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晩夏の  作者: 些細
1/2

藤堂なつ

藤堂なつは、孤独だった。

藤堂なつは、貧困に喘いでいた。

藤堂なつは、それ故に事を起こした。

魚が空を泳げないように、鳥が海中を飛べないように、彼もするべくして事を起こしたのだ。

藤堂なつは、強盗を犯した。

正式には「強盗致傷」。被害者の65歳の女性は、右足首の捻挫。軽い脳震盪。年齢からして治るのには時間がかかると検察官は眉をひそめていた。

結果は最悪。過程は極悪。それでも藤堂なつはお金も余裕もなかった。

懲役は5年以上が確定していた。が、被害者の女性からの被害届の取り下げにより早くに釈放されてしまった。

彼にとっては、少年刑務所は三食ご飯がついている天国だった。ねむる場所もあった。

それを知ってか知らずか老婆は、彼をそこから出す選択をしてしまった。


藤堂なつは罪を犯して金を得て、居住を確保しようとして、結果孤独をひどくさせてしまった。

釈放されても彼を迎える者はなく、ただ、晩夏に侘しくきこえるせみの声が、サイレンのように頭に反芻して離れないのだった。


藤堂なつは、以前住んでいた公園の雑木林のその先の、大木のベンチに向かった。その足はまるで水を含んだようにおもく、こうべは百合の花のようにしずみ、歩みに合わせてゆるく、浮いた。

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