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まどろみ  作者: 中島 遼
80/89

北の椎名3

「彼女の友人が麻薬中毒になりました。だから、俺たちは元を絶とうと色々調べて、椎名さんに行き着いたんです」

「色々調べてって、どうせ数回立ち聞きしただけじゃろ?」

「手段はともかく、貴方が麻薬を暴力団に流していることを知り、それをやめてもらおうと思ってここに来ました」

「……麻薬を分けて欲しい、とか、どこにそれがあるとかは聞かないんじゃな?」

 もちろん、どこにそれがあるかは萌も知りたいところだ。

(……そうすれば全部灰にしてやるのに)

「今は問いません。ただ、貴方みたいな地元の名士が、どうしてそんな悪いことに手を出そうとしたのかは聞いてみたいと思っています」

「ほう」

「ばれたときのデメリットが大きすぎる。しかも、暴力団には無償で渡しているようだった」

 萌は驚く。

(そんなこと、気づきもしなかった)

「何が目的なんです?」

 老人はうっすらと目を細めた。

「君は自分が何者なのか、知っているのかね?」

「え?」

「瞬間移動ができるということは、君もまた、わしと同じ者だということだ」

 高津はさらに眉の間のしわを深くした。

「やはり、貴方もリソカリトなんですね」

「ほう」

 老人は微かに驚いた顔をした。

「その言葉を知っているのか」

「去年の秋に、夢で」

 相手は不思議そうな顔で高津を見る。

「夢?」

 ということは、この老人は夢の外にいたということか?

「失礼ですが、去年の夏から秋にはどこに?」

「普通に生活していたが?」

「旅行なんかは?」

「確かに夏と秋に二度ほど海外に一族を引き連れて遊びに出ていたが、それが?」

 高津は頷いた。

「この町にいらっしゃらなかったのは……ひょっとして、嫌な予感がしたからですか?」

 老人は答えずに微笑み、湯飲みを手に取った。

「冷めないうちに、君たちもどうぞ」

 萌は拳に力を入れる。

 やはりこの老人は、高津とほぼ同じ系統の力を持っていた。

 そして、夢に参加していないのにリソカリトのことを知っている……

「遊びにって、麻薬の買い付け?」

 高津の言葉に老人は笑った。

「あれは麻薬ではない」

「じゃあ何?」

「媚薬じゃよ」

「……は?」

「じゃから法には触れてはおらん。君が心配するようなことは何も起こらない」

「……現実に、入院している人がいるのに?」

「この町を出ない限りは特に問題はない」

 萌は微かに眉をひそめた。

 そんなことを前にも聞いた気もするが……

「どうして?」

「守りがあれば、苦しくはない」

「守り?」

「……血の守りじゃよ」

 怪訝な顔をした高津に、老人は頷く。

「逆に聞こう、君はどこまで知っている?」

「え?」

「己の力の意味について」

 高津はぐいっとあごを上げた。

「自分がリソカリトだと言うことは知っています」

「やめよ、その言葉を出すのは」

 あからさまに老人は嫌な顔をした。

「違う言葉があろうが」

「え?」

 戸惑った顔の高津に、萌は助け船を出した。

離人成神人リソトカミト

「え、あ?」

「長谷川さんはそう呼んでいたわ」

 老人は今まで存在を忘れていた事に気づいたように、萌をじっと見た。


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