十六話 「移動には魔導具が性に合う」
16話目となります
面白い事に気付いた。成長は戦闘だけのものではない。日々の生活の中で
経験する事が成長に繋がる。但し生活習慣で得る経験は向き不向き・行なう仕事
で、得られるものは違う事も判った。
「お姉様、私乗馬で少し力とバランスが養われた気がします」
「ああ~それ、私もです」です」右に同じです」
アデルの言葉を皮切りに娘達皆が同じ事を言い出した。ケリー先生も粗皆に
合格点を与える・・・ボクを除いて…。
「あぁ~何でボクは乗れないの?悔しい」
「カリンなんて、あんなに!あんなに!オッパイを上下に揺らしながら上手に
馬に乗ってるのに~。マギーなんて普通の長さの鐙では足が届かず、
まるで騎手が使う長さの鐙って、あれじゃモンキー乗りにしか見えないよ」
「ジュンは硬いのよ。お尻もしっかり鞍に乗かったままだし…なんて云うかな
リズム!そうリズムが大切なの。馬の動きに合わせて鐙に立つ感じよ」
極意皆伝…と行かず、どう足掻いてもボクには無理とハンコを打たれてしまった。
「仕方が無いわね…ジュンちゃんコレならどう?」
ケリーさんがボクの前に差し出したのは、魔導で動く原チャリだった。
「やっぱり貴女不思議だわ!?」
ケリーさんが意地悪してボクに見せなかった原チャリ。何故かボク以外
乗りこなせない。ここが現代日本人との差なのだろうか?実の所この原チャリ
昔ケリーさんがダンジョンで手に入れた品らしい。乗る事が出来ず、売りに出し
ても買い手が付かない品だったからお蔵入り。そこで、ボクの登場だ。
馬には乗れないけれど、原チャリには乗れる不思議ちゃんとしてレッテルを
貼られたボクだけど、ケリーさんが格安価格でボクに譲ってくてた。
結局、皆に1頭で引く馬車と馬を購入。序に長椅子3列搭載し背もたれを倒せる
ように改造を済ませた。これでリクライニングさせれば、フラットな簡易ベッド
にも代わる優れモノへと変身した。
一日休息を取り日を改めて北の草原へ向う事にし、ボク等は久し振りに休日を
満喫する事にしたのだ。
「お姉様!お姉様は、どうお過ごし為さる御つもりですか?」
「う~んこの原チャリ魔力で動くんだけど…乗り手の魔力が尽きたら
止まるんだよね。だからその辺を改造できないかな?って思ってるの」
「改造ですか…でしたら、やはりここは、ヘルマンさんにご相談するのが
宜しいのではないでしょか?」
等と風流の裏手でアデルと話をしていると、そこへ板前のロジンさんが現れる
「おや!お2人で、こんなトコで何してるんですか?」
カクカクシカシカとロジンに話をしてみれば、どうやら興味が沸いたらしい。
アレコレと原チャリを眺めながら、考え込み始めた。
「所でジュン様は、コレの何処から魔力を吸われる感じが為さるのですか」
「えっと、此処に足を置いたら…かな」
「なるほど、って事は、ああして、こうして…こうすれば…」
などとロジンが頭を捻りながら考える。要はこの魔導原チャリ、重要なのは
魔導エンジンと魔力吸い取り口だけで、後はどうにでもなる仕組みである。
ロジンの考えを基にヘルマンの鍛冶師としての腕を注ぐ事で、原チャリが
アメリカンタイプのバイクへと姿を変える事に成功したのだ。
GEの板前さん恐るべし。更にヘルマンが悪乗り魔改造で最終形態として
原チャリはアメリカンバイクのサイドカー付にまで変身してしまった。
「あら!コレ良いわね。ジュン様、今度私を乗せて遠出して下さいね」
と軽く女将がお願いしたものだから、我先に乗せろと皆に強請られる事になる。
結局三日も出発が遅れ大急ぎで北の平原に向うボク等の一向。バイクも快調に
進み問題なし。約半日で目的の地『北の平原』に辿り着く事が出来た。
「お姉様、今夜は此処で陣を張りましょう。馬車に設置した魔物避けのランプが
在れば、夜襲の恐れも少なくて済みそうですね」
「うん。問題は夜盗の類だけど、安全の為夜警は交代で行なおうね」
幌馬車から陽よけを伸ばし僕のインベントリからテーブルセットを取り出せば
優雅なBQスタイルの完成である。川も近くに在るから五右衛門風呂まで
使えそうだ。初めてのチョット遠出の遠征も気楽なキャンプに早変り。
明日から元気良く狩に集中しようと今夜は早めの就寝となりました。
交代で夜警に立ったものの魔物避けのランプの成果は絶大で今夜は静かな夜を
迎える事が出来た。長椅子ベットも寝心地は悪くない。こうしてボク等は元気に
朝を迎える事が出来ました。
「次、後方から来ます」
気配を察知しアデルが警告する。初めて向き合う魔物の気配はアデルでも
正体までは判らない。当然マギーを釣り役なんかさせられず、ボク等は
向ってくる魔物を順番良く狩るだけだ。
「負けるか!」
気合と共にカリンがガン!と大盾を奮い注意を引けば、アインがハルバートで
魔物の行く手を誘い込む。マギーの弓も正確さを取り戻し、ビシビシと眉間に
矢が突き刺さっていく。ボクも負けじと火炎魔法や氷魔法でガシガシと魔物の
体力を削り落として行った。
「グォォ~」
断末魔を挙げながら今日8体目の『陸オオトカゲ』を仕留める事に成功する
ボク等。『北の平原』初日快調な滑り出しで成果を重ねるボク等だった。
十六話 「移動には魔導具が性に合う」 完
いかがでしたか?




