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反乱(15)

 間も無く警報のブザーが鳴り終わって、エレベーターは垂直に上へ上へと昇り始めた。

「ところで東の森について、お話しておきましょう。浜岡がどんな男かそれで良く分かると思いますよ。あの世へのお土産みやげに聞かせて差し上げますよ。

 私が斡旋した美少女達の他に、美少年もいるのですが、彼等は東の森で暮らす事になる。いや厳密に言えば、放し飼いにすると言うべきでしょね」

「放し飼い? か、家畜じゃあるまいし、どういう事なんですか一体!」

 金雄はやや語気を強めて言った。


「先ほど私は浜岡に協力しなくなったと言いましたが、まともにやったのでは反逆罪で捕まってしまうので、上辺は協力的にしていました。

 それで嫌な仕事ですが、世界中の美形の不良少年少女を集めて、ムーンシティの病院に送り込むのです。彼等は頭の中に電極を埋め込まれる手術を受ける」

「な、何の為に?」

 ナンシーは恐々聞いた。とんでもなく嫌な事である事は想像が付く。


「私は小森、いや、エム、貴方に言ったでしょう、何でも言う事を聞く生人形を贈るとね」

「ああ、そう聞いたけど……」

「主人の貴方がリモコンを持っていて、何かを命令するのです。もし逆らったら、リモコンのスイッチを入れる。頭の中に埋め込まれた電極から電流が流れて激痛が走ります。どんなにひどい命令でも従わざるを得ないという訳ですよ」

「酷い、酷ど過ぎる。人間のすることじゃない!」

 ナンシーは怒りに震えた。


「私は勿論反対しましたよ。しかし浜岡は聞く耳を持たなかった。東の森で彼等は、原則裸で暮らします。リモコンで制御されるから、彼等は東の森からは逃げ出せません。

 そこで何が行われるか。来年から始まると聞いているのですが、莫大なお金を支払って、普通の遊びに飽きてしまった連中が人間狩りをするのです。

 暴行しようが殺そうが、あるいはペットにしようが、まさかとは思うが食いたければ食ってもいい。地上では絶対に出来ない事をここでやる事になる。

 一週間東の森に泊り込みで、お一人様百億ピースという途方も無い値段なのに、もう予約が十件以上来ているのですよ。

 金持ちのやる事は私には理解出来ないですね。勿論金持ち全員がそうだと言う訳ではありませんが。ナンシーさん、浜岡が先生等と呼ばれる値打ちの無い男だという事がお分かりでしょうか? はははは、それとも何処までも彼を信じますか?」

 あまりに酷い話でナンシーは言葉を失った。何がしかの優越感に浸りながら、郁夫は更に話し続けた。


「人間狩りの話はごくごく一部の者しか知りません。キングやピアッサーのような幹部でさえ、恐らく知らされていないでしょう。

 私の様に彼と長い付き合いのあるものの内のほんの一部の者しか知らないのです。しかしこのアイデアは浜岡の発案ですよ。

 そうそう、あなた方はカランという女性を知っていますよね。それからガナッシュの愛人や刈谷の愛人、更にケイン部長の愛人。ナンシー狂いのケインで通っているのに彼には愛人がいたんですよ。

 とにかく彼女達も全員病院で手術を受け、頭に電極を埋め込まれて、東の森の人間狩りの獲物になるんですよ。もう手術は終了している筈だ」

「な、何だって! カランもか!」

 金雄も驚きの声を上げたが、

「カ、カランが!」

 ナンシーも悲痛な声をあげた。泣き出しそうになった。


「全ては浜岡の命令です。ピンクタウンまでなら私もぎりぎり許せましたが、もうついて行けなくなったのですよ。……さて、そろそろ終着です。残念ながら私は上には行けません。行ったら捕まってしまう。途中で降りますがあなた方はどうします?」

「途中で降りられるのか?」

「横穴がちょっとあるだけです。降りても何もありませんよ。餓死を待つのみです。しかし捕まって電極を埋められるよりは良い。

 浜岡は年寄りもいた方が、東の森がバラエティに富んでいて良いと言っていたので、多分私も人間狩りの獲物になるのでしょう」

「もしも途中で降りなければどうなるんだ?」

「もう少し上に行ってから止まります。地上まで百メートル以上ありますが、運が良ければ助かるかも知れません。百万分の一ぐらいの確率ですがね。

 このエレベーターはプログラムに従って動きますが、原則としてもう一度止まったら、後は特別な場合を除いて動きませんから。

 さっきも言った様に外からの操作は不可能だし、万一地上のドアを開けてあなた方を助けよう等とすると、今度はエレベーターが急激に昇って行って助けようとする人達を押し潰す趣向になっている。

 しかもエレベーターのドアは開きませんからね。間も無く横穴のある所に着きます。もう一度言いますが、エレベーターのドアは二度とは開きませんからね。こじ開けたら後が怖いことになりますよ」


 郁夫の言う通り間も無くエレベーターは止まった。郁夫は躊躇わずに降りた。餓死を覚悟しての事なのだろうか。金雄もナンシーも迷ったが、百万分の一の確率に掛けようとうなずき合った。

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