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「どんなところなんだろうね?」
これから隣国マルメゾン王国に嫁ぐことになっているステラ王国の王女、マリー・ステラ・ローズは隣にいる男に尋ねた。
「さぁ。しかし、噂では良い国だと聞きました」
男にしては高い声、女性的な顔立ちをしているルークは答えた。
「リオ。2人っきりの時はいつもどうりでいいよ」
「わかった。それで、国王と王妃の評判はとても良い。王子も、顔も性格も完璧だという噂だ」
「リオは…」
「僕は大丈夫。ずっとローズの護衛を勤めていればいい。帰るように言われたら帰るだけだ」
「ダメよ!あなたは私の側にいなくてはならないわ。お願いだから、黙って消えるような真似だけはしないで」
「当たり前だろ。でもそんな事、王様や王子様の前で言うなよ。あらぬ誤解を受けることになるぞ」
どこまで本気にしているかはわからないような声でローズが答えた。
「気をつけるわ」
馬車が停まる音がした。
「着いたみたいだね。これからはONモードだよ。わかってるね?ローズ様」
「もちろん」
リオが降りた後、そのエスコートでローズが降りる。
「お待ちしておりました。到着早々申し訳ないのですが、お二人には国王と面会していただかなくてはなりません」
長い廊下を歩くと、突き当たった所にあった大きな扉が開かれた。
「カール陛下とオルタンス女王陛下がお待ちです」