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境界を越えた侵略者  作者: 白波
1.境界の向こうより
3/3

1-2 侵略者は青年の部屋に住む

 さて、軽く散歩を終えて気分を一新した昴流が家に帰ると、翼がトントンと心地いい音を立てながら朝食を作っていた。


「ただいま」

「おかえり……まったく、朝からコンビニなんてどうしたの?」

「いや、ちょっと嫌な夢を見たからさ、目を覚ましにね」

「そう。もうすぐできるからもうちょっと待っててね」


 いつも通りの朝の光景だ。

 昴流と翼の両親は第十三ブロックへ長期の出張中だ。


 そのため、家の家事全般は昴流がやっているのだが、料理だけは姉である翼が担当なのだ。


 昴流は、分かった。と言って、階段を上がっていく。


 自分の部屋の扉を開けようとしたところで、思わずためらってしまった。


「あれは……夢。だよな?」


 きっと、扉を開ければいつも通り自分の部屋だ。

 そう。壁も壊れていないし、侵略者なんて来ていない。きっと、大丈夫だ。


 自分に散々言い聞かせながら、ゆっくりと扉を開ける。


「うむ。よくぞ帰った! 人類よ!」


 昴流は勢いよく扉を閉じた。

 今、確かに黒髪ロングの女の子が立っていた。


「あれ? まだ、目が覚めていないのかな? なんかいたような気がする?」


 まだ、目がしっかりと覚めていないのかもしれない。

 顔でも洗ってこようと、考え昴流は階段を下りていく。


「おい! 人類無視するでない!」


 自分の部屋で誰かが騒いでいる気がするが、きっと空耳だ。


 昴流は、小さくため息をつきながら階段を下りて行った。




 *




 顔を洗い、軽く寝癖を直すころには翼から朝食ができたと声をかけられる。

 昴流は、いまだに眠たいのであろうまぶたをこすりながら、食卓についた。


 テーブルの上には三人分の食事が用意されていて、それぞれ目玉焼きが一枚とベーコンが三枚ずつ、そしてトーストだ。


「いただきます」

「いただきます!」

「はい。どうぞ」


 ちゃんと両手を合わせてから箸をとる。それは、目の前の女の子も同様だ。


「うむ。この目玉焼きいい具合に焼けておるの。なかなかうまいぞ」

「そう。よかったわ。どんどん食べちゃってね」

「おお! よいのか! それでは遠慮なく食べさせてもらうぞ!」

「まったく、(まい)ちゃんったら!」


 目の前で仲の良い友達のような会話をしている二人を見て、思わずほほえましくなってしまう。

 それと同時に一つの疑問が頭の中をよぎった。


「というか! なんでお前がちゃっかりと家で朝食食べてるんだよ!」

「あぁそれか。一応、姉上殿との平和的話し合いでちゃんと解決したぞ?」

「そうよ。話し合い(物理)の結果その子、昴流の部屋に住むことになったから。ちゃんと面倒を見てあげるのよ」

「なんでだよ!」


 昴流が家を出ていたのはわずか10分程度だ。

 その間になにがあったらこんな結果が生まれるのだろうか?

 まじめに問いたいが誰に聞けばいいのかもわからない。


「なんで、俺の部屋なの? 姉ちゃんのところでいいじゃん」

「いやよ。侵略者と同じ部屋で暮らすなんて……あなたは、こんなかわいい子と同じ部屋で寝れることに感謝しなさい」

「いやいや、いろいろとおかしいから。常識的に考えてよ」


 いくら宇宙人とはいえ、見た目はいたいけな少女だ。

 そんな彼女と一緒の部屋にいるなんて、いろいろな意味で大変に決まっている。


「ダメよ。その子があなたの部屋がいいって言ってるんだから」

「うむ。なんだか、命の危険を感じたのでな。お前の部屋の方が良いということだ」

「命の危険って……」


 具体的にどんな話し合い(物理)をしていたのだろうか?

 気になるところではあるが、知ったらきっと後戻りできないだろう。


 昴流は小さくため息をついて箸を置く。


「ごちそうさま」

「おい人類! 食事を残すのはよくないぞ!」

「そうよ昴流! あんまり口をつけていないじゃない! 昴流!」


 昴流はそのまま食卓を離れて自分の部屋に向かう。


 部屋の扉を開けていると、相変わらず部屋に大きな穴が開いている……ということはなく、きれいに閉じられていた。


「あれ?」

「驚いたか人類。私の魔法さえあれば、このような壁治すのは造作のないことだ」


 驚いて口をあんぐりとあけている昴流の横から、自慢げな表情を浮かべた女の子がやってくる。


「どうした? 直せと言ったのは人類。お前だぞ」

「……いろいろ追いつけない。とりあえず、おとなしく話し合おうか」


 昴流がちゃんと現実を受け入れるための提案であった。

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