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史上最強の男(23)

「ゴミ入れに捨てたよ、不味かったか?」

「勿体無いわね。あれは二十ターン、百二十連発の銃なのよ。護身用にと浜岡が作ってくれた物なんだけど、使い捨てでね、反動が弱いから私みたいな非力な者でも使えるのよ。それに引き金を引くだけだし。大分前にムーンシティでも使った事があるわよ」

「ムーンシティで?」

「ナンシーの裸事件を知ってる?」

「ああ、聞いた事がある。たしかナンシーが付き人みたいな事をした選手とコーチとに路上で裸にされたんだと記憶しているけど」

「そうそう、そんな様な事だったわね。で、私がその二人を射殺したのよ」

「えっ! キングじゃなかったんですか?」

「まさか、キングはそんな事はしないわ。ナンシーをはずかしめたその二人は浜岡の怒りを買って、その時試撃ち代わりにその銃を使ってみろと言われたのよ。

 空気の塊が出るだけだから、まるで素手で殴り殺したみたいになる。私はこの通り非力だから誰も私を疑わないからって」

「はあーっ、あれは美千代さんだったんだ」

「そう、良い事してあげるから、公園に来てくれって誘ったら、のこのこやって来た。ちょっぴりセクシーな格好で迫ったら、何にも疑わずに接近して来た。

 至近距離で一発ずつ撃って、倒れた所で、更に五、六発位ずつお見舞いしてやったわ。骨が砕けるのね。凄い威力にビックリした記憶がある」

「はははは、怖いお姉さんだ」

「あの連中が悪いのよ。あんな事をしたら浜岡の顔に泥を塗る事になるって知っててやったんですからね。でも死の現場送りにならなかっただけでもまだ幸せだと思うわ。あら御免なさい。夢限は死の現場送りになったのよね。大変だったでしょう?」

「ま、まあね。パワーがあったから良かったけど、でもあれは止めるべきだよ。働いている連中もそれを監督する連中も気の毒過ぎる」

「まあ、終った事よ。この間のテレビで普通の現場に戻った事が放映されていたもの」

「そうだったね。あのテレビを見てほっとしたよ」

 それからも度々美千代は夢限と自分とに、服と下着とを作った。その度にロボット達は段々裸になる。本来服等いらないのだから、別に構わなかったのだが、何時かは無くなってしまうと思うと美千代にとっては不満だったし、不安でもあった。


 ただ連合軍が全く音沙汰が無いのがかえって不気味であった。二人がここに来てからもう三月が過ぎた。このところ夢限は就寝中に妙な音や振動が時々する事に気が付いていた。


『美千代さんは気が付いていないのかな? まあ、俺の耳は特別良いからな。それにしても外からの音に間違いないんだが何処から来るんだ?』

 その疑問が少しずつ膨らんで来ていた頃、夢限も美千代も傷はすっかり癒えて、疑似親子の様になっていた四月上旬の事だった。


 美千代は裁縫の腕を挙げて夢限は若者らしいジーンズファッションに、美千代は落ち着いたしかしかなりお洒落な感じの、ミニスカートのツーピースにドレスアップした服装になって、朝食の後のティータイムを楽しんでいた。


「美千代さん、本当に裁縫が上手になりましたね。もう市販出来る位だ」

「ふふふ、有難う。私今何だかとっても幸せな気分なのよ。ああ、もっと早くこうなれば良かったのになって、思う様になって来ているの」

「ふうん、そうなんだ。そうだよね、ただその……」

「ただ、何?」

「特に夜の事なんだけど、寝ている時に、妙な音が聞こえるんだよね。知ってました?」

「夜に妙な音がする? ミシンの音じゃないの?」

「いや、ミシンの音位俺にだって分かりますよ」

「じゃあ、ロボット達の活動する音とか?」

「外から聞こえるんです」

「そ、外から?」

「はい、ひょっとすると昼間もその音はしているのかも知れませんが、微かな音なので夜にならないと聞こえないのかも知れないんですよ」

「全然気が付かなかった。ま、まさか連合軍?」

「さあ、そこまではちょっと。でも何だか段々音が大きくなって来ている様に思えるんです」

「も、もし連合軍だとしても、扉は開かないはずよ。鍵は無いんだし」

「うーん、どうなんでしょうね。開けるのには三つの鍵が必要だったんですよね」

「そ、そうよ。一個も無いのよ! 開く筈が無いわ!」

 美千代は不安を打消すかの様に、強い口調で言った。


 しかしその日の午後辺りから、美千代にもはっきりその奇妙な音は聞こえる様になって来たのである。昼も夜も四六時中聞こえ続け、段々その音は大きくなって来ていた。明らかに入り口付近から聞こえて来るようになった。

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