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まどろみ  作者: 中島 遼
26/89

田島1

 昼休み、教室や食堂でご飯を食べるのが嫌で、萌は一人外に出た。

「……あの」

 と、予備校の門を出たところで呼び止められ、萌は振り向く。

「神尾さん、ちょっといいかな」

 名前は覚えていないが、由美とよく一緒にいる女の子だ。

(……ということは、同じクラス、かな?)

 あまり深く気にしたことがないので、相手の素性はわからない。

「何?」

 相手が手で動くように指示したので頷き、並んで歩き出す。

 人目につくところで萌と話をしているのを見られるのが嫌なのかもしれない。

「こないだ、一緒に男の子といたよね?」

「あたし、学校で男子と話しなんてしたことないよ」

「ここじゃなくって、外。ほら、由美とばったり会った時」

 萌は少し考え込む。

「伊東君かな」

「あ、そうそう、由美がそう言ってた。ね。あの子とつきあってるの?」

「……は?」

 あまりの唐突さに、萌は硬直する。

 相手の目的がよくわからない。

「……ごめんね、いきなり」

 一応、自覚はあるのか、由美の友達は申し訳なさそうにつぶやいた。

「それはいいけど」

 萌は相手を見据える。

「実はあたし、人の名前を覚えるの苦手で……」

 皆まで言わせず、少女は頷いた。

「ごめん、自己紹介もまだだった。私、たじまみづき」

 萌は掲示板を思い出す。確か実力テストの点の高い生徒に、田島美津紀というのがあった……

「ああ、あの英語がいつも一番の」

 すると相手は微かに顔を赤らめる。

「英語以外は駄目なの」

 萌は微かに首をかしげた。

 その英語が得意な他校出身の田島が、どうして伊東と萌の関係を聞き出そうとするのか。

「それでその……」

「そうなの、その人のことなんだけど」

 相手は萌が喋る終わるのを待たずに話し始めた。

「彼氏?」

 萌は首を振った。

「友達」

「そうなの?」

「うん」

「どうして?」

「どうしてと言われても……」

 質問の意味がわからなくて萌が考え込むと、田島はじっと萌を見る。

「神尾さん、好きな人、他にいるの?」

「えっ!」

「それって高津くん?」

「ひょっ?」

 びっくりしたあまりに、変な声が出た。

 何故、余所の学校の生徒が萌の学校の男子の名前を知っているのか。

 というか、ほぼ初対面でこんな質問をしてくる相手の真意が読み取れない。

「何でうちの高校の男子を知ってるの?」

 ようやくそれだけの台詞を思いついて言うと、相手は微かに笑う。

「高津君は有名よ、一年の時からバレー部でレギュラーだし、格好いいし」

 そんな話を大昔に聞いたような気もするが、校外でも知られているとは思わなかった。

「そもそも去年はうちの予備校通ってたし」

「いずれにしても凄いね」

 萌は心底感心した。

 余所の学校どころか、自分の学校の生徒すら覚えられない自分は英語を得意科目にすることはできないだろう。

「うん、高津くんは凄い」

 言いながら田島はこちらを見る。

「……って、他人みたいな感じね。よく知らない訳じゃないんでしょ?」

 誤解を解くのも面倒で、萌は頷く。

「まあ、一応同じ学校だし」

「それだけ?」

 意味がわからなくて返す言葉が見つからない。

 すると相手は勝手にわかったような顔でうなずいた。


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