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反乱(10)

『一体あいつは何なんだ。さっぱり分からんが、大方高額の賭け金を稼ぐ積りなんだろう。しかし言う事を聞いても、約束が守られるという保証が無いじゃないか。

 ふん、イエスなんて言える訳が無い。余程切羽詰っているんだな。それにしても二十億ピースという金額にも驚かされたけど、何でも言う事を聞く生人形? そんなものがこの世の中にあるのか?』

 あれこれ考えつつも、今夜の試合の為に金雄は再び眠った。吉田からの電話がかなり気になったが、結局は電話だけだった。それ以外のことが何一つ無かったので、一応は安心して眠りについたのである。


「金雄さーん! 時間ですよーっ!」

 何時もの様にナンシーが起こしに来た。目を覚ますとナンシーの顔が直ぐ目の前にあったのでビックリした。


「えっ! あれっ? ナンシーどうしてここにいるんだ? ここは俺の部屋だよな?」

「無用心ねえ、ロックするのを忘れているわよ」

「あれ? そうだったか?」

「残念だわ、もっと前から分かっていたら、夜這よばいしてたのに」

「あはははは、危なかったな。今夜からしっかりロックしておかないとね」

「さあて、今日はいよいよ最終戦よ。勝てば浜岡先生の方から指示があると思うけど。もう世界選手権も近いから多分明日にでも地上に戻れると思うわ」

「分かったけど、一応部屋の外に出てくれないかな。下着姿なんでね」

「えーと、分かりました。名残惜しいけど部屋の外で待ってますから」


 ナンシーは本当に名残惜しそうに部屋の外に出た。金雄は大急ぎで服を着てナンシーと一緒に外出した。食事を外で取って、そのまま個室のトレーニングルームでトレーニングをするのである。


 試合は夜の十一時近くになるので、おやつや弁当を途中で買い求めて持って行って、午後八時位まではひたすら練習に明け暮れする予定である。その後ホテルに戻り、じっくり体を休めてから試合に臨む積りだった。


 予定通りに練習のメニューをこなし午後八時過ぎにホテルに戻った二人は、ホテルの少し前の路上で足止めを食らった。数人の警官に取り囲まれる感じになったのである。


 ケイン部長が掘削現場送りになり、警察のメンバーもシステムも大幅に変更になって間も無いというのに、ホテルの周辺は厳戒態勢になっていた。

 しかも、またしても二人は事情を聞かれる事になった。ただ前と違うのは、警察の応対がすこぶる紳士的だったことである。


 前の警察署は相当に壊れているので、今は臨時にナンシーの森付近に幾つかの大型のテントで警察の仕事がなされている。


 元の警察署は現在取り壊しが進んでいて、それが終ると新しい警察署が建設される予定である。何人かの警察官と一緒に車でテントの前に連れて行かれた二人は、一人ずつ新任の部長に事情を聞かれる事になった。先ず金雄が呼ばれた。


「どうぞお座り下さい。私は新任の警察部長ピアッサーといいます。浜岡先生のご指導でと言いますか、先生に憧れて日本に留学しましたので日本語に不自由はしません。

 私の直接の上司はキングと言う方なのですが、現在地下都市にはおられないので一応私がこのムーンシティ警備の最高責任者となります」

「キングは居ないんですか?」

 金雄は驚いて聞いた。


「はい、キングは浜岡先生と一心同体と言いますか、現在ある目的の為に行動しています。詳細は申し上げられませんが地上で活動しておられます。……早速なのですが、昨夜から今朝にかけて小森さん、貴方に電話が御座いましたね」

「はい、ありました。吉田と名乗っていました」

 金雄は盗聴もあり得ると思っていたので、ピアッサーが電話の事を知っていても驚かなかった。


「その点に関して少し詳しく聞きたいのですが。今捜査しているのはその連中に関してなんですよ」

 ピアッサーの質問に金雄は殆ど何も隠さず素直に答えた。


「それではその件はナンシーさんには話していないのですね?」

「はい、余計な心配を掛けては迷惑だろうと思いましたので」

「良く分かりました。ご協力有難う御座います。それではどうぞお帰り下さい。もう間も無くホテルの方も片が付くと思いますから。

 ただ念の為にナンシーさんにも事情をお聞きしたいので、少しお待ちになって下さい。決して余計な事は言いませんのでご安心下さい」

「はい、宜しくお願い致します」


 金雄と入れ替わりにナンシーが呼ばれたが、五分も掛からずに事情聴取は終った。二人ともちゃんと車でホテルに送って貰えた。ケイン部長の時とは余りにも違う応対にちょっと面食らったが、親切な応対なので悪い気はしない。

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