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地下格闘会(7)

「イエッサー! うふふふ、明日の朝は早いですわよ。ホテルですからバイキング式の朝食になりますけど午前九時までですからね。

 でも実際には午前八時半位で目ぼしい物は無くなってしまうから、遅くとも八時迄には起きて頂かないと。八時ちょっと前に起こしますけどね」

「俺に起こされない様にした方がいいぞ。でないとマネージャー失格という事になるからね」

 食事を終えて、冗談を言い合いながら二人は同じスイートルームに戻ってそれぞれの個室に入って休んだ。


 その夜、金雄はベットに仰向けになりながら色々な事を考えた。特に自分の世話係が何故なぜ三人とも女性なのかを考えていた。


『何故だ。何故女性なんだ? 別に男でも良い筈なんだがな。特に春川陽子の場合、アルバイトなのだから男子で何が困る? 男子は応募しなかったのか? 駄目ださっぱり分からない。……』

 考え疲れていつの間にか眠っていた。


 ややカラフルな夢を見た。自分の周りで四人の女達が激しく言い争っている。一人は顔立ちから明らかに小笠原美穂。残りの三人は顔がはっきりしなかった。

 しかしスタイルの良いおチビさんは間違いなく春川陽子。フワフワした半透明の布を下着姿に巻き付けている美少女は影山リカだろう。

 そして背が高く、プロポーションの良い半裸の女性はナンシー山口に違いない。夢の世界ではまだ金髪が腰の辺りまであった。


『喧嘩は止めろ!』


 金雄の一言で四人は急に仲良くしだした。ところがそれもつかの間、たちまち黒ずくめの男達に取り囲まれて、銃を突き付けられ、口々に金雄に助けを求め始めた。


 そして更にそこに葉巻を咥えた、ギャングのボスが現れて、多分それが浜岡なのだろう、ニヤリと笑って言った。

『ふふふふ、私の命令に従わせる為の人質は、多ければ多いほど良いのさ!』

『なにーーーっ!』

 金雄は激高してボスに飛び掛った。しかしその途端、黒ずくめの男達の銃が火を吹いた。血吹雪が舞い、女達はバタバタと倒れた。


『ウアーーーッ!』


 金雄は絶望の叫びを上げると共に目を覚ました。心臓がドキドキしている。汗びっしょりだった。


『はーーーっ! 夢か……、また嫌な夢を見たな。待てよ、夢の中で浜岡らしい奴が言ってたな。人質は多ければ多いほど良いって。そうか女子の世話係は事実上の人質なのか!

 浜岡の考えそうな事だ。しかしナンシーもか? まさか、彼女はあいつ等の仲間だぞ。いいや、浜岡ならやりかねない! ……ふう、シャワーでも浴びるか』

 どうして世話係が全員女性なのか理由が掴めたが、

『余り考えてばかりいると気が滅入るな』

 そう感じて、汗を流す為と気分を変える為にも個室を出てシャワーを浴びた。そうしているうちに急に悲しくなって来た。


『もう生きて美穂に会えないかも知れない。……恐らくそうなるんじゃないのか?』

 そう思うとますます悲しくなって涙が零れそうになった。慌ててシャワーを頭から被り、その状態で暫く、出来るだけ表情を抑えて泣き続けた。


 他の窓にはカーテンが閉められていて、夜が演出されている。しかし風呂場の曇りガラスの窓には当然ながらカーテンが無く、深夜だというのに神経が麻痺したかの様に明るかった。


『余り何時までもこうしているのは不自然だな』

 相変わらず監視されているかも知れないという不安感があった。その後はてきぱきと体を拭いて風呂場を出た。


 ふと前を見ると、ぬっと立っているものがあってビックリしたが、パジャマ姿のナンシーだった。

「な、何だ、ナンシーか、ビックリさせるなよな」

「シャワーを浴びてたの?」

「ああ、ちょっと汗を掻いてね」

「ね、寝汗を掻いたの? 何処か体の具合でも悪いんじゃないの?」

「凄く嫌な夢を見たんでね」

「夢見が悪かったんですか?」

「夢見? ……夢見が悪いのに決まっているだろう! 一番大切な人を人質に取られて、それで夢見が良い訳ないだろう!」

 金雄は初めてナンシーに激情をぶつけた。荒々しくドアを開け閉めし、鍵を掛けてベットの上に体を投げ出した。暫くは眠れそうも無い。


 ナンシーも眠れなくて、シャワーでも浴びようかと思って個室から出て来た所だったのだが、金雄と出会ってしかも激しい感情をぶつけられて、胸が痛んだ。

 シャワーを浴びるのを止めて個室に戻った。ベットに仰向けになりながら今度の仕事を浜岡に頼まれた時の事を思い出していた。


 一週間ほど前のことだった。浜岡の住む超高級マンションで彼と一緒に食事をしながら話をした事がある。ナンシーは期待に胸を膨らませていた。ひょっとすればベットに誘われるかも知れないと思ったのである。

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