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恐怖の賭け(6)

「ただ俺はこの場所、屋内格闘場に来たのは初めてで、何処をどう行けば良いのか良く分からないのです。それで、出来れば一緒に手分けして、彼等を探して欲しいのですが。勿論命の危険がありますから、無理なお願いになるのですが、どうでしょうか?」

 夢限は協力者が一人も出ない事を覚悟の上でそう言った。


「私、やります!」

「俺もやる!」

「人質になって黙っているのは何ともしゃくだし、命が危ないのはどっちにしても同じことだし、協力しましょう」

 春川陽子が真っ先にやると言い出して、最後に安藤翔がゆったりと賛同した。結局全員一致で夢限に協力する事になった。


「あ、有難う。それじゃあ全員が賛成してくれたところで、戦略的なことを少しお話します。原則として二人一組で行動する事。

 一人では何かと不便です。しかし三人以上では怪しまれます。もし何かあったら、携帯電話で全員に知らせることにしておきましょう。

 その前に誰と誰とが組むかを決めておきます。なるべく気心の知れたもの同士がいいのですが、第一に力のバランスが重要な事です」

「力のバランス?」

 翔が説明を求めた。


「つまり強い者と弱い者とが組むという事です。弱い者同士が組んだのでは誰かに襲われでもしたら一溜りもありませんから」

「ふふふ、そうよね」

 春川陽子はご機嫌である。彼女は既に自分が誰と組むことになるのか分かっていた。


「それじゃあ一応こういう組み合わせで行きたいと思うのですが、先ず俺と、春川さん。安藤さんはユミさんと。影山さんご兄妹はそのままご兄妹で。金太郎さんは竜太さんと組んで欲しいのですが、何かご意見は御座いますか?」

「あのう、夢限さんと春川さんはどうして組むことになるのでしょうか?」

 影山リカは少し不服そうに言った。


「このメンバーの中では彼女が一番非力だからです」

「それだけですか?」

「はい、それだけです」

「わ、分かりました。ただ、私が兄と組むのはどうしてですか? 二人合わせればかなり強い組になると思うのですが」

 リカは暗に金太郎と竜太の組がやや非力である事を言った。


「ああ、それは、第二の理由として、気心が知れているということです。リカさんは他に誰かと組みたいですか?」

「あ、いいえ、そんな事はありません。これで良いです」

 リカは金太郎や竜太と組まされると思って、クレームを取り下げた。夢限と組めないのであれば、兄と組む方が余程良い。


「他に異論は御座いませんか?」

 ユミは何か言いたげだったが、結局は何も言わなかった。こうして二人一組のカップルが四つ出来上がった。


 夢限は更に言葉を続ける。

「ええと、ここの屋内格闘場に特に詳しい人はおられますか? さっき浜岡達は、地下に貴賓席ごと移動したようですが、彼等が何処へ行ったのか分かる人はいますか?」

「あっしはここに何度か来たことがあるんですが、あんなのは見た事がない。地下にも行った事があるんですが、ああいう仕掛けは見た事が無いですね」

 竜太が難しい顔で言った。他に安藤翔やユミ、金太郎も知識的には似たり寄ったりだった。


「誰も見た事がないんですね。困りましたね」

 夢限が考えあぐねていると、

「あのう、ナンシー先生なら御存知かも知れないわ。彼女とは連絡が取れないのですか?」

 リカはなかなか良い提案をした。


「ああ、そうか。その手があった。ええと確かこうやって、あれ、変だな、繋がらないぞ」

 夢限は、カード型のケータイの子機を開いてみたが反応が無かった。

「あのう、それって電源が切ってありませんか?」

 春川陽子はいぶかしげに聞いた。


「電源?」

「ちょっと貸して下さい」

 陽子はやや強引に夢限からケータイの子機を取って、スイッチを入れた。それを待っていたかのように、向こうから電話が掛って来た。


「電話よ、金雄さん、じゃなかった、夢限さん」

 陽子は慌ててケータイの子機を夢限に返した。

「あああ、済まない。ああ、あのう、ナンシー?」

「ナンシー、じゃないわよ、今まで何してたのよ。何度も電話を掛けたのよ」

「いや、その、うっかり電源を切っていたみたいなんだ。な、何しろ慣れないものでね」

 夢限は冷や汗を掻きながら言い訳をした。

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