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史上最強の男(11)

「ガチャリッ! ギーーーッ!」

 美千代がドアのノブに手を掛けて回して押すと、ドアは普通に開いた。その先にも廊下が続いていてちょっと離れた所にまたドアがある。

「さあ、入って」

 夢限は美千代に誘われるままに中に入って行った。

「ギーーーッ、バタンッ!」

 美千代はすかさずドアを閉めた。

「ゴオオオーーーッ!」

 凄い音と振動があってドアの向こうで何か変化があるらしいのだが、どんな変化なのか夢限には分からなかった。


 音が収まってから試しにドアのノブを回してみたが、

「駄目だ、空回りしている」

 夢限は美千代の言ったことが本当である事を確認した形になった。


「リカは大丈夫だろうな!」

 夢限はややきつい調子で言った。

「勿論、大丈夫よ。今の音は防護壁が下から上がって来た音よ。厚さが五十センチ位ある強化コンクリート製の重い防護壁三枚が移動したから振動も凄かったのよ。

 通常の砲撃位じゃびくともしないわよ。でもリカさんの所までは二百メートルもあるんですからね、全然大丈夫だわ」

「それなら良いんだ」

 美千代は夢限のリカに対する思いの深さを知ってドキリとした。


『下手な事を言ったら本当に殺されそうだわね。でもそんな事ちっとも怖くはないわ。だけどまあ、折角の命だから少しは惜しまないと』

 美千代は漠然と浜岡の意志をどうしたら遂行出来るか考えていた。


 二人は次のドアを開いた。地下への階段がある。

「へえ階段だ。地下へ行く階段というのは何と無く普通な気がするな」

「ここは一番古い地下の施設なのよ。初期の頃のだからエレベーターも何にも無くて、普通の階段なの。浜岡の夢はここから始まったらしいわ。今は通信施設になっているけど」

「通信施設?」

「そう。ここで電波の送受信の管理をしているのよ。殆ど全ての電波はここを通るようになっているの。それで他からは一切通じないのよ。

 詳しい仕組みは知らないけど、でもここからなら軍でも桑山でも、そう、どうせなら桑山と話しをすればいいわ。連合軍だと英語でしょう? 貴方は出来ないわよね」

「ああ、全然駄目だ」

「じゃあ、決まりね」

 地下に降り立つとまたドアがあった。


「またまたで悪いんだけどここも二度と出入りは出来ないわよ、良い?」

「何か変な気がするな。どうして二度も一方通行なんだ?」

「元々ここは私の退避用なのよ。百番目のスイッチを押した後で、気が変ったらここに逃げ込む様になっているの。ここはいわゆる核シェルターになっていて、さっきの所よりももっと頑丈な防護壁が出てくるのよ」

「分かった。信じることにする」

「ギーーーッ!」

 ドアを開けて中に入ると人が大勢いて、夢限は驚いた。


「ええっ! この人達は?」

 今までとは比べ物にならない位広い部屋だった。沢山の通信機器がデスク上にあり、皆脇目も振らずに仕事をしている。しかし微妙な違和感がある。


「ぜーんぶ、ロボットなのよ。去年の末頃までに人員をロボットに取り替えちゃったの。多くの人に裏切られて、目が覚めたって浜岡が言ってたわ」

「しかし大丈夫なのか? 何かあったら、オオオッ! 何だこりゃ!」

「ゴゴゴゴゴオオオオーーーーッ!!」

 さっきより遥かに強烈な音と振動があった。


「だ、だから言ったでしょう、ここは核シェルターになるんだって!」

 美千代は大声を出したが、それでも殆ど聞こえない位の轟音だった。暫くして音と振動が収まると、

「ロボット達の事は気にしないで。彼等は命令された事を忠実に実行しているだけだから。歩いて来たら道を譲ってあげてね。

 人間絶対優先に作られている古いタイプでこっちが気を使って避けてあげないと、何時までも待っていて埒が明かないわよ」

「うん、分かった。それで早速なんだが桑山さんに連絡したい」

「それは良いんだけど、ちょっとこの格好では不味くない?」

「格好が不味いか?」

「ええ、貴方は上半身裸で、私はブラジャー姿よ。ついさっきまでエッチしてたみたいだわ」

「ああ、そうか。でも、着る服がないんじゃないか?」

「ここに幾らでもあるじゃない」

「ええっ、何処に?」

「ロボット達はちゃんと服を着ているでしょう? 上着を借りればいいのよ。皆きちんと背広を着ているから、それを拝借するわね」

 美千代は一体のロボットを小突いて振り向かせ、

「背広を貸して」

 と言った。


「ハイ、ミチヨサン、ドウゾ」

 ロボットは全く従順に背広を脱いで、簡単に畳んでから美千代に手渡した。

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