四話 「捨てる神あれば拾う神あり」
四話目です
町の南側の商店街。問題の武・防具屋からは西にの位置にある地区に一軒だけ
在った宿屋『風流』を見つけた。さっきまで居た地区は町の東地区だ。アッチが
庶民派の商店街ならコッチは高級店街だろう。宿を探しながら店を覗いてみると
エロ小僧の触手を揺さぶる品々が置いてある。『火術師のローブ』は女性が
着ると赤いチャイナドレスに変る一品だ。『鋼鉄の鎧』は胸を強調したアーマー
プレートになる。どちらも資金にユトリガ出来た新人が一度は購入する装備品
しかし今のジュンにそんな余裕は無い。そして『風流』は隠れ家的宿屋。部屋数
が少なく設備が整った宿だ。庶民派の宿が1泊30£に対しここ風流は1泊70
£倍以上の値段だが、部屋は広めで1階に大浴場完備だ。迷わず此処に3泊分
前払いで金を払う。
「姉様はお金持ちなのですか?私の様な奴隷に装備品を買ったり、高級宿屋に
お泊りになるなんて…信じられません。里の妹に聞かせたいお話です」
「あはは。違うよ。ボクは只の駆け出しの冒険者さ。だけど、寝る所と食物は
お金を掛けないとね。生きて行く基本さ」
「そんな…夢みたいな話…私を買って下さって本当に有り難う御座います」
涙混じりに頭を下げるアデル。考えて見れば、この幼さで親元から売られる境遇
それなりに貧しい暮らしだったのだろう…ジュンも思わず貰泣きをする
「良いかい。ボクは出来るだけガンバルから、アデルもご飯いっぱい食べて
大きくなるんだよ。そしたら一緒に冒険が出来るからね」
「はい。私は姉様をお守りする為に一生懸命食べて大きくなって強くなります」
(う~ん素直でキャワイイなぁ~。あ~俺に妹が居たら…)
などと呆けている時間はジュン達には無い。今回は相手の目を誤魔化したが、
既に目を付けられている。早く次の手を考えないといけない。
ジュンは一旦部屋で落ち着こうとしたが、直ぐに行動へ移った。
「…あった」
探していたのは『鑑定メガネ』アイテムの内容を見ることが出来る魔法グッズだ
300£と定価だが、今のジュンには痛手となる。だが、有ると無いとでは
大きく違う為、清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入。早速掛けて見て驚いた
「くそ~やられた!」
ジュンの着ている革鎧に『マーク』の付与魔法が掛けれれて入る事に気付く。
術者が離れていても居場所が判る魔法だ。こんな付与が付いていたら、何処に
逃げても居場所がばれてしまう。運が良かったのはこの魔法がジュンの着ていた
鎧だけにしか付与されていなかった事だ。1つだけならどうにか成ると道具屋の
主に下取りに出す。下取り価格400£思いの外高額で安堵し次は変る防具を
買わなければならない。急いで防具屋を覗くが此処には安い品は無かった。
残金約470£で買える防具は無い。困っていると店主が訳を聞いてきた
「お嬢さんや何を慌てておる?何か訳有りの様子だが話を聞かせてみないか?」
このオヤジも最初の武・防具屋と同じだったらどうしようと考え込む…だが、
今のジュンには鑑定メガネが在った。もう騙される事は無いと判断し事の経緯を
話す事にした。
「…そりゃ~同じ商人として許されないな。確かに娘さんの言う通り、最近の
事件に関係が在るかもしれん…どうだワシのお古だが、『術士のローブ』なら
タダで譲るぞ。防御力は少し下がるが、その分魔力が増える防具だ。
何も付けないよりはマシだろう」
天の助けとはこの事だろうジュンは有難く申し出を受け術士のローブを着込んだ
白いタイトなワンピース。裾丈が少し短いがショートパンツが見せパンっぽくて
萌える(あぁ~自分の姿に萌えるって…俺段々危ない方向に落ちてるよぉ~)
「おほほほっ。中々色っぽい格好になったな!眼福、眼福」
店のオヤジも喜んでる。ここは貰ったお礼に十分拝観させてやろう。
防具屋のオヤジは共に警護隊の所に出向くと進言するが、手を打つから黙ってて
くれと頼み込むと下取りに出した鎧を魔法遮断箱に入れ俺に渡してきた
「お前さん…仕返しする気だろ。その心意気買ったよ!『女だてら』なんて
野暮な考えは無いさ!思いっきり仕返ししてきな。その箱は魔法を遮断する
シロモノだ。箱さえ返してくれるなら持っていきな」
そう言って防具屋のオヤジはジュンに箱ごと預ける。
『捨てる神あれば拾う神あり』とは、この事だろうか
礼を言って留まっている宿を告げ店を出るジュン。次はコッチが仕掛ける番だ。
宿屋『風流』に戻り部屋で一息つく2人
「姉様。その箱をどう使うおつもりですか?」
「これで敵を誘き寄せるのさ。鑑定メガネもコッチには在るからね。
相手が犯罪者なら、容赦なく攻める。懸賞金が出るかもしれないな
明日は一日町のの近くで狩りをしよう。少し力を付けて備えようか」
「狩をして訓練を重ねるの良い事ですけど、一日で成長等しませんわ。
お姉様ってら時々面白い事を言われますね。クスクスッ」
小馬鹿にはしていないが、どうやら俺の発言がアデルの壺に嵌ったらしい。
この娘を買ってまだ半日も過ぎて居無いけど、初めて見る本気の笑顔に心が和む
風流で出された料理にアデルが固まった。可愛い目は零れ落ちるかと思うほど
見開き口は大きく笑っている。流石高級宿屋。味だけで無く見た目でも料理を
楽しませる工夫が施してあった。色取り良く盛り付けされた皿を食入る様に
見詰るアデル。早く食べたいと可愛い尻尾が左右に振れていた。
「どうした早く食べな!」
「よいのですか?」
大きな眼が俺を見詰る。…あっ!そうかと気付く俺。この娘は主人の俺が号令を
掛けない限り食に手を付けないのだ(ここまでワンちゃんに徹しなくても…)
「よし。ゆっくりしっかり噛めよ!お替りして良いからな。どんどん喰え」
「ハイ。!いただきます」
尻尾のメーターが吹っ切れる程左右に振り回しながら皿に手を付け始めるアデル
見ていると後ろから抱きしめたく可愛さだ。
「もう…駄目です…お腹いっぱ…いデス」
部屋のベットで仰向け状態で転がるアデル。目の焦点が合ってない気がする。
生まれて初めて腹いっぱいご飯を食べたと泣きながら笑顔を俺に向けたアデル
コイツの為にも絶対生きなきゃ!そして居るかもしれない瞳の情報も探すぞ。
と新たに決意を固めるジュンであった。
「おいおいアデル。そのまま寝るなよ!?
眠いなら風呂に入ってからにしろ!」
「お姉様。私は風呂などに入った事が有りませんから判りません」
「…なんと出会って半日ほどの幼女と俺は…混浴する事になってしまいました」
四話 「捨てる神あれば拾う神あり」 完
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