電話2
そうして一週間後。
高津はテレポートを使って再び町に戻った。
田舎のせいか、彼の町はネットのストリートビューがなかったので、地図を頼りに町を歩く。
(中町には倉庫は三つ)
一つは普通の白っぽいグレー、一つは薄緑、一つは濃い緑。
緑の倉庫、と言ってわかるということは、彼らがよく使っている倉庫の二つのうち、緑の方ということ。
(つまりは白灰色の倉庫と持ち主が同じか、系列会社)
と、そこまではわかったが、その後どう調べたらいいかはわからない。
一応住所と会社名を調べたが、特に関連性もないようだ。
(どっちだろ)
夜なので倉庫は閉まっている。
今回はどうしてか高津の勘働きも鈍く、これと言った予感もしない。
ただ、幸い二つの倉庫は近く、五分ぐらいで行き来はできる。
(当日、人の気配が多い方が受け渡しの倉庫だろう)
高津は一人納得して、バスには乗らずに駅の方へと向かった。
そこからだと駅まで歩けば三十分はかかるが、何となく萌に会えるような気がしたのだ。
予備校は十時に授業は終わるが、その後一時間ぐらいは開いている。
萌がそこまで頑張っているかどうかはわからないが、ぎりぎりまでいればちょうど会える時間帯だ。
だが、駅前のバス停近くまで来たとき……
「……あ」
萌だとわかる青い気配に気づいた高津は、同時に萌の横に歩く別の気配も感じた。
方向的には予備校とは違う場所からこちらに向かって歩いてきている。
(こういうとき、不便だな)
赤い色は相当遠くでもわかるが、青い色はそれなりに近くに来ないとわからない。
だから、逡巡する間に高津は萌と伊東が仲良く談笑しているのを見てしまった。
彼は一つため息をつき、そして人のいないところまで早足で去る。
そして、まるで追われているかのようにテレポートで部屋に戻った。
(何で……)
吹っ切ったはずなのにくよくよする自分が嫌で、高津は布団に突っ伏したままため息をつく。
どっちにしても身体は鉛みたいに動かないのでちょうどいい。
(……あ)
電話が鳴った。
萌からだ。
逡巡したが、身体が動かない事を理由に彼はそのまま放っておいた。
(……緊急のことならまた電話ぐらいかかってくるだろ)
それに、高津の勘所では特に切迫感や不安はない。
(……大丈夫だ)
言い聞かせながら眠りにつき、そして次の日の朝、急いでお詫びメールする。
だが、返ってきた返事は、
<ありがとう、解決したからもういいの。ごめんね>
高津はベッドでもんどり打つ。
(……何だったんだ?)
一応、再度メールする。
<何が解決したの?>
<野球観戦の相手を探してたんだけど、行きたいって言う人が見つかったから。それと、バイト中だからまた後で連絡するね>
野球観戦?
萌の口、いや、メールでそんな言葉を聞いたこともない高津はしばし固まった。
しかも、ペナントレースの盛り上がりも沈静化している今日この頃に?
(それって)
何かの抽選でチケットが当たってしまって、相手を探していたと言うことか?
「しまった!」
今度は声にして叫ぶ。
相手は伊東に違いない。
(それにバイトって?)
浪人生の分際で、何でバイト?
電車賃を稼ぐためとか?
「ああっ!」
何だか決定的な事が昨日の夜の電話で全て決まったような気がした。
危険予知ができたとしてもこういう事がわからないなら、平和な日本では特に意味のない力だと強く思う。
高津は床に座り込んだ。
(今日はそういう日だ)
ますますそういう思いが募る。
(ああ……)
再び高津が頭を抱え込んだとき、
(ん?)
また電話のベルが鳴った。
着信音はその他大勢用。
見るともなしに相手を見ると、どうやら公衆電話のようだ。
(妙だな)
松並が携帯を忘れて、こっちに連絡をよこそうとしているのかも知れない。
放っておこうと一度は電話を床に転がしたが、そこで一度思い直す。
(さっき後悔したのに、俺はまた同じ事を繰り返すのか?)
高津は電話を取った。




