S1 「初めてのお風呂」
とっても短い話です
時々こんな感じで挿絵的な話を入れて行こうかと思っています
高級宿『風流』今夜から三日間泊る宿は丁度他の客が少ない時季らしく宿は貸切
女将が詫びを入れてきた
「お客様。大変申し訳御座いませんが、今宵は内風呂の用意が整いませんでした
目隠しは施しておりますので、今宵は外風呂をご利用下さいますか」
「外風呂?あぁ~露天風呂ですか!良いですね。うんボクは露天の方も
好きですから気にしないで下さい。因みに露天って事は温泉ですか?」
「はい。この地方で唯一温泉が沸く町ですから、当宿は内も外も温泉となって
おります」
温泉・露天・混浴?で気分MAXの俺…嫌々俺外見は女だから…
幼女と温泉混浴に少し罪悪感を持ちつつも、相手が風呂の入り方を知らないなら
…仕方ないじゃん。と勝手な言い訳を言いながら、心ウキウキでアデルと手を
繋ぎ風呂場へと向う
カコーン。コポポポー。ジャー。
露天風呂でアデルと共に2人きりで入る。先見を十分に泡立ててから全身を
洗ってやった。ゲームにも当然獣人は居た。だけど一糸纏わずってシーンを見る
事はない。なので…正直アデルのスッポンポンを見て俺は驚いた。
髪は当然在るし尻尾も見える範疇だから判っていたが、残りはなんと人と
まったく同じだった。正直も少しからだのアチコチに毛が生えてると
思っていたのだが…まぁ~アデルが幼子だからだろうが、ものの見事に毛一本も
無い。折角頑張って泡立てたのにと俺はガッカリ気分だ。赤褐色だった髪色が
少し薄まった気もするが、全身ツルツルテンのショックが大きくて気にも
留めなかった。少し前なら『お兄ちゃんコレ何?』と指差される事も無く。
当然幼子に欲情する気も無い俺は、ゴシゴシとアデルの髪を洗ってやると共に
大きな湯船にどっぷりと浸かる。電気の無い世界。街灯は当然無く蝋燭の小さな
明かりが灯るだけの風呂場。空には大きな月と小さな月の二つが少し重なるよう
に浮かんでいた。
『名月や 池をめぐりて 夜もすがら』
「お姉様、それは何の言葉ですか?」
「ん?コレかボクの国の昔の人が歌った句って奴だ。本当は空に浮かぶ月と
池に映る月の二つを見て楽しんでいたら朝になりました。的な内容の句だ」
「句ですか?」
「そう句だ。まぁ~その時、その時に感じた自分の心を言葉に表した短い文
って所かな…芭蕉も月が2つの所で読まれるとは思わなかっただろうね」
「なんとなく…良い言葉ですね」
「ええ~本当に判るのか?ボクは正直判んないぞぉ~。
…ただ、やっぱりボクは祖国には帰れないんだなぁ~って思ったら
浮かんだ句なんだけどな」
「お姉様…」
ぼ~っと温泉に浸かった所為で、ついついシミジミとしてしまった。気が付けば
アデルが既にお休み状態になっている。慌てて風呂をあがり部屋で寝床に着いた
S1 「初めてのお風呂」 完
如何でしたか?
話が短いので、15時頃 1本追加投稿します