夏のエンジェルに癒されて
春休み突入。今回から執筆中小説をうまく利用して書いていきたいです。
2幕
〜22章〜
俺が此処に迷い込んでから、早3ヶ月が過ぎた。
心地良かった春の風も、いつの間にか蒸し暑くなって、夏を思わせるようになった。
「あっち〜。7月の癖に暑過ぎだろなんだよこれ」
そんなことを蒼く澄み渡る空に向け呟いていると、後ろの部屋の奥に汗だくで寝転がる巫女が、いまにも死にそうに声で嘆いた。
「夏…なんて…だいきらい……だ」
あ、いま逝ったな完全に。
今年は天幻村1000周年記念が8月にあるので、みんなぼちぼち準備をはじめている。
どうやらこの村だけじゃなく、他の地域の妖怪や人も来るらしい。まぁ、だいたいはこの村に関わった人物かその親族だったりする。
すると、夏の暑さを忘れさせてくれるMy Angelが、川で冷やしていたスイカを持って来て来れた。
「スイカ、冷えてたから持って来たわよ〜」
「サンキュー、さすがMy Anjel」
「うん…My Anjel?私の天使⁉︎」
次の瞬間その肌白い顔が赤く染まる。その天使はおどおどしながらも、暑さにやられてのたれ死んでいる巫女を死者蘇生するために話し掛ける。
「ほ〜ら。あんた持って来たわよスイカ、食べる?」
しばらく沈黙した後、のそっと起き上がり、
「食べる」
と一言。死者蘇生できるとはやはりAnjelだな。
その天使はそのスイカを持って縁側に座っていた俺の横に腰掛けて来た。
「もう夏ね。」
「ああ〜早いな〜」
「どう?此処は。変わってるやつ多いけど、楽しいところでしょ?」
「うん、なかなかね。みんなそれぞれの生きたいように生きてるからな〜。いや〜にしても此処に来て色んな奴に出会ったな〜」
悠士と共に地底の竹藪の中に行った時、
白のタキシードを着て、足が悪いのか杖をついて一年中徘徊する緑髪のダンディな妖怪、
松旭斉 奇一と出会った。すると、彼は俺を見るなりニタァと笑って、「君、これから気をつけてね」と言った。なんか知らんがメッチャ怖かった
前に八代一家にお世話になった時、朝食と夜食をいただいたが、なかなか美味かった。それもそうだ、何故なら彼、大嶋逸伎というえらく若い24歳くらいのイケメンコックが作っていたのだ。砂色のマッシュに黒のコックコート。前に喋っていたが、話しも分かる優しいお兄さんだった。
他にも、一紗というトウモロコシ畑に出る子供の妖怪や、白い山伏衣装を来た飛烏とはまた違う種類の天狗「空神」。
そして、里の道で出会った川口 彗戒と、その相棒、塚原 千代里という女の子。
そいつらは、ここら辺を旅して回っており、群青色のツンツンしたヘア、すげがさを被り
長い着物コートを羽織っており、一目で旅人ということがわかる。
しかし、驚いたのは腰には護身用の刀ではなく当時には無かったはずの、スライドの形が真四角のエアハンドガンの様なものだった。どうやらそれは友人の徹人に作ってもらったものらしく、護身用でもあり、攻撃手段でもあるらしい。普段、此処まで技術は進歩していなく、このハンドガンを作った徹人の器用さとセンスがうかがえる。
もう一人、彼の隣に無表情、無口を貫き通す13歳くらいの少女がいた。桜色のセミロングのサラサラの髪。同じ色の瞳。白のフード付きの上着に膝ぐらいまでの赤のスカート。無表情で無口だが、それもまた美麗な顔立ちを色濃く表している。だが、やはり旅をしているからか、その華奢な体に似合わない刀を腰に掛けている。
その二人は祭りに参加するらしく、今は八代一家のところにいる。
「いや〜。本当にね」
すると、隣の天使は、大きな雲が浮かぶ青い空を見上げ、少し寂しそうに問いかけてきた。
「裕翔はさ、あっちの世界の事…恋しくなったりしないの?」
「…」
しばらくの沈黙。俺としてはあっちよりこっちの方が断然居たいが、あんな不可解な飛ばされ方をされればあっちの世界じゃ俺は行方不明という事になり、あいつらに迷惑がかかってしまう。というか、こっちの時間軸とあっちの時間軸がどういう風になっているのか明確になっていない以上、戻り方など知る由も無い。
ということを簡潔に伝える。
「大丈夫だよ、『その時』が来るまでずっと傍に居るから」
と言うと、彼女は少し照れた様子で「うん」と頷いた。
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ーー「あ〜もう7月も終わりか。」
と、目の前に座りスイカを食べている六尾狐の葵に向け、気怠そうに呟く。
「確かにそうだな。まぁ私ら長寿の大妖怪にしてみればあっという間だかな」
ふんっと鼻を鳴らしドヤ顔する。
すると、そのふざけた顔から一変、怪しいとさえ思える程に真剣な眼差しになる。
「悠士…気づいているか?」
「ああ、この奇妙な気はーー」
「あら、お呼びかしら?」
背後から流れるように鷹揚な口調で話し、一気にその場の空気を凍らす。ゆっくりと後ろを振り返る。そこには大きな雨傘をさし、
ひっそりと色香を含んだ趣の女性が立っていた。
「万里…」
「久しぶりね葵。元気にしてたかしら?」
「元気だが、何故此処にきた?何か起きたのならそれ相応の場で言えばよかろう?」
「…そうね。でも『今回』は少し異質でね。あなた達にはまず話さねければならないと思ったまでよ。」
「『あいつ』の…事か…」
するとその憂な顔に不敵な笑みを浮かべ、ゆったりとした口調で語り出した。
つづく
春の高校選抜がやってますね。自分的には近畿勢に頑張って欲しい。
次回もお楽しみに、アディオス。




