表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/260

制裁(11)

「へーっ! 初めて分かったよ。いやあ、教えてくれて有難う」

「どう致しまして。じゃあ行きましょうか。外を歩くんだけど服装はこのままで良いわね」

「うん、直ぐだしね」


 間も無く『ナンシーの森』に着いた。言われてみれば確かに物凄く広いのだ。果てに思えた壁は本当のムーンシティの果てではなかった様である。


「もう少し北に行くと、工事の音が聞こえるわよ」

「工事の音?」

「ええ、ここは常に拡張工事が行われているのよ。岩盤の関係で北へ北へと掘り進んでいる。主要な部分は全てロボットが担当している。

 そのロボットのアシストに大勢の人が必要なのよ。人員が常に不足している状態ね。幸いと言っちゃあ何だけど凶悪な犯罪者は地上に幾らでもいるわ。

 今問題になっているのは如何に効率良く犯罪者をここに送り込むかなのよ。その意味で秘密にして置くのはもう限界だと思うんだけど」

「へえーっ、俺も含めて殆ど誰も知らない所で着々と大事業が進行していたんだ。浜岡先生とやらが一人でそれを推進している訳か?」

「最初はそうだったんだけど、今はリーダーとして指揮を取っているわ」

「ふうん、そういう事になっていたんだ。……ああ、それで素朴な質問なんだけど、浜岡先生のフルネームは何だっけな? 浜岡敦で良かったんだっけ?」

「はい、浜岡敦先生。あつし先生は世界的なロボット工学の博士よ。世界一と言っても良いわね。ゆっくりしか歩けなかった人型ロボットを人間並みに走ったり、飛び跳ねたり出来る様にした最大の功労者よ。

 それを三十そこそこで成し遂げてしまったんですからね。勿論仲間のスタッフと一緒にですけどね。……あれ? あれは何かしら?」


 ナンシーの視線の先に服の塊の様な見かけない物体があった。金雄が振り返って良く見るとそれには手足が付いていた。頭も変な位置に付いている。恐る恐る近寄ってみた。


「ひ、人だわ! 死んでる!」

「く、首の骨が折れている。体格が物凄く良いけど、銃で撃たれたり、ナイフで刺された形跡は無いな。恐らく素手でやられたんだ。……ひょっとして行方不明になっているフランシスじゃないのか?」

「そ、そうよ。間違いない、フランシスだわ。以前二、三度見た事がある。……キングだわ! これほどの強者を素手で倒せるとすれば彼しかいないわ!」

 ナンシーは真っ青になって叫んだ。


「うーむ、でもどうして居場所が分かったんだろう?」

「やっぱり私達みたいに監視されているのかも知れないわね……」

 ナンシーは直ぐにカード式携帯電話で警察に連絡したが、二人共言い様の無い戦慄せんりつを覚えていた。


 間も無くやって来たのは、警察車両と救急車だがどちらも電気自動車で、サイレン以外は静かだった。フランシスの遺体は救急車によって病院に運ばれて行ったが、第一発見者の二人は拘束され警察署の中で取調べを受ける事になった。


 予想通りナンシーは直ぐ解放されたが、金雄に対する取調べはホテルの時の事情聴取とは比べ物にならない程厳しかった。またあのナンシー狂いのケイン部長である。


「俺は今日は機嫌が悪いんだ。今朝まで事情聴取をしていて、お昼にまた今度は取調べだとよ。しかもだ、あのうるわしいナンシーちゃんに、ついさっきまで言い寄っていた小森とかいうくそガキだ。おい、お前がやったんだろう? 早いとこ吐いちまいな! どうなんだ、えーっ!」

 もうめちゃくちゃである。金雄がむっとして険しい表情をすると、

「何だその顔は、犯人じゃないとでも言いたいのか! だったらそれを証明して見せろ!」

 そう怒鳴った。それから更に喋り続けた。


「ここはな、地上とは違うんだ。真犯人なんかどうでも良いのさ。事件が起きたら犯人を捕まえる。簡単な裁判一発で刑が決まる。

 上告も糞もねえんだ。どうしても吐かなければ、言わせるまでだ。責め道具は揃っているぞ。どれを使うかおめえに選ばせてやるよ。

 責めている最中に死ぬ事も良くある。俺は脅しで言っているんじゃねえぞ! 有難く思いな、一分間だけ待ってやる。自供するかしないか良ーく考えろ、待ったは聞かねえんだからな!」

 ケイン部長は何時もそうしているのか、デスクの引き出しからストップウォッチを取り出して時間を計り始めた。どうやら嘘でも自供しなければ本気で拷問に掛ける積りのようである。


 これには金雄も呆れもしたし困りもした。どれ程の強者でも拷問には音をあげるし、そもそも命の保証が無い。仮に耐え切ったとしてもほぼ百パーセント重大な後遺症が残る。

 もう格闘技をやるどころの話ではない。金雄は冷静に考えて嘘の自供をする気になっていた。辛い選択ではあるが仕方がないと感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ