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ローズを送り届けた後、急いでヴィクセンの部屋へと向かう。
「時間ぴったりだな。どうしたんだ?」
部屋へと迎え入れてくれたヴィクセンは、リビングであろう所へ案内してくれた。
「…訓練の内容を変えないか?」
「なぜそのような事をする必要がある?」
「今やっている訓練は、基礎的すぎる。入団して一年くらいはこれで十分だが、もっと実戦的な訓練もしなければならない。今日僕が勝てたのだって、実戦的な訓練ができていなかったにすぎないと思う。今はこの国も平和だが、一度戦争が始まれば確実に負けるだろう」
話しを聞いていく内に、どんどん顔が険しくなっていくヴィクセン。
「…わかった。しかし、俺は副団長だ。団長に相談しなければならない」
「わかった。団長はだれだ?」
「あぁ。言っていなかったか。ローズ様の婚約者である、ブリエンヌ殿下だ。しかし、相談する前に一通り内容を考えておきたいのだが」
団長がブリエンヌ殿下だとは思いもしなかったな。
「わかった。では、毎晩この時間にここで大丈夫か?」
「もちろんだ」
それから毎晩、訓練について夜が明けるまで話し合った。
「これで大丈夫か。では、明日以降で殿下のご都合にかなう日に…っておい!」
ヴィクセンの言葉を最後まで聞き取れないまま、私は倒れて椅子から落ちてしまった。
「おい、大丈夫かリオ」
声は聞こえているが、身体が動かせない。
「凄い熱じゃないか!」
額に手を当てたヴィクセンが声をあげた。
「ちょっと我慢しろよ」
そういうなり、私を横抱きにして、彼の寝室へと運ぶヴィクセン。
「や…め、ろ。触…るな」
声が聞こえているのかいないのか、ヴィクセンは私をベッドに横たえた。