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恐怖の賭け(7)

「もう、いいけど、それでそっちは大丈夫? テレビでは大騒ぎになっているわよ。全員が人質になっているんですって?」

「ああ、そういうことだ。それで俺と、協力してくれる人達とで浜岡退治をしようと思っているんだけど、彼の居場所が分からないんだよ。貴賓席に居たんだけど、そのまま下に降りて行って、蓋がされちゃったんだ。

 だから、彼等は地下にいると思うんだけど、地下があることは分かっているのに、そこへ行く方法が分からないんだよね。何か知っているかナンシー?」

「ああ、その様子ならテレビで見たわよ。残念だけど私にも分からないわね。それとあの、美穂さんとちょっと代わるわね」

「うん」

 夢限は心を切り替えた。


「金雄さん、酷いわ。あんな事をするなんて」

「申し訳ない。……どうしても美穂を助けたかった。浜岡退治をして必ず生きて戻るから、待っていてくれないか」

「うううう、そこに居たかった。足手まといなのは分かっているけど、でも、やっぱり貴方と一緒に居たかった。ううう、きっと帰って来てよ。絶対、絶対よ!」

「ああ、絶対に帰るよ。必ず帰るから。それじゃあまた後で」

「うん、……ちょっと待ってもう一回ナンシーさんと代るから」

「ああ」

「ええと、今ふっと思ったんだけど、ムーンシティの地下格闘会の会場に行く時、ホテルの二階からでないと行けなかったわよね」

「うんうん、成る程」

「ひょっとすると、そこも似た様な仕掛けがあるんじゃないのかしら?」

「そうか、分かった。手分けして探してみるよ」

「ええ、やってみる価値があると思うわ。でも無理しないで。絶対に生きて帰って来てよね」

「ああ、勿論さ。必ず生きて帰る!」

「それじゃあ、吉報を待っているわよ。迷惑になるかも知れないから、特別な事がない限り後は電話しないから」

「そうしてくれると助かる。じゃあな」

「じゃあね」

 夢限はナンシーとの電話のやり取りに何かほっとするものを感じていた。


『美穂には本当に申し訳ないことをしたな……』

 電話を切った後にも、少しの間そういう感情を持ち続けていたが、

『諸悪の根源である浜岡をなんとしてでも見つけなければ!』

 そう思い返して、再度気持ちを切り替えた。


 夢限にとって幸いだったのは、彼が気持ちを切り替えるまでの少しの時間、皆が気持ちを察してじっと待っていてくれたことだった。

 初めて仲間らしい仲間がが出来た瞬間だった。嬉し過ぎて涙が出そうだったが、今は一秒でも早く浜岡を見つけることが先決だったので、ぐっと堪えた。


「今ナンシーと話したんだけど、別の階にエレベーターや階段があるかも知れないと言っていた。それで、手分けして探しましょう。ここは何階建てなんですか?」


「五階建てです。メインの格闘場にビルがくっ付いている形になっているんです」

 影山リカが素早く的確な言い方をした。夢限の役に立ちたいという気持ちがそうさせているようである。


「多分一階と地下には、地下の貴賓席に到達出来る、階段やエレベーターはないと思う。もしあればきっと誰かに発見されているだろうと思う。それで、二、三、四、五階を重点的に手分けして探してみる。

 一度に出て行くと疑われる恐れがあるので、二、三分毎に一組ずつ出て行くことにすれば良いと思う。最初の組が五階、次の組が四階、次が三階で、最後の組が二階ということにしよう。先に誰が出る?」


「はいっ!」

 リカが間髪を入れずに応えた。

「ふふふふっ!」

 余りに早いので、何と無くおかしくて皆笑ってしまった。


「な、何がおかしいんですか!」

 リカがちょっとむくれ気味に言うと、

「お前があんまり張り切り過ぎているからだよ」

 珍しく兄の譲治が言った。彼は大勢の中だと寡黙かもくになる性格なのだろうか。或いは慎重なのか余り積極的には話さない。


「でも天下の一大事なんですよ。ぐずぐず迷っている場合ではないでしょう?」

 確かにその通りではあるがものには限度と言うことがある。彼女の場合、夢限に気に入られようという意図がありありだから皆が笑ったのだった。


「はい、じゃあ五階は影山さん達に任せます。それじゃあ次は?」

「はいっ! えへへへ、ちょっとリカさんの真似みたいだけど、私と翔ちゃんと行きます」

 今度は佐伯ユミが張り切った。

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