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ユミ(11)

 先ず諸悪の根源は、ロボット工学で世界的に有名な浜岡敦博士です。野々宮君のホームページに書かれている暗号の解読から分かりました。

 有名人だから彼については知っていると思いますが、チップは彼からの指令によって別のプログラムを作動させるもののようです。

 お借りしたロボットの場合、雇い主の命令は聞かず、この街の放送局を占拠するプログラムだと思われます。現在密かに他のロボットの特殊チップの解読が全世界で進行しています。まだ全容は分かりませんが、見えて来たのは世界を彼の支配下に置く計画らしいという事です。


 その対策もまた着々と進行しつつありますが、予想以上に彼の計画は進んでいてしばしば壁にぶつかっています。もし美穂さんの周囲で何かおかしな事があったら、私に連絡して下さい。

 その場合、私の研究所に直接来て下さい。ただしその時には用心の為に下着から上着まで全て新品に取替え、更に全身をくまなく洗って、靴やイヤリングなどの装飾品等も新品にして下さい。


 冗談ではなく、本当にそれらに盗聴器等が仕掛けられている恐れがあるからです。免許証も駄目ですよ。キャッシュだけを持って出来れば徒歩でおいで下さい。(近くまでバスなどで来て、十分以上は歩く事!)


 無理なお願いで申し訳ないが、必ずその様にして頂きたい。世界が彼に牛耳ぎゅうじられるという事は、貴方あなたや貴方の大切な人の生命にも関わる事なのです。是非ご協力をお願い致します!


 尚警察などの公共機関に行って相談しては絶対に駄目!! それらの中には彼のスパイがうようよしていますから、非常に危険です!!

                     桑山研究所、所長 桑山雄二


 最後まで読んで鳥肌が立った。

『本当に恐ろしい内容だわ! 待って、ナンシーさんは浜岡博士と関係があったと思ったわ。とすれば金雄さんが拉致らちされた事とも絡んでる! ああ、変だと思ったけど大変な事件に巻き込まれていたんだ!』

 美穂は自分が何者かによって、それは多分浜岡の手の者だろうが、監視されている事をこの時初めて、しっかりと認識する事が出来たのである。以前から何と無くそんな気はしていたのだが、確信が持てなかった。

『まさか、幾らなんでもそこまでやるかしら?』

 そう感じていたのだが、今ハッキリと自分が監視されている事に確信が持てたのだった。


「彼氏からの手紙?」

 殆ど他のお客が居なかった事もあって、おばちゃんが暢気のんきに話し掛けて来た。

「ま、まあね、はははは」

 美穂は愛想笑いで誤魔化した。


「ちょっとトイレを借りるけど良いかしら?」

「はい、勿論良いですよ。トイレでじっくり読めば良いわよ。うふふふ」


 おばちゃんはすっかり彼氏からの手紙だと信じ切っている。美穂はわざと大事そうに手紙を封筒に入れてトイレに持って行った。直ぐ水洗に流して、溜息を吐いた。


『ふーっ! 今日、明日にでも桑山研究所に行く。ナンシーと金雄さんについて是非聞いてみなければ! でもその前に何から何まで新調しなくてはね。

 そうだわ、今日は一日掛けて買い物をしましょう。研究所には明日行くことにして仕事は二、三日休む事にするわね』

 美穂もまた計らずも反浜岡の行動を取る事になったのである。


 ナンシーと金雄は佐伯親子と一緒に、和風の、否、完全に日本式の朝食を取った。二人はこの状態がずっと続けば良いと思ったが、遅くても明日中には去らねばならないだろう。


「安藤さんのお宅はどちらなんでしょう」

 ナンシーは話題作りに聞いてみた。

「東に十キロ位です。それ程信号も多くないですから五分もあれば着きますわ。明日の夕方、食事が済んだら私がお送り致しましょう」

 ユミは気軽そうに言ったが、彼女の運転だけは二人とも絶対に御免だった。


「いや、是非お父さんにお願いしたいですね」

 金雄は少し青くなって真剣に言った。

「そ、そうですわ。お父さんの運転で全員行けば良いと思いますけどね。それ程急ぐ訳ではありませんから」

 ナンシーもここは必死である。


「お父さんがそんなに運転が上手いとは思いませんけど、皆さんがそうおっしゃるのなら、それでも良いですわ」

 ユミはちょっと不満そうだったが、竜太の運転に決まってユミ以外の全員がほっとした。


「ところでこれは聞いても良いのでしょうか? ええと、その、お母さんはおられるのですか?」

 聞くのを躊躇っていたのだが、母親に特別の思いがある金雄は聞かずにはいられなかった。


「あの人は出て行ったの。オーストラリアに馴染なじめなかったのよ」

 ユミは淡々と言った。

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