恐怖の賭け(17)
「退避準備終了して下さい。爆破五十分前です! 退避準備終了して下さい。爆破五十分前です!」
残り五十分のところでやっと一体を倒せた。
「退避開始して下さい。爆破四十五分前です! 退避開始して下さい。爆破四十五分前です!」
一体を倒すと、他を倒すスピードはぐんと上がる。残り四十五分のところで何とか全部倒せた。しかしまだ沢山の作業が残っている。
「それじゃあ翔さんは竜太さんをエレベーターの側まで運んで下さい。それからリカと一緒にこっちに戻って来て下さい。して貰う事があります。それと夢限さんは僕を手伝って下さい」
「おおっ!」
翔は竜太を抱きかかえて部屋を出て行った。
「何をすれば良い?」
「はい、ロボットに使われているコードを繋いで欲しいんです。今見本を見せますから」
譲治はそういうと、コードとコードの金属部分を結んでみせた。
「こういう風に繋いでいって、出来るだけ長くして欲しいんです。リモコンも点火装置も何もありませんので、手製の発火装置を作るのですが、出来るだけ長くしないと爆風でやられちゃいますからね。幸い相当数のコードが使われていますから、でも上手く行くかどうか」
「分かった、やれるだけやってみる」
二人は直ぐに銘々の作業に掛った。
「直ぐに退避して下さい。爆破四十分前です! 直ぐに退避して下さい。爆破四十分前です!」
時間は情け容赦なく過ぎて行く。一部のみとはいえロボットを解体しながらでは効率が悪かったが、戻って来た翔と手伝いに来たリカとのお陰で、線を繋ぐ方は順調に進んだ。
譲治は線の先に別の燃料電池をセットして、簡単な火花の出る装置を作った。それを自動ドアから部屋に入って直ぐの所に置いていよいよガスの放出開始である。
「シューーーッ!」
全部で五体のロボットから水素と酸素が放出され始めた。点火用のコードは十五メートルほどに延びたがまだ全然足りなかった。
最低でも三十メートルは離れていなければ命に関わる。作業は単純である。今は離してある二つのコードの先の金属部分をくっ付ければいいのだ。
しかしもうコードは無い。そしてそれ以上に時間が無い。どうするべきかエレベーターの前で全員が集まって話をしていた。
「そろそろ点火しても良い頃です。どうしましょうか?」
「俺が行こう。点火して直ぐに戻って来れば何とかなる」
「しかし爆風のスピードには幾ら夢限さんでも勝てませんよ」
「お兄ちゃん、わ、私が行きます。私、皆の足手纏いになっているから、もしもの事があっても……」
「馬鹿な事を言ってはいけません。不肖この安藤翔が……」
そこまで言った時だった。
「皆伏せろーーーっ!」
自分も伏せながら大声で怒鳴ったのは、何時の間にか手作りスイッチの側に行っていた竜太だった。
「止めろーーーっ!」
全員が止めようとしたが竜太は、
「馬鹿野郎! 伏せろっ!」
そう叫んで剥き出しになった二本のコードの金属線同士をくっ付けた。
「ドオーーーンッ!」
物凄い音だった。エレベーターの側にいた、翔、リカ、譲治、夢限の四人が伏せたのと爆風がやって来たのとほぼ同時だった。辛うじて直撃は免れた。もうもうたる煙で暫くは何も見えない。
「ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!」
「直ぐに退避して下さい。爆破三十分前です! 直ぐに退避して下さい。爆破三十分前です!」
相変わらずの警報音と、危険を知らせる女声アナウンスの声だけが辺りに響いていた。それらの装置はどうやら無事な様である。
「竜太さん!」
「佐伯さん!」
爆風に吹き飛ばされて、夢限達の直ぐ側まで来ていた竜太は血だらけだった。もう手の施しようが無い。
「ユ、ユミを頼む……」
それが最後の言葉だった。
「うううう、くっ!」
思いっ切り泣きたかったが、彼の意思を無駄にしない為にも、一刻も早くロボットを停止しなければならない。堪えるだけ堪えてリカに介抱を任せ、といっても見取ることしか出来ないが、翔と譲治と夢限の三人は直ぐに走って行って壁ごと吹き飛んでしまっている部屋に入って行った。
「ううう、くっ、くそっ! 防弾ガラスは、ま、まだ残っているのか!」
譲治が絶望的な声で叫んだ。
「しかし大きくひびが入っている。ロボットの残骸を利用して壊せば直ぐさ」
案外ケロリとして夢限は言った。考え方をどんどん切り替えて行かないと、身も心も持たない事を彼は良く知っている。
防弾ガラスはあれほどの爆発にも、ひびだらけになりながら、しかし辛うじて耐えていたのである。