雫の星空に
球技大会しんど笑笑 またもや書いていた文が消えるというアクシデントに見舞われましたが、楽しんでくれたら嬉しいです。
〜19章〜
暑い。どこかは分からないが、また誰かの部屋の中にいるようだ。
ゆっくりと目を開けると、そこはメリィの部屋よりも和風様式な部屋だった。
辺りを見回す。内装はアンティーク風のモダンなたんすや棚があった。
一安心した所で、次は身体の安全確認をする。まだ少し痺れているが、手足は動く。また一息つき、さぁ次は一番の問題児、頭の確認だ。頭には包帯が巻かれている。
「さぁ行くぞ。頑張れよ俺の頭」
そう言い放ち、腹筋に力を入れて頭を持ち上げようとした時だった。
「あ、痛!痛い痛い」
瞬間、頭の中をズキッとする鈍い痛みが駆け巡った。
慌てて布団に潜る。
「あー、くそ。案の定じゃねぇかよ」
頭の痛みに悶絶していると、部屋の襖を開け、入ってきたのは小豆色のボサボサ前髪ぱっつんショートの女の子。少しガサツそうで活発なその女の子によく似合う雀色の小袖を着ており、黄色の菊の花が刺繍されている。
その女の子は俺の側まで寄って来て、丸っこい可愛いらしい目で心配そうに見つめてきた。
「あ〜生きてた、良かった。頭からすごい血が出てたからもう助からないと思ったよ。お兄ちゃん良かったね生きてて。」
「ありがとナス!」
すると、急に立ち上がり、いかにも「えっへん」と言った感じで胸を張り、
「わたし、八代 菊糾丸。この八代一家の一人娘だよ。そんでね、わたしはね、見たもの聴いたもの感じたもの全部覚えてるんだよ〜。すごいでしょー?」
「へぇ〜。超人的な記憶力か、すごいな。」
その後、自分の紹介と助けてくれた礼をした。
すると、菊糾丸は何か思いついた様子で部屋を出て行った。
暫く頭の痛みと戦っていると、さっき出て行った菊糾丸と、もう一人14歳くらいの少年があくびをしながら入ってきた。
「はーい!紹介しまーす。家の分家の嘉祥蓮一家の若頭、嘉祥蓮 徹人でーす。」
この無理矢理感。その少年は黒鳶色の天パに、スチームパンクのゴーグルを頭に掛けており、黄緑の着物、膝下くらいまでのスボンを着ている。
今にもくっつきそうな気だるい眼を擦りながら、菊糾丸の声に流されるように自己紹介した。
「自分は嘉祥蓮 徹人でーす。趣味は…まぁ最近は寝ることかな。それ以外もあるけど」
「そうか。俺は斎内 裕翔。外から来た人間だ……」
俺は布団に寝転びながら、今まで起きた出来事を全部話した。二人はあまり驚いた様子はなく、黙って聞いていた。
「じゃ、メリィさんの下に帰らなければならない訳か。」
「ああ、出来れば早く帰りたいが、今の状態じゃ帰るなんてことよりまず何も出来ないからしばらく世話になるよ。」
「じゃあ敬や綾火に知らせないとな。」
そんな俺らの会話を黙って聞いていた菊糾丸が、突如聞いてきた。
「ねぇ、裕翔兄とメリィお姉ちゃんて付き合ってるの?」
唐突に聞いたきたのですぐに反応出来ずに固まってしまった。少し考えてみる。(確かに普段一緒に過ごしているのではたから見ればその行為は該当するかもしれない。しかしながら自分は居候の立場だし、もとい彼女はこの世界の住人だ。もう既にそういう経験もしているかもしれない。第一こんな無力なただの人間じゃ逆に迷惑が掛かるかもしれないし、もっと良い男ーー)
「おーい、裕翔兄ー?聞こえてる?」
俺の思考を打ち消すように菊糾丸が話しかけてきた。
俺はハッと思い結論をまとめた。
「俺とメリィは付き合っては居ないが、彼女は大切な人だ。」
と教えると二人は顔を見合わせ、すこし微笑み、
「そうか」
と徹人が言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー彼の安否を確認し、彼を待つ一件の家に向かった。時刻は7時を回っていた。
「おーい、メリィいるかー?」
すると、暫く沈黙が続いた後、玄関のドアを開け、メリィが憂愁の表情を浮かべ出てきた。相当心配なのだろう。今にも泣き出しそうだ。
すると、オレの姿を見た途端、声を荒げ詰め寄ってきた。
「悠士⁉︎裕翔は、彼はどうなったの⁉︎」
彼女の勢いに圧迫されながらも、彼の安否を告げる。
「め、メリィ落ち着け。あいつは無事だ。今は菊糾丸の所に居る。だから安心してくれ」
それを聞くと、肩の荷が降りた様にその場にがっくり膝をついてしまった。
「良かった…。」
すると、その場で膝をつく彼女の目から大粒の雫が滴り落ちていった。
こんな彼女は今まで見たことがない。
そして、一人涙を流している式神使いは震えた声で言った。
「おかしいわよね…いつも他人の事なんか気にならないのに…彼の事を考えると、なにか苦しくて、自分が自分じゃなくなるような気がして…」
(やっぱりそうか…その感情は、)
「それはな、『恋』だ。』
「『恋』…」
「そう、それは誰しも経験するもんだ。
大切な人を想う気持ち。オレも、"あの人"にしてたみたいに。」
「……」
「あいつ、お前の事どう思ってると思う?」
「ーー⁉︎裕翔が…?」
「"大切な人"だってよ」
「〜っ⁉︎」
泣き崩れる彼女を背にし、
「その気持ち、絶対離すなよ。じゃあな」
とだけ話しその場を去った。
彼女の涙は、気持ちはこの空に届くのだろうか。
それを『恋』だと知ったその夜の空に輝く雫の粒は、より一層綺麗に光り輝いていた。
つづく
いやー今回後半シリアス回でしたね。自分結構シリアス回好きなんでこれからも頑張っていきたいと思います。
次回もお楽しみに?アディオス‼️




