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再会(5)

 試合時間は十五分。決着が付かなければ審判とレフリーによる判定で決定し延長戦は無しとなった。リングの外に出てロープから完全に離れれば、即負けである。

 二人が一緒にロープから離れたと思われる時は、ビデオ判定となる。これもほぼ同時で判断が難しい場合は審判とレフリーの協議によって勝敗を決定する事になる。

 またリングの外に出ても体の一部がロープに触れていれば、負けではないが失神と見なされ、直ぐリング内に入らなければカウントテンで負けとなる。


 ハイテク防具を必ず身に付けるので、目潰しや金的蹴り、髪の毛を故意に強く引っ張る等の一般的反則技以外は、全て認められる事となった。

 A、B各八人ずつの総当りなので、最後まで行けば28戦になる。途中で昼食休憩や夕食休憩があるので、判定試合が多いと夜遅くまで掛る事も考えられ、決勝に残る者にとってはなるべく早く終りたい所ではあった。


 Aグループの第一試合はいきなり金雄とストーン・アフリカとの戦いだった。選手が紹介されると金雄の人気は彼の想像を遥かに超えていた。

 一部罵声もあったが概ね好意的だった。格闘技のファン達は先ず強い事を第一義とするようである。日本の武道と西洋の格闘技とをミックスした様な試合形式だった。


「タガイニレイ! ハジメ!」

 レフリーも、二人いる審判も全員が試合の当事者と国籍が違う。その点においてはフェアーな判定が期待出来そうである。


「グワオーーーッ!」

 物凄い声でえたのは、ストーン・アフリカだった。並みの相手なら声だけでビビりそうである。


「エイッ!」

 金雄は普通に声を出して先ずはローキックを繰り出した。

「バシィ!」

 恐ろしい音がしたが、ストーン・アフリカはちょっと顔をしかめただけだった。その直後にストーン・アフリカもパンチを繰り出したのだが、金雄の俊敏さに付いて行けない。


「グオオーーーッ!」

 またも叫んだ。相手を威嚇する積りらしいが、空振りのパンチばかりでは何処か虚しい。

「エーイッ!」

 金雄はもう一度同じ場所を更に厳しく蹴った。

「バシィッ!」

「グググッ!」

 二度目になるとストーン・アフリカは苦しそうに声を上げた。


 金雄の蹴りが本来の力を発揮出来ないのはハイテクシューズを履いているからである。約半分の力に減殺げんさいされてしまうのだ。

 ハイテクシューズ同様、特殊な素材で出来ているハイテクグローブやハイテク道着の為に全てのダメージはほぼ半分になる。


 その様に力を機械的にセーブしても、尚これだけのダメージを与えている金雄のパワーが、如何に凄いかが多くの者達に想像出来た。


 ストーン・アフリカは今度は吼えられなかった。痛みに耐えられるうちに何とか攻撃しようとするのだが、金雄の動きが軽快で捕らえる事が出来なかった。


「エーーーイッ!」

 金雄の声は更に一段と大きくなって、

「バシーーーィッ!」

 同じ左足のすねの辺りに、三回目のローキックが炸裂した。


「グアーーーッ!」

 ストーン・アフリカは激痛に耐えかねて倒れ足を押さえて転げ回った。誰の目にももはや試合続行は不可能であると判断出来た。


「ウイーナー、エームー!」

 レフリーが金雄のニックネームの様になった『エム』の名を告げ、高らかに勝利を宣言すると、

「ウワオオオーーーーーッ!」

 場内に大歓声が沸き起こった。金雄はちょっと片手を上げて声援に応えたが直ぐ控え室に行った。午前中に少なくとももう一試合がある。出来るだけ早めに休憩しておかないと不味いのだ。


 ただ約束どおりアナウンサーがインタビューしに来た。金雄は部屋の外で立ってインタビューに答えた。平沼という中年の男のアナウンサーである。


「初戦の勝利おめでとう御座います。この大会に参加したのは初めてだとお伺いしたのですが、ご感想は如何でしょうか?」

「うーん、まだ何と無く実感がないのですが、これから徐々に気分を高めて行きたいと思います」

「次はサターン戦ですが、どういう戦法で戦われるのでしょう」

「情報が少ないので先ず模様見からということでしょうね。出来るだけ早く倒したいとは思っているのですが、殆ど知らない選手ばかりなので中々そうも行かないと思います」

「ああ、そうで御座いますね。お疲れの所どうも有難う御座いました」

「ああ、いいえ、それじゃあ」

 さすがにベテランのアナウンサーだけの事はある。疲れていることもさることながら、次の試合があることに配慮して、一分足らずのインタビューで終ってくれた事に金雄は大いに感謝した。


 部屋に入るとナンシーがタオルを持って待っていた。金雄の道着を脱がせると、まるで付人の様に丁寧に汗を拭いた。

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