二話 「失ったモノへの喪失感は大きい」
二話目です
本日二度目の投稿です
「うはっ!本物だよコレ!」
豊満なオッパイ。夢にまで見たオッパイ。それを誰に気兼ねする事無く自由に
触る事が出来る。否!今まさに触っている。モミモミしている…自分の胸を…
「かぁ~何やってんだ!俺は!? でも気持ちいい~ぃ!」
1人草原で馬鹿な事をしている俺は、一頻満足すると同時に虚しさが走る。
確かに好きな時に好きなだけ触れるオッパイを手に入れた感激は大きい。だが、
無いのだ。…在るべきモノが今の俺には無い…それが辛く寂しく悲しい。
17年連れ添って一緒に育ってきたのに…オッパイを手に入れた為に失ったモノ
は俺にとって大きな喪失感を与える。
「嫌々、こんな馬鹿な事をしてる場合じゃないな。コレってやっぱり、俺は…
転移したって事だよな!?それも、此の服から見ると『グリッド・アース』
っぽいケド…まさか、あれはゲームだし…それに瞳はどうなったんだ!?
…もしかしたら同じく転移してるのかな?無事だと良いけど…探さなきゃな!
俺が女に成ったんなら、アイツは男か?…あぁ~それも嫌だな…
やっぱアイツは女の子のままが良い」
1人納得し整理する俺。ここで仮説を立てて行動する事にした。
もしこの世界が『グリッド・アース』に似た世界なら…そう思いながら純一は
色々と試す。胸以外に触れたり、何も無い空間をスマホを弄る様な仕草をしたり
してみた。
ピポン♪と聞きなれたウィンドウが開く音と共に目の前の空間にステータス画面
とインベントリ画面が開いた。
名前 ジュン 性別 ♀♂
年齢 17歳 職業 なし
基本LV 01 職業LV 00
体力 『060/060』 魔力 『010/010』
固有スキル
『話術』『転職』『天性の瞳』
「おっ!マジでここってGEって事かよ?」
固有スキル『話術』とは仲間の勧誘やら物品の売買、人との交渉ごとで有利に
働くスキル『天職』は、前職に身に付けた職業スキルが使える事とボーナス付与
も、そのまま加算されるスキル。
どちらもそこそこレアスキルだ。固有スキルはランダムで付与される為、
サブキャラを作る際、何度も作り直した事が在った。『天性の瞳』は初めて見る
スキル。説明書きも無い。
「あぁ~この辺の所がGEの違いって事か!?となると、まんまゲームって
事じゃ~無いのかもしれないな。それより…この♀♂のマークって何だよ!?
普通性別はどっちか1つだろ!?…あっ!今の俺って見た目は女で中身は男
って事か…なるほどな。こりゃ~衣装代に金が飛びそうだな」
純一がGEに入れ込んだ理由の1つに女性キャラの装備だ。ハッキリ言って
エロイ!高校生男子にとって、それが0と1が作り出した虚像だと知っていても
満足に足りる満足感と高揚感を与えてきた装備品の数々。値が張る毎に夢が
膨らんで居た品々。それが現実となって観覧できる喜びに胸膨らませる。
ネカマと思えば気が楽になった。現実世界でもネカマだと要らないアイテム
とかを偶にくれる奴も居た。以外に便利かもと思う事にする。
次にインベントリに何が在るか確かめる。
「えっと、初期の剣に村人の服…おぉ!初期魔法一式揃ってるじゃん!
儲け!儲けたぜぇ~。高いんだよな魔法の巻物って。で?どうすれば
覚えられんだ?…とりあえず読んで見るか」
現実ならここで、○ボタンを押せばアイテムが取れたり、自動装着したりする
のだが、ここは変った現実世界。頭に念ずるとボタンを押した事と同じに成る事
を知った。つまり思い浮かべるだけで、着替えやらアイテムが手元に現れる
この辺は慣れ親しんだゲームに似ていた為に、死んだと云う実感よりも生身で
ゲームを体験できる喜びと感動がジュン(純一)の気を紛らわせていた。
「さて!LV1の状態じゃ魔法なんて使えば直ぐに倒れるな
…最低LV5まで剣で狩りでもするか」
こうして廃人プレーヤージュンの行動が始まる。
残念な事にオートマップは装備して居無い。最初の街で巻物が売っている
かもしれない。不安は在るけれど、期待しながらレベルアップを図る事にした
30分も歩かないウチに最初の獲物『大鼠』を発見。直ぐに狩りに掛かる。
…その10分後
「うぇ~」
思いっきり吐いているジュンの姿がそこに在った。
肩で息を切らし、ずたボロな姿、HPを微かに残し、胃の中が空っぽだのに
激しく嘔吐する
「ま、マジかよ~ゲームと違ってリアルはキツイな~。
それに…マジで血飛沫とか信じらんねぇ~。キショい!」
ゲーム世界では尤も雑魚キャラな『大鼠』。向ってくる殺気。死にたくないと
相手も必死だ。それがジュンをこの世界が現実だと思い知らされた。
辺りは大鼠の捲いた血汐で生臭い。頭にこびり付く悲鳴と血飛沫の記憶。
自分がほんの少し前に殺された事を無理やり思い出させやがる。
「やべぇ~マジやべぇ~。でも此処を乗り越えないと、俺直ぐに死んじゃうな」
萎える心に鞭打って、耐えながらも大鼠の狩りを続ける。唯一の救いは戦利品を
得る作業が要らない事だった。生暖かい大鼠に触れる事無く『回収』と念じれば
勝手にインベントリに収納され解体される。お蔭で手を汚さず『鼠の小牙』と
『鼠のモモ肉』をそれぞれ5個ずつ所有していた。
「さて、成長の度合いはどうだ?」
ゲームの世界ならソロソロLV3位に育っている筈とステータス画面を開く
名前 ジュン 性別 ♀♂
年齢 17歳 職業 なし
基本LV 05 職業LV 00
体力 『120/160』 魔力 『060/060』
剣LV 05
「以外に成長率高いな。それに数値もゲームより伸び率が良いな。
これなら、もう少し育ててから町に向った方が良いかもしれないな」
そう考えを纏め、更に小1時間狩りを続ける事にした。途中から魔法を使い
獲物も角兎に切り替える。町での取引価格は兎の角が割高なのだ。
結局2時間程狩りを続けた結果
名前 ジュン 性別 ♀♂
年齢 17歳 職業 なし
基本LV 10 職業LV 00
体力 『200/210』 魔力 『120/150』
剣LV 07 初級火属性LV05 初級水属性LV04
初級風属性LV04 初級土属性LV04
まで成長を遂げていた。オマケにインベントリには『鼠の小牙』が10個
『鼠のモモ肉』が8個。『兎の角』が7本に『兎の毛皮』10枚。
『兎の胸肉』と『兎のモモ肉』はどちらも5つだ。
オマケに『白兎の毛皮』1枚も在った。白兎はレアモンスターだ。兎を狩り
続けると希に現れる。だが、ゲームではこんな少ない数で現れたとは聞いた事
が無く、ジュンは喜んでいた。
「さて、そろそろ…町に向うか…どっちに進むか…なっと」
二話 「失ったモノへの喪失感は大きい」 完
如何でしたか?