

バッと後ろを振り返ると、そこには優しく微笑んでいる真琴先生が。

表面上は笑っているが、魂がこもっていない。


「全くあなたは口が悪すぎます!」

「す、すんません…」


何故かその場で正座説教。そして、子供達がペシペシ叩いてくる。痛い。

それと周りに笑われてる気がするんだが。


「はぁ。いいですよ、今日は。」

「マジすか‼︎」

「ええ。今日はあなたが一番の日ですから」


とため息を漏らしながら許してくれた。

ありがてぇ。


「はい!皆さん帰りますよ!集まって!こら悠士君を遊具にしない‼︎」

「え〜。ゆうぐと遊びたい〜。」

「おーい、もう名前ゆうぐになってんぞ」

「ほら帰りますよ。」

『は〜〜い』


はぁ、とその場にへたり込むと、聞きなれた声が聞こえてきた。


「はは〜、大変だねぇ、『ゆうぐ』君。」


とへたるオレの視界に入ってきたのは、赤と黒の法被を着て、半ズボンを履いている、

黒い髪にバカにした口調の大盗賊がそこにいた。


「何だただのコソ泥じゃないか。どした?誰のハートを盗んでいくのかな?」

「ああ?てメェ喧嘩売っとるんか?」

「ふっかけてきたのはてめえだろうが」


互いにおでこをくっつけ掴みかかると、隣から割り入るように入ってきたのは、近畿でも有名な豪族のお嬢さまの、浅緋色のクセ毛が特徴でふわふわした感じの、倉橋(くらはしの)宮守(みやもり)。基本おっとりしている。

通称『みやも』


「お二人とも、喧嘩は…」

「チッ」

「すまねぇみやもっちゃん。」


「仲良いわねあなたたち。喧嘩するほど仲がいいとはこのことね。」


そう言って笑いながら串団子を頬張る女が一人。

灰色のロングに片肌脱ぎの白の色とりどりの

着物を着ている、非常に男気のある、これまた大盗賊。

名は月和(つきのわ) 朝重(あさえ)

そう、焔魔の幹部、月和 夜重の姉である。


「んなわけあるか‼︎」

「いやいや、わっちらはとても仲のいい友ダチに見えるわよ、ねぇ夜重?」

「え、ええ…」


相席の妹は顔を引きつりながら苦笑い。


「ったく、お前のせいでみやもの一家に拾われて居候だぜ?この大盗賊がだぜ?」

「ああ、よかたやん。またあのドブ団子を食わされずに済んだじゃん」

「あれやっぱてめぇの仕業がコンチクショウ‼︎」

「大丈夫、あれオレも食ったから。」

「え、お前も⁉︎あはははバカだねぇ」

「メッチャドロドロしててねぇ」

「ハハハハそうそう」

「で、ミミズの通ってた土だからそれが逆に香ばしく感じる」

「ハハハハハうんうん」


なんて二人で談笑していると、背後から只ならぬ殺気がどんどん近づいてきているのを感じた。

この殺気は…ま、まさか…

バッと後ろを振り返る。

そしたらまたまた予感的中。

狂気レベルの威圧と、酒に酔いヒィック、ヒィックとしゃっくりしながら完全なる敵意を目に宿らせすぐそこまで歩いてきていた。


「アッ沙刃(さや)さん。お、お疲れ様ーー」

「おいゴラでめえ、ヒック、黒光、ヒィッ、折ったって聞いたぞ?あぁん?」

「おま、ちょっ、臭い酒臭い。」

「……」

「あの〜、折ったのは折ったのですが、どうやら相当刀の方が年期だったようで…」

「…やっぱてめぇはいっぺん…」


と呟いた次の瞬間、オレは何故かうつ伏せの状態だった。そしてみんなが駆け寄ってくる瞬間には物事を理解できた。

そう、ヤケ酒と悪酔いの所為で彼女の体が休眠を求めていたのか、オレのねぐらを掴んだまま、そのまま体重に任せ押し倒すようにして床に倒れた訳だ。

つまりは、オレが彼女の下敷になり、非常に密着した状態である。


「ちょっ、沙刃さん?」

「………」


返事はない。ただ小さな寝息が聞こえるだけだ。彼女は休眠体となったのか。


「ボォォイ、誰か早く助けてくれ〜」


すると、秘抄さんが片手で軽く彼女の襟首をつかんでどかしてくれた。


「サンキュー、秘抄さん」

「いいってことよ。こいつに友が出来た事が私らは誇らしいからな。」


多分オレ以外の奴らも思ったであろう、

(だろうね⁉︎)

と。


ーーガタンッ‼︎


とテーブルを叩く音が鳴り響き、一同凍りつく。

その静寂の音頭を切ったのはさっきまで喋っていた、熊坂(くまざか) 仁丸(じんまる)だった。

その仁丸が、低く唸るように聞いてきた。


「お前…『百浪刀(ひゃくろうとう)』はどうした?」

「……」

「答えろ‼︎あれがあれば牛若に勝てる‼︎」


この状況、答えるしかあるまい。だがそうなればこいつと殺り合わなけらばならない。


「…オレが持っているがあれはダメだ」

「⁉︎何故」

「あれは『血吸いただら』の妖刀だ。知ってるだろ?ただの人間が、あれに手を出すとどうなるか」


刀は生きている。刀は人を選ぶ。自分に見合う者にしか扱わせない、生半可な状態の者が触ると、逆に殺られるかもしれない。


「……」

「それにな、まずお前はこのままじゃ牛若には絶対に勝てない。」


「…なっ!どういうことだ、」

「自分で考えろ。少なくとも『それ』はお前の中にあるはずだ。」


こいつに足りないものは『決意』。心の何処かに『迷い』があって、それが足枷となり、本当の自分を出し切れていない。ましてや、そんな状態であの妖刀に触れてしまえば、軽く想像できる。

迷いのない真っ直ぐな牛若と、

迷いがあったから生きてこれた仁丸。

この二人の戦いはこれからも続いていく。双方どちらかの命が朽ち果てるまで戦い続ける。

強者はどちらか、弱者はどちらか。


「うぅぅぅ…」

「ハァッ⁉︎沙刃さん、おはようございます」


のそっ立ち上がったのは、日本で数ある名工の中でも伝説とまで呼ばれた鍛冶屋、

一文字(いちもんじ) 沙刃(さや)。黒の腰ぐらいまでのロングに、青のメッシュが入っており、彼女の性格故か、ボサボサである。紺と青の襟付き半袖。同じ色の長いスカート。

性格は最悪、ではないが、この変でも特に曲がりもの。普段は、誰に対しても敵意丸出し、目上に対しても中性的な話し方は変わらず、常に機嫌が悪い。

機嫌が悪いと大分扱い辛くなるが、逆に機嫌が良くなると優しくなったり、明るくなったりするいわゆるツンデレ?タイプ。

って言ったら確実に殺される。それほど強い。多分、この名大妖怪達の中でも特に万里と大差ないぐらいか。多分そこらへんになってくると、災害レベル。


そんな沙刃さんに殺意丸出しの目でキッと睨まれる。

そして、ドスの効いた低い声を作り言った。


「悠士、黒光を出せ」

「あ、はい」


彼女に言われた通りに指笛を吹き、飛んできた黒光をキャッチし、折れてしまった刃をまじまじと見せた。

彼女はそれを黙って手に取り、しばらく眺めた後、黒光を鞘に収め、しみじみと吐いた。


「相当古い。500年は生きてるな」

「ごもっとも」

「…そうか。よし、私はこの祭が終わり次第すぐ持ち場に戻る。お前らも来るか?」

「行くか?」

「おうとも。(いい宝がありそうだ)」

「あ、私の物何か盗ったら…その首が飛ぶと心得る事だ。」

「そ、そんなことしないっすよ、流石に…(やめとこ)」

「あと一人いいか?」

「邪魔にならない奴なら」


オレは後ろの方で飲んでいる彗達の方を指差し、彼女に伝える。


「あの子供だ。」

「そうか…まぁせいぜい首が飛ばないように気をつけることだな」


彼女はそいつを見て、何も驚かずそう言って向こうに歩いていった。

オレが指差したのは塚原 千代里。

以前強かった武士家 塚原の娘。だが敵の武家に奇襲を受け、家は燃やされ、家族を惨殺され、心を閉ざし、ただ刀を握りしめ、倒れていたところを彗に拾われ現在に至る。

彼女の刀は『心羅刀(しんらとう)』。

持つ者の心を惹き合わせ、それに対応出来ないと、心だけを抜かれ、生きた屍になる。

鮫皮、柄巻は白、刃紋は真っ直ぐ。刃紋は持つ者の心のあり方により変わる。しかし、

名のある名工が造ったにしても、少し小さく軽い。一般的な日本刀と言うよりは、どちらかと言うと脇差の方が近い。

まぁ彼女が扱うにはちょうどいいだろう。



それから二時間経って、皆がデロンデロンに酔いしれ、魂だけが抜き取られたように眠りについた頃、一人の鬼は青染の桜を見上げながらしみじみと酒を飲んでいた。


辺りの妖怪達は、あぐらをかきそこらへんに寝そべっており、まるで亡者の屍のよう。


「皆眠てしもうたか。」


と、話しかけて来たのは、白の白髪に、小さな丸角が二本生えており、白と赤の着物が特徴のの『鬼蜘蛛』またの名を『土蜘蛛』。

800年生きている大妖怪で、一度、(みなもとの) 友成(ともなり)公を襲うが、彼の名刀 「蜘蛛斬り」で返り討ちに遭い、封印されるが、またも時間とともに復活。

その時は偶然そこに居合わせた彗と千代の二人に敗れ、今はここで静かに過ごしている。


「いやはや、それにしてもよくもこないに集まったものだな。それもお前さんのお陰でもあるからのぅ。」


それに笑って返す。


「いやいや、自分なんて全然すよ。ただ普通に自分のやりたいことやってるだけですよ」

「ならば尚更のこと。犬馬の労を取ることだって難儀であるのに、それを事ともせず潔しもしないなんて、なんて一頭地を抜く若者か。」

「いやいや〜、それ多としすぎですよ、蜘蛛さん」

「まぁ、まだ夜は長い。心中打ち明けようや。」

「ああ、ありがとうございます」


トクトクトクと酒を盃に注ぐ。

それを口に持って行く。


「うん、うめぇや。」

「いやぁ、なんやかんやここに来て早600百年。大分この村も変わったのぉ。」

「あ〜、そうなんですか?」

「うむ。今から600年前は、お前さんの叔父が生まれるぐらいの時でな、それは大層強かった。」

「爺さんが…」

「そして、我がいつか問うたことがあってな、『何故そんな力を持ってして尚もこんな村を守る?』と。そしたら、『これがワシの生き方だバカヤロー』と怒鳴られたが、結局病死する最期まで弱者を守り、気分絶頂のままパタッと逝きおったわ。」

「そうなんですか…」

「だから、お前さんにも聞きたい。

『何故そんな力を持ってして尚もこんな村を守る?』」

「……」


少し考えてみる。そうだ言われてみればなんでオレはこんな村を守り続けてるんだろう。

自分の為?

いや、違う。

みんなの為?

いや、違う。

先代達がそうだったから?

いや、違う。

オレは…


「オレは…自分の居場所を守るのではなく、『みんなのかえる場所』を守ってるんです。

天幻村は色々なもの惹きつける特殊な力があって、それはみんなのかえる場所でもあって。だから生きてても、逝ってても、あいつらのかえる場所を、オレは守らなきゃならないんです。だってあいつら、どっかいっても絶対いつかかえってくるでしょ?」

「……」


「だから用は…『これがオレの生き方だバカヤロー』です」


その答えに、土蜘蛛は少し目を丸くした後、何かおかしいのか、ケラケラと笑い出した。


「そうか」

(似ておる…親子揃って…)


「…ならば、それらを永遠に守り続けれるように、不死の命、欲しいか?」

「…というと?」


「…現世で不死に成れる方法はただ一つ。

『完全な"神"になること』だ。」


『神』

人知を超えた存在。

または全て、始まり、この世の(ことわり)

全ての生命の頂点にして、原点。

それ故に永遠の命を持つ。


だが、多分誰もが言うと思うが、なりたくないというのが本音。


「いや、いいです。オレはただの鬼、踏み外したり、それ以上にも成る気はないすから。

じゃあもし例えば、オレが永遠に死なない命を持ってるとして、今まで愛した奴らに先に逝かれて、でまた同じような奴らを愛して、死んで、生きて、死んで。結局そんな人生に、意味があるのかな、なんて。」


「やっぱりすごいなお前さんは」


「ハハッ、そんなことないすよ」


託した者から、

託された者へ。


そうやって続いていく命の螺旋が、

それが『永遠』なのかもしれない。


その後彼は去り、一人で見上げる青文蝶の花びら達がひらひらと落ちていく様を見ながら、小さく呟く。


「いつかみんなで…」


なんて小さな希望(のぞみ)を抱えながら、

青桜舞う世界を目に焼き付け、瞳を閉じた。




つづく


最終幕に突入と。最後の幕ということで気合い入れて頑張っていきたいです。

次回もお楽しみに。アディオス⁉︎

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