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死の現場(4)

 石は重いので余り積み上げる必要は無い。荷台の側面の少し下に重量が大きく液晶表示されている。それを見ながら石を積めばいいのである。

 ただ、せわしく動き回るローザーには特に注意が必要である。人間を障害物として自動的に避けて通るが、グルーズの言う通りに完璧ではない。


 金雄も最初は戸惑ったが、何回か石を運んでいるうちにコツが飲み込めて来た。欲張って余り大きな石を運ばない事である。重い石だと動きが鈍くなり、ローザーに巻き込まれる恐れがあるのだ。


 金雄のパワーを持ってしても十二時間掛かった。第一好きでやっている訳ではないのでノルマさえこなせば良いと皆考えていて、大汗を掻いてまでやる者はいない。金雄も例外ではなかった。


 ロボットダンプは、

「ファン、ファン、ファン、ファン、……」

 と警告音を発しながら自動的に走って行く。何処へ運ぶのかは全く知らされていない。ダンプを見送っていると、グルーズが寄って来て、

「自分の仕事が終わったら、さっさと部屋に帰って休め。間違っても人を手伝うなよ。手伝ったらノルマを増やすからな。次のノルマは明日の正午からになる。

 それまでは絶対に仕事をしちゃならんぞ。まあダンプが五分前に来る筈だから、五分早い位ならどうということは無いがな。

 それから弁当は食いたければ何時食ってもいい。ただし前にもちょっと言ったかも知れんが、食いかけで捨てたりするとノルマが増えるぞ。

 食い物を粗末にする奴には厳罰がある事を忘れるな。勿論アレルギーは別だ。アレルギーがあったら早めに申し出る事だ」

「ああ、分かった。俺は食物アレルギーは全くない。それじゃあ休ませて貰う」

 他の連中がやっと半分位なのに自分だけ休むのは心苦しかったが、下手に逆らっても、どうにもならないので大人しく従う事にした。


 シャワーを浴び、たった一人でゆっくり休んだ。部屋にはかなり上の方にデジタル式の時計が掛かっている。二十四時間制の表示なのでここでは重宝である。年中明るいので時間の感覚が麻痺まひしそうだったからだ。


 時計はロボットダンプにも重量表示の横に付いている。時計を持つ事は許されていないのでその二つの時計だけが頼りである。


 ぐっすり眠って目覚めると一人を除いて全員眠っていた。その一人は予想通り野沢幸吉である。ノルマが増えたのでかなり苦戦している様だった。可哀想だとは思ったが仕方が無い。


 朝食用のトラックが既に来ていて、金雄は弁当を取りに行った。肉体労働のせいか早朝だったがかなり空腹だった。金雄が外に出るのと幸吉が部屋に戻って来たのとほぼ同じ時間である。幸吉は疲労困憊の様子で金雄にも気が付かない程だった。


 その時間には既に他のグループが働いている。やはり金雄達と同じ様に石を運んでいる連中もいた。車体についているナンバープレートの数字を見ると、使われているロボットダンプが自分のと同じ物である事に気が付いた。


『しかし妙だな、もしそうだとすると俺の場合はともかく、野沢さんのなんか今終わったばかりだぞ。どうなっているんだろう?』

 金雄が不思議そうに見ていると、気が付いたのだろう一人の監督がやって来た。

「おい、何を見ている!」

「ああ、あのう、自分の使っていたダンプを他の人が使っているんで、ちょっとビックリしました」

「はははは、何だそんな事か。そういえば昨日来たばかりの新入りだったな。いずれ事情は教える事になるんだが、この神田様が一足先に親切に教えてやろう。

 お前らのグループは力のあるグループだ。一人一日五トンのノルマを軽くこなせる。今は不慣れだから時間が掛かっているだろうが、そのうち大抵の奴は14、5時間で仕事を終えるようになる。


 そうするとダンプは10時間近く空いてしまう事になる。そこでこいつらと交替する事になるんだが、こいつ等はお前達と違って非力だ。最初から五トンでは身が持たない。

 そこで練習がてらノルマを軽減してやっているのさ。体力の程度に応じて割り当てている。こいつ等でも短時間なら何とかなるのでね。ただ今回は初日からやたら早く終わる奴がいてね。少々呆れているんだが……」

「成る程、よく分かりました。有難う御座います」


 金雄は慌てて弁当を持って部屋に戻った。まだ全員が泥の様に眠っている。少々の音では目覚めそうに無いので安心して弁当を食べられたが、

『ちょっと仕事のペースが早過ぎたかも知れない。同じダンプを他の人が使う事を知っていたら手抜きしてゆっくりやるんだった……』

 と後悔した。多分上手く調節はするのだろうが、自分が早く終れば終る程、他の人の負担が増える様な気がして来て気分が良くないのだ。


 暫くして弁当を食べ終わり、お茶を啜って空の容器をトラックの荷台に捨てたが、正午まではまだ大分間がある。仕方が無いので外を散歩していた。


 が、それにも飽きてプレハブ住宅の裏の方で格闘技のトレーニングを始めた。目立たない様に音も無くやっていた。その時、現場の方から大きな警報音が聞こえて来た。


『事故なのかっ!』

 金雄の心に緊張感が走った。

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