水滴飛び交う戦乱の中で
はい続けてのコメディ。ようやく日常っぽい感じになりました、トラの助でございます。
〜28章〜
全員がそう反応した時、粉砕された柵の残骸に埋もれていたギュラ公が、服についた土を払い、立ち上がった。ギュラ公、ま、前‼︎前‼︎と思った瞬間だった。
「チッ、お気にのタキシードが……って、ファ⁉︎」
立ち上がった彼の目にあられもない少女たちの姿が映り込む。
どうやら思考より体の反応の早かったようだ、鼻からトマトケチャップが滴り落ちていく。
すると、その状況をやっと理解出来たのか、手で顔を覆いながらあくまで紳士的に虚勢をはる。
「ご、ゴホン。フフッ、これはこれはお嬢さん達。大変失礼した。どうか気にせずにーーゴブッッ」
彼なりに頑張って紳士を演じていたが、もちろんそんなことが許される訳がなく、誰かが投げた風呂桶が眉間に直撃する。ナイスヘッドショット‼︎
とか言ってる場合ではなかった。
みんなかろうじて局部はタオルで隠してはいるが、最悪の状況であることには変わりない。
世界が止まったように感じたその一瞬が、音速を超えて動き出す。
「おい、野郎共これは…天国か?」
「『『『『だな』』』』」
と俺以外のケダモノ達が息を揃えて公言した瞬間、全員の眉間に豪速と化した風呂桶が見事に直撃し、コーンと言う戦慄が闇夜の暗闇に響き渡る。
すると、それを先駆けに、少女たちの咆哮が空間を支配する。
「きゃぁあああああああ‼︎見ないでぇええええ」
「僕は見てましぇぇぇん‼︎」
「悪魔にもそんな野生の本能が残っていたとはね」
「誤解だぁぁぁ‼︎」
「悠士〜、久しぶりに一緒に入ろうよ〜」
「だぁぁぁ、もう来んなぁぁ飛烏‼︎」
「男はケダモノ…男はケダモノ…」
「巫女っち落ち着いて‼︎」
「ん?何してるのかなぁ、彗〜?」
「し、師匠…な、ななんでここに」
「くたばれ変態‼︎クソ医者‼︎」
「邪魅⁉︎て、危な‼︎」
ありとあらゆる物事が同時に起き、露天風呂内は大混乱に陥る。
それらは事故というよりもはや収拾のつかないレベルだ。
そして、それは一瞬の出来事だった。
「ブッ……メ、メリィ.?」
「え……?」
咄嗟に後ろを振り向くと、そこにいたのはやはり彼女だった。
「メメ、メリィこれは違うんだ‼︎そうだこれは罠だ‼︎僕を陥れる為に作った罠だ‼︎」
そんな弁解も虚しく、もはや彼女の耳に届いてもいなかった。
彼女の顔が未だかつてないスピードで高揚し、みるみる赤くなって行く。
そしてそのサードインパクトが起きるまでわずかコンマ数秒の間だった。
「いやぁぁああああぁぁあああ‼︎」
「ファダァァァア」
瞬間、超音波並みの叫び声が、針を刺すように鼓膜に襲いかかる。
顔を歪め、耳を塞ごうとした刹那、左頬にヒリヒリとした痛みが走った。
「モワッップ‼︎」
メリィの平手打ちが見事に決まり、その衝撃で体制を崩し、そのままドボン。
それからだ、記憶ねぇ。
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男女渦巻く戦乱を戦い抜いた男共は、皆抜け殻のように肩を落としていた。当たり前だが、その分戦利品もついてきた。
一人は湿った黒い羽毛を見つめ、一人は、魔術師見習いに攻撃を受け丸焦げに、一人はクナイや刃物が脳天にぶっささり、一人は師匠にげんこつを受け大きなたんこぶを、一人は体中引っ掻かれた跡だらけ、そして俺は左頰に赤い手形をもらい、かなり悲惨な状態である。一旦全員集合して、男子一同その場で土下座した。
もちろんそんな簡単に許してもらえるわけもなく、女子たちの間で意見が分かれたので、男子を代表して、悠士がなんとか和解して、で今やっと一息ついた所。
「は〜。疲れた。風呂来て逆に疲れるとか今世紀最大の謎だわ本当。」
「いや本当すまなかった。風呂の柵を壊した上に皆の機嫌を削いでしまった。」
「いいよ、私ら全然気にしてないし」
「そうだよ、私なんか悠士の裸何回も見てるもん」
全員の冷たい視線が集まる。
「それは昔の話だ.って、なんだよその目」
だが今回の責任は半分オレにあるし、これは重大な罪になる。
「はぁ〜。ま、今回の柵代はオレが払っとくよ。女方の皆さんには日々世話になってるから。あと、これはオレからの感謝の礼だが、いつもこんなバカ共に付き合ってもらってありがとな。そんでこれからもよろしく頼む。いつかあのバカ共が迷ったりした時は、そん時は女方の皆が、あいつら支えてやってくれ。じゃ」
と、言い切り、部屋前に集まっていた男子一同に声をかける。
「よーし、お前ら〜、飲み行くぞ〜」
『うぃ〜す』
奇々怪々な魑魅魍魎が跋扈する今宵の夜は、まだまだ終わらない。
つづく
えー、次回ももうちょいつづきます。心なしかコメディの方が楽です。
次回もお楽しみに、アディオス‼︎




