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八話  「祝いの品」

八話です


俺が呆けている横で、ホッと安堵しながら喜んでいる女将に俺は尋ねた


「女将これって…どう言う事ですか?」


「あぁ~ジュン様ご存じなかったのですね。獣人の幼子は、ある時期を迎えると

 著しくこの様に成変を遂げるのですよ。成長・変身略して成変ですネ。

あ~正直この数日間心配で心配で夜もオチオチ眠れませんでした。

アデル様もこれで一人前ですね。一安心ですわ。本当に良かったですね」


「ちょ!ちょっと待って下さい。獣人の成長速度が急速に伸びてある時期から

 緩やかに育って行くとは聞きました。ですが、アデルはまだ6歳ですよ

成変って、そんなに幼くして成っちゃうものなんですか?」


「えぇえぇ~~!アデル様って6歳なんですか!?!?!?」


俺の言葉に今度は女将が驚き返す。女将の言葉でステータス画面を確認すれば

確かに名前の横に思春期体ってコメントが追加されているがアデルは紛れも無く

6歳のままだ。基本レベルは18に成ってはいるが、レベルの話は女将に話しても

通じないだろう。それでも俺の可愛い妹アデルが一晩で美味しそうな少女に変身

した事を喜んで良いやら悲しんで良いやらの複雑な気分になる。


「変ですね。早くても獣人の子供は生後12~3年経たないと成変しません。

 それが6歳で、思春期体まで一気に成変するなんて聞いた事が有りませんわ

日毎にアデル様の食事の量が増えるから、もしや?とも思ったんですが

昨日お帰りになった際に前兆も無かったので、まだ先かな?って思いましたし

夜中のアレでしょ。私テッキリ呪の類かと心配してたんですけど…それでも

いきなり成変は…変り過ぎですね」


俺と女将がアレコレと話をしていると、騒ぎでアデルが目覚めだした。


「お姉…様?それに…女将さん?…どうなされたんですか?」


目が覚めたアデルは、アデルのままだった。少し身体が感覚に付いて来れない

様子だが、特に痛みや支障は無く、昨日までのアデルと何も変らない事が判ると

女将や俺だけで無く、宿の皆も一安心する。


「今日は安静を取って一日部屋に居よう。女将に頼んで食事も全部部屋で取る

 退屈かもしれないけど、我慢するんだよ」


「お姉様…心配掛けてごめんなさい…でも私元気ですよ。それに何だか力も

 増えた気分です。これで十分お姉様の護衛に専念できますね」


「ありがとう。でも、今日一日は部屋で大人しくしようね」


確かにアデルが言う通りだろう。ステータス画面に映るアデルの数値は体力が

一気に500まで増えている。力や動きも格段に上がっているだろう。

これが人と獣人の違いかと俺は感心する。


今日一日宿から外出しないと宣言すると、何かと理由を付けては女将や女中達が

部屋を訪ねてくる。皆可愛いアデルから綺麗なアデルに変ったのが嬉しいようだ

加えて中身が6歳のままだから、その分危険も増すと色々と女性陣が教えに来た


「良いですかアデル様。見た目は十分大人ですけど、変な男に引っ掛かっては

 ダメですよ。どんな優しい言葉を投げ掛ける男でも所詮魔物ですからね」


いや~確かに身体が大人に成った分、注意は必要だけど…6歳に話す言葉かな?

と俺は些か不安だ。まして俺自身が外見女だけど中身が男な訳だし…

横で聞いていると肩身の狭い気分に成るのが辛い。

丁度部屋に女将が顔を出した時に俺は行動に出た。


「女将と大人しく宿に居なさい。ボクは、へルマンさんのトコへ行って来る」

「でわ!私も」

「「ダメ」」

女将と俺のWでダメ出しが来れば流石に従うしかない。



「こんにちわ~ジュンです」


店先で挨拶すると奥からヘルマンが顔を出す。宿の使いがアデルの事を報告して

居たが改めて昨夜の侘びと礼を伝えた。


「それにしても不思議じゃな。ワシもこの歳まで生きて居るが、アデルの様な

 幼子で成変したとは聞いた事が無い…お主の『加護』…かもしれんな?」


「加護ですか?」


「なんじゃ!気付いておらんのか?お主から垣間見る不思議な力じゃ。

 ジュン。お主の成長速度も凡人に比べたら…羨まし過ぎる程の成長じゃぞ。

その加護力がPTメンバーのアデルにも影響したと考えるのが妥当じゃな

・・・まぁ~確証は無いし、老いぼれの妄想だから他言もしないし誰も信じん

だろうがな。ワシも耄碌したと指を指されるのは御免じゃ。わははっ」


ヘルマンの言葉に一瞬固まった俺だが、後に続く台詞で緊張が解ける。彼は俺の

秘密を漏らさない。遠まわしで俺に『誓い染みた言葉』をくれたのだ。

無言でヘルマンに頭を下げると彼も軽く頷いて、この話を終える。


「さて、今日来てもらった理由じゃが…う~ん困ったな、待って居れ」


そう言うと一旦席を離れ奥へ消えた。10分程すると何やら抱えて戻ってきた。


「これは?」

「アデルの成変祝いじゃ」

抱えて持ってきたのは2人分のお揃いの防具と剣だ。見た事も無いデザインだ


「ワシは道楽でこの店を開いておる。本業は鍛冶師と具足師じゃ。持って行け」


彼の言葉で俺の頭の中に1つのワードが組み上がる『炎の鍛冶師へルマン』

ゲームの世界で課金アイテムとして限定販売していたモノにそんな名前の

コメントが在った事思い出した。


「見ても良いですか?」


一声掛け鑑定メガネを取り出す俺。

防御+20・魔防+20・各属性耐+20・HP+10%と付与が付いている

品だった。買えばいったい幾らになるか判ったものではない。『家宝』と言える

レベルの鎧一式だ。剣も凄かった攻撃+30・命中+10とコチラも付与付きの

『家宝』レベルの剣だ。俺は静かに息を吐きそっと剣帯に仕舞う。


「こんな高価な品ボクでは買えません」

「馬鹿者!祝いの品と最初に言うたでは無いか。それに先行投資でもある」

「先行投資?」

「そうじゃ。お主はこの先PTメンバーを増やす。やがてそれは、チームに昇格

 するじゃろう。後は国を立ち上げるか、認めた者に剣を差し出すじゃろう。

その時、お主とその仲間の武具を作ったのがワシとなれば、

国中否、世界中にワシの名が広まる。その投資じゃ」

「でも…はい。有り難く頂戴します」


言い掛けたが言葉を止め頭を下げて素直に受け取る


「着てみて良いですか?」

「うむ。ワシも女子が着る姿は判らんからな。是非装着してくれ」


長さ約3尺半の片手剣。柄の部分から刀身の中心に赤い色が走る。

刃の厚みは薄く、弾力が在るのに折れる気がしない。

日本刀の造りに近いのかもしれないと思える。


防具は全体には革を多用した鎧だが、要所に燻銀に輝く鋼鉄が填められている。

黒く染められた革。赤いラインが走る鋼鉄部分。頭は、さり気無い額宛となり、

体のラインが強調され引き締められ、胸元は大きく開いているが肩当から伸びる

金属部分で絶対的な防護を確保。脇腹はガードされヘソ周りは見えている。

腰周りは短くフレアースカート状態だ。ブーツは膝上まであり、グローブも肘の

関節までと長い。中々のチラリズムを演出したデザインへと変貌する

(う~ん付ける前とは大きく形が変るな。やっぱりこの辺は俺の大好きなGEグリッド・アース

ままだな。あ~早くアデルに着せてぇ~)


「中々…木っ端恥ずかしいですね」

内心ほくそ笑むが、一応俺は女だ。心と裏腹の台詞を言って誤魔化した。


「おほほっ眼福、眼福。早く新しい仲間を連れて来い。同じ物を拵えてやるぞ」


ヘルマンの言葉に頷く俺。そうだ俺には瞳を捜す目的がある。多くの情報を

得るには力が必要だ。そして今時代は変革の時。誰かが意図したかは知らないが

俺は仲間を増やす覚悟を決めた。


「色々と足りない部分が多いですが、それは仲間で補います。先ずは…」

「盾と斥候じゃな。獣人だとアデルの様に早く変成するやもしれんの」

「はい。探してみます」


そう言って俺はヘルマンに深々と頭を下げて店を後にした。とりあえず名目上

これはアデルの祝いの品だ。迷わず宿に帰る事にした。


八話  「祝いの品」  完

明日9時投稿予定してます

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