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地下格闘会(9)

「はははは、ナンシー君は本当に役に立つ女性だ。それじゃあ私のカードをプレゼントしよう。三千万ピースまでなら自由に使える。

 個人的に使っても、使い切っても構わん。返す必要も無い。もし足りなければ何時でも言ってくれたまえ。後、一枚や二枚だったら追加しても全然構わないからね。それじゃあ成功を祈っているよ」

「はい、カード有難う御座います。では失礼致します」

 

 ナンシーは浜岡の言葉の何処どこかに嘘がある様な気がして来ていた。

『あの時の先生の食事の世話はメイドの人がやっていたわね。でも彼女は先生の愛人に違いないわね。うらやましい。でも私は料理はからっきし駄目だし……。

 先生は監視をするとおっしゃっていたけど今の私も監視しているという事? ええっ! この姿も見られているの!』

 ナンシーは胸がはだけていた事に気が付くと恥ずかしくなって布団の中に潜り込み、目をつぶって寝た振りをした。


 暫くそのままの状態で殆ど動かずに再び考え始めた。

『これからは迂闊うかつに声を出して本音を言えないわね。自分の感情を余り表に出しては変に勘ぐられるかも知れない。

 ……待って! 金雄さんもずっとこんな状態だったんじゃないのかしら? さっきみたいに怒鳴ったのは、余程ストレスが溜まっていたのね。

 あああ、金雄さんが可哀想! 御免なさい金雄さん、私、先生には逆らえないの。人を殺してやけになっていた私を見捨てなかった、ただ一人の人だったの。

 両親でさえ私を見捨てたのにね。本当なら刑務所行きなのに色々と骨を折って下さって、先生の全責任で私は罪に問われなかった。

 もし私が何か事件を起こせば全ての責任を先生が負う事になる。その時から私は先生の忠実なしもべになったのよ。……でも何かおかしい。

 先生は彼の生い立ちをざっとだけど知っていた筈。いいえ、盗聴しているんだったらもっと詳しく知っているかも知れない。

 それを私には教えてくれなかった。必要が無かったから? だけどひょっとすると私が考えを変えるかも知れないと思ったのでは?

 駄目! 先生を疑ってはいけないわ! でも、今はもう金雄さんが野獣ではない事を知っているのでは? だけど先生が嘘を付く筈が無い。でも、やっぱり何か変、……」

 幾ら考えても堂々巡りするばかりで結論が出ないまま、何時しか本当に眠っていた。


「おはよう御座います金雄さん。もう八時過ぎましたよ!」

 ドアの向こうから元気良く声を掛けられても、金雄には一瞬それが誰の声だか分からなかった。昨夜の激しい怒りが収まる明け方位まで眠れなかったので、幾らも寝ていないのである。


「えーと、誰だっけ?」

「貴方の美人秘書のナンシーよ!」

「ああ、ナンシーか……」

「ああ、ナンシーかはないでしょう。早くしないと美味しい朝食が食べられませんよ!」

 ナンシーは更に元気な声を出した。勿論それは監視されている事を計算に入れてのことである。


 それは金雄も同様だった。

「おっはよう!」

 昨夜の怒りが嘘の様に明るく金雄は個室のドアを開けた。


「おはよう御座います。朝食は一階の『豊の海』でバイキング式で御座います。では参りましょう!」

「うん、しかし色っぽい服装だねえ。スリット付きのミニスカートとは。それに胸もやけにでかく見えるブラウスだ」

「いいえ、元々私の胸はでかいんです。ミニスカートにスリットが付いているのは、破れない様にしているんですわ。少々ふくよかなものですから」

「普通それは尻がでかいと言うんだけどね」

「あら、私のこのお尻が魅力的だと大抵の男性がおっしゃいますけど?」

「そういうのをお世辞というんだよ。尻がでかいなんて言ったら後が怖い」

「でもニヤニヤしながら私のお尻を眺めている男性が沢山いますわよ。金雄さんだって私のお尻に見惚みとれているんじゃありませんか?」

「えーと、今日のメニューは何だろうな?」

「あっ! 誤魔化しましたね。私ってやっぱり魅力的なんだ!」

 たわむれを言っている内に一階の『豊の海』に着いたので、バイキング式の料理を皿にてんこ盛りにして二人は食べ始めた。

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