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有 女 同 車   作者: OufPuf
3/8



お答えします。


御指摘のとおりです。誰のせいでもありません。私の不注意だったとしか言いようがないのです。


電話中だった相手を憎んだりもし、恨んだりもしました。病棟のベッドに身を横たえていた毎日、いつもいつも後悔するのは、電話の事でした。


何故あの数秒間だけでもスマートフォンを脇へ置くなりして、車庫入れに集中しなかったのか。もっと慎重にできなかったのか、と。数秒を節約する為に、私は残りの一生を棒にふりました。


サービス管理責任者様というお方には昨年十月の面接時にも申し上げましたように、私は、自分を、前向きな、積極的な人間だと考えています。くよくよしたくありません。


ですから、どうして障害をおのれのうちに統合し、これもひとつの「個性」としながら生きてゆくべきか、今はそれに取り組みたいと願っています。恐らく、長いお付き合いになることでしょう。宜しくお願いしたいと思います。


繰り返しになりますが、私は、性格的には明るい人間だと、自分を理解しています。ただ、合わないものは合いません。三ヶ月や四ヶ月間で変われたら却って不自然でないでしょうか。神経質なのです。いずれにしても、すぐに受け入れるのは簡単でありません。


障害者よりは、気の合うお年寄りの方々が待っていてくれるセクションへ行くことを、今後とも許してください。障害を持つ人を嫌っているのでない、これは、勿論です。私にしろその一人です。


車椅子のオトモダチが欲しい、これが大きなファクターでした。実は、私が貴施設に通おうと決めた理由に、車椅子の仲間が欲しいことがありました。


なおまたひとつのファクターは、お風呂です。仕合わせにも元気でおります二人暮らしの母の話ではありますけれども、私を入浴させるのには骨が折れます。娘が幼稚園以来の仕事を三十何年ぶりでやる羽目になったのだと思えば。


おまけに、今度の園児は車椅子。お風呂場にしろ浴槽にしろ、車椅子を考慮した設計でありませんから、大変です。当初ヘルパーさんを頼みもしました。大変さは変わりません。入れるほう、入れてもらうほう、一苦労なのです。


そこへ行くと、週に三日、大きな浴槽につかりながら体がほぐせるのは、私にとり大きな楽しみでもあり、気晴らしでもあります。いえ、入浴のみにとどまらず、私が家をあける時間は、余計な家事が省ける母の為に良い respite と言え、その意味に於いても、皆様には感謝しております。


それはそれとして、かのランナーの言葉ではありませんが、それでも、私は自分を褒めたいと思います。思えるまでになりました。


いかに前向きな自分であっても、そして、電話の相手は許しましたにしても、落下事故そのものを記憶から消すことは出来ませんでした。現時点でも出来ません。出来るものですか。


何かの拍子に場面が再現されます。こればかりはコントロールが利きません。悪夢にさえ見ます。車が落下しつつある状態から119番で運ばれるまで、全部意識があったのですもの。


それでも、私は何とか、リハビリの先生方の助けもあり、何とかここまで、精神的に肉体的に恢復しました。試練の12ヶ月でした。生涯自分の足で歩く可能性がないと考えると、母の未来を考えると、夜中、明かりが消えた病室のベッドの上、叫びだしたいようでした。


想像してもみてください。人生の半ばにあって手帳を申請する「中途障害者」というのは、思いがけず障害を負った人なのです。さあ、いよいよ今日の夕方からは身体障害者福祉法が適用される身だ、明日っから総合支援法を存分に使ってやろう、など予定のある人間が存在するでしょうか。母もしかり、みな計画を立てて老います。計画にそって半身痲痺する者はいません。


一昨年の誕生日、祝ってくれた仲間で、生活介護サービスを受けに通う田代啓子を占った者がいたか。少なくとも、田代啓子にすれば、寝耳に水の事でした。


今日はこれくらいで。続きは次のメールにします。【関わってくださるワーカーの皆様にも目を通していただけたらと思います。宜しくお願いします】



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