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恐怖の賭け(9)

 夢限は話を続ける。

「成る程、それなら納得です。それでその、もう少し浜岡の居場所などについて詳しく教えて貰えませんか」

「はい。それでは順序だてて説明致します。先ず普通に五階から階段を上がって屋上に出ると、小さな小屋の様な物があります。

 そこでキーを使うのですが特殊な電子ロックです。手順を間違えると開きません。使い方は簡単なのですが良く覚えて慎重にやって下さい」

「はい。皆も一緒に覚えてくれないか」

 夢限は全員を見回しながら言った。この様な場合は思い違いがあるとそれっきりになるので、皆一緒に覚える方が良いのである。全員がグリーンの前の方に彼女を取り囲むように集まった。


「キーは三つありますが、それぞれ役割が違います。キーに『1、2、3』と番号が付いていますがその順序で使います。ただしさっき言った屋上の小屋用は1番だけです。2番、3番のキーについては後で説明しましょう」

「それで開け方というのは?」

 翔がおもむろに聞いた。


「はい、先ず上下を間違わないようにして差し込みます。矢印が描いてありますのでそれが上になる様にです。必ず右に、つまり時計回りに半回転して一旦抜きます。

 それからもう一度、やはり矢印が上になる様にしてキーを差し込みます。同じ動作をもう一度、右に半回転してキーを抜きます。

 そうするとドアのロックが外れますので、後は普通にドアのノブを回して入ればいいのです。ただしオートロックになっているので、ドアを閉めてしまうとまたキーが必要になります」

「もし間違えて操作したらどうなるんだ?」

 金太郎が念の為に聞いてみた。


「警報が鳴るようです。それでドアのロックの状態が変化して同じ方法では開けられなくなるようです」

「ありゃまあ、そいつは大変だ」

 竜太がちょっとおどけて言った。

「お父さん! ふざけている場合じゃありませんよ!」

 ユミがきつく注意する。娘に注意されて竜太は、

『へいへい!』

 と声は出さずに口だけ動かして真顔に戻った。


「分かりました。慎重にやりましょう。それで他の鍵は何に使うんですか?」

 夢限は内心は急いでいたが、敢えてゆったりと言った。いては事を仕損じるという諺を思い出していたのである。


「はい、次は『2』の番号の付いたものですが、これはエレベーターのドアのロックの解除の為にあります」

「エレベーターのドアまでロックされているのか。なんとも用心深い事だな」

 翔は相変わらずのんびりした調子で言った。グリーンはそれには構わず説明を続けた。


「今度もキーの矢印を上にして使うのですが『1』とは逆に、左に半回転します。つまり反時計回りです。それから抜いて、またキーの矢印を上にしてもう一度左に半回転します。

 キーを抜くとそれがエレベーターの呼び出しになります。ここでもドアはオートロックなので注意が必要です。下に着くとドアは一度だけ開いて、閉まるとまたオートロックになります。開ける時にはキーを差し込んでさっきと同じ操作が必要です」

「浜岡博士は用心深いとは聞いていたがこれ程とはね。それでその最後の『3』の鍵は何処を開けるんだ?」

 金太郎がちょっと呆れ気味に聞いた。グリーンはその言葉に直ぐに答えずに別の事を言った。


「その前に申し上げておきますが、エレベーターで降りる所は地下一階では御座いません。地下二十階位に相当します」

「ええーーっ!」

 今度は女性陣が相変わらず小声ではあるが一斉に驚きの声を上げた。男性陣は驚いて声が出ない位だった。


「貴賓席の床がせり出して塞がったと思いますが、あのせり出しは実は地下深くまで何十枚も出て来るんです」

「うーむ、すると、やはり核シェルターの様になっているのですか?」

 久し振りに影山譲治が言葉を発した。


「はい、そうです。まさかとは思いますが、最悪の場合にはアメリカ軍辺りが核を使う事もあり得ると浜岡博士は考えているのでしょう」

 夢限はグリーンの言葉を聞いて、もっと嫌な事を想像した。


『核を使うのがアメリカ軍とは限らないぞ。浜岡が使うかも知れない。あの男だったら本当に本気でやるかも知れないぞ!』

 そう思うとぞっとした。それなら尚更急がなければならないと思った。


「その、『3』について聞きたいのですが」

 夢限は急ぐ気持ちを出来るだけ抑えて聞いた。

「はい。地下に着くと廊下があります。一本だけなので迷う事は無いと思います。真っ直ぐ行くと一つだけ部屋があって、そこに上から降りて来た貴賓席がある筈です。そこのドアは自動ドアになっていて、キーは必要ないようです。

 その部屋は博士と愛人の美千代さんが何日間かは暮らせるようにベットとかキッチンとかがある様ですが、問題なのは貴賓席の前にある、操作盤です。その中に緑色に塗られたキーの差込口がある筈なんですが……」

「そこに『3』を差し込めば良いんですか?」

 春川陽子が少しじれったそうにして聞いた。

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