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十三話  「冒険者ギルドからのお願い」

13話目になります


全身、特に内側の毛並みが柔かいアデルを、モフモフしながらボクはゆっくり

目を覚ます。気付けば隣で寝ていた女将ヘイゼルの姿は無い。

微かに廊下でカチャカチャと食器を運ぶ女中達の気配を感じる


「おはようございます」


アインは既に起きていて身支度を整えていた。ボクの動く気配で彼女は声を

掛けたのだ。


「おはよう」

とボクもアインに答えベッドから起き上がった。


「アインは早いんだね」


「すみません起こしましたか?」


いやいや、そんな事は無いと会話を重ねていると、次にアデルが目を覚ます。

主人より後に目覚めた引け目がバタバタと身支度を整えるアデル。

そう慌てなくても大丈夫。ホラ!と慌てるアデルにグウグウ寝てるマギーに

視線を送ると、呆れるやらホッとするやらの表情を浮かべ、優しくマギーを

起こしに掛かった。


「マギー。お姉様より後に起きるとは何事ですか。」


アデルの言葉にパチンと眼を開き、俊足を活かした動作で着替えを済ませた。

結局、身支度を整えるたのが一番最後だったのはボクだった。


朝食はいつもの様に食堂で済ませた。但し夕飯は、今日も夕方の鐘の音の後

女将の自室で取るようにと言われる。どうやらボク達は、客であって客でない

対応に成ったらしい。


「今朝の予定は…ギルドに呼ばれてましたね。一体何の用件でしょうかね」


アデルが秘書紛いにボクに予定を確認しながら疑問を投げ掛ける。


「あ~この前の事件の事後処理に関係してるんだろうね。もしかしたら奴隷

 にされた人達が、売られ先で揉めてるのかも?救出作戦に参加するのかな?」


幾らここで話をしてても答えは出ない。早々に僕らはギルドに向う事にする。


ギルドに着くなり2階の個室に通された。既にソコには数人の人影が待っていた


「おはよ~ジュンちゃん。朝早くから悪いわね。

 それに皆も付き合わせて、ごめんね」


少しも悪びれた様子も見せず声を掛けてきたのは、ギルド職員のケリーさんだ。


「いえいえ。狩に出かける時間と大差ないですから気に為さらずに。

 で!今朝のご用件は何でしょう?」


ケリーさんと言葉を交わしているとGMギルド・マスターケビンさんが(彼はケリーさんの旦那で

表のリーダー。裏は奥さんであるケリーが牛耳っている)話を切り出す。


「うむ。実はお主に会わせたい者がおってな、横に居るカリンがそうだ」


GMにカリンと呼ばれる一人の女性。背丈は粗ボクと同じ、身体の線はボクより

細い気がする。ソレなのに、あ~それなのに…ボクが出逢った女性達の中で、

尤もオッパイの大きな女性。それが呼ばれて現れた女性『カリン』だ。


「大凡見当は付いていると思うが、この女性は例の事件の被害者だ。

 但し、最も最近騙されたばかりで特に酷い目には遭っていなかったようで、

道具屋の地下室に監禁されて居ったのじゃ。本人はこのまま冒険者を

続けたいらしい」


大まかな話の経緯を話すGM。


「でね、ウチとしてはやる気のある新人は、そのまま頑張って欲しいし後押しも

 したいって事で、それなら安心出来る人物に預けるのが良いかなって思ったの

ちゃんと、本人にも確認したんだよ。それで私達がこの娘に紹介できる人物が

貴女!って事。ジュンちゃん彼女の面倒見てくれない?」


裏GMのケリーさんの発言は、まるでボクが優秀な冒険者の様に聞こえてしまう

思わず『待った』を掛けさせる。


「ちょ、ちょっと待って下さい。ボクはまだ冒険者になって2週間も経たない

 ペーペー新米ですよ。そんないきなり新人教育だなんて無理ですよ」


「あら、大丈夫よ。その2週間足らずでGRギルド・ランクをGからDへ成長させた腕ですもの

 安心して任せられるわ。それに何と言ってもジュンちゃんトコは

女だけのPTじゃない。アデルちゃんの育成も上手く行ってる様だし。

許されるなら私も参加したいくらいよ。ね!だから引き受けて。

まだまだPTメンバー探してるんでしょ!?」


「ええぇ、まぁ~確かに回復役と盾役は探してますけど…」


「あら~カリンさん良かったわね!やっぱり貴女達は星の巡り合せだわ」


喜ぶケリーに疑問の顔を投げ掛けるボク


「ジュンちゃん。この子は大盾と打撃がメイン職なのよ。貴女の希望に適う娘

 だったのよ。あ~お姉さん心配して損しちゃった気分」


なし崩しで話が進む中一言も言葉を発しない女性にボクは尋ねる事にした。


「えっと、ボクは17歳で駆け出し冒険者で傍に居る仲間達も、ボクが

 買い集めた娘達です。オマケに二人は戦闘経験も無いから角兎の狩から

教えている様なPTなんですけど、それでもカリンさんは良いんですか?」


カリンは、ボクの言葉に大きく首を縦に振り口を開く


「私はカリン。歳は19。大盾が好きで大盾使いに成りたいと思って田舎から

 出てきました。戦闘も自己流で、連携も儘成りません。初歩から学ばせて

貰えるなら好都合です。奴隷しかPTに入れないになら

…このまま私を奴隷にして下さい」


嫌々、最後の言葉はどうだろう?態々冒険者を続ける為に奴隷に成るとか変だし

まぁ~ボクには試したい事もあるから彼女を奴隷にする気は毛頭も無く金も無い

只今、拠点確保の為、膨大な借金が膨れ上がる真っ最中だし。


「奴隷には出来ませんが、幾つか条件があります。ソレ等を聞き入れて

 貰えるなら、PT加入を認めましょう」


姿勢を但し自分の考えを述べ始める


「第一に装備品はコチラが支給します。レベルに見合ったものを、その都度

用意するつもりです。衣食住もコチラで用意します。今、宿を借りてますが、

同時に寄宿舎を改装中です。ボクのPTはソコに入って貰うつもりです。

 

二つ目に、戦利品は全てPTに寄贈してもらいます。但しお小遣いとして

毎月定額をお渡しする予定です。個人的な買い物はそれでして下さい。

当面は要相談でお願いします。現在寄宿舎で予算が厳しいですから


三つ目は戦闘に関する事ですが、役割と分担に従ってもらいます。

今回カリンさんには盾役。PTの絶対的な壁役に徹してもらいます。


四つ目は…ボクは将来レギオンを立ち上げます。ですから、初期メンバーには

是非!各PTを率いるリーダーに成って貰いたいと思ってます。


そして、最後にリーダーはボクです。ですから指示には従ってもらいますし

PT内での喧嘩、虐め、嫌がらせ等は一切禁止です。上下関係も有りません。


以上…最低5つの条件を呑んで貰えるなら、貴女を喜んでお迎えします」


言い終わるとカリンだけで無くケリーやGMケビンも開いた口が塞がらない

状態でボクを見つめていた。


「ちょ!ちょっと!ジュンちゃん。貴女今自分で何を言ったか判ってる?」

呆けた状態から最初に解けたケリーが慌ててボクに問い掛けて来た。


「ええ。しっかり理解してます。ボクは早々に力を付け、仲間を揃え旗を掲げる

 つもりです。その為の努力は惜しみません」


ボクの考えを知ったケリー。暫く押し黙って考える。そして徐に告げた

「貴女の決意…判ったわ。一月。一ヵ月後に貴方達の成長をみせて。

 それで、カリンさん貴女はこの条件を受けるの?」


「はい。お受けします。私はジュンさんのお話に賭けてみたいと思います」


十三話  「冒険者ギルドからのお願い」  完

次話は 明日9時投稿予定です

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