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第一部 第七話

 どこかのタイミングで他の仲間も見なければならないが、一番のムードメーカーのようなサザーランドがこれだと、鉄拳制裁は無いと見るべきか。


 ただ、結構新人が入っては辞めているし、そのあたりが良くわかんない。


 そんなわけで、宿の方へサザーランドと一緒に戻ったら、なんと俺の想定と全く違った信じられない事が起こった。


「ようし、宿の部屋を取るのと 支払いも終わったし、さっそくダンジョンに行くかぁ! 」


 そうバンが喜んでいる。


 なんですと?


 ダンジョン初日は長距離を移動して来るわけだから宿で良く休んで、それで、こういうのは次の日の朝からじゃないのか?


 他のヴィクターとサーラとヨーゼフも苦笑してたが、それはしょうがねぇなって感じの顔だった。


 ケインだけが凄く驚いていて、恐らく、俺も同じ顔をしていたのだろう。


「ごめんなさいね。バンは三度の飯よりもダンジョンだから」


 サーラがそう苦笑した。


 何、その聞いたことの無いフレーズ。


 ケインも同じように困惑していた。


「おいおい、ノリノリでここまで来たんだ。こんな気持ちのまま寝るなんて無理だろ? 」


 などとバンがケインにバンバン背中を叩きながら笑った。


 うへぇ。


 変な声が出そうになった。


「すいませんね」


 そうヴィクターも笑っている。


 やはり体育会系なのかもしれん。


 恐ろしや。


「し、食事は? 」


 そう、やっと俺が話す。


 馬車に揺られていると食欲無いし、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の環境の整備のおかげで、各ダンジョンにはそれぞれ違った名物料理の店も作られた。


 俺はそれを食べるのがサポーターとしての唯一の楽しみにしていたのだ。


 ここはイボ豚の炙り焼きで有名で、それはそれは楽しみにしていたのに。


 大きなイボ豚をそのまま焼いて切り分けてくれるのだ。


「まあ、これでも食べてくれれば良いと思います」


 そうバンが苦笑しながら紙袋を渡してきた。


 イボ豚の炙り焼きの持ち帰り品かよ。


 などと、ため息をついて袋をあけたら饼(餅)だった。


 わが国では小麦粉が多く、乾パンではなく、この小麦粉の生地で作った平たい食べ物である饼(餅)を戦闘食として持っていく。


 本来はごま油で香ばしく焼くのだが、敵のモンスターに匂いでばれるので、ただ焼いただけである。


 なぜ、こんな中世ヨーロッパの様なファンタジー世界に来て、こんな中国風の兵糧食なのか頭が痛いとこだが、昔に聞いたところでは長持ちさせる為に乾パンは徹底的に水気を抜くので、逆に冒険の最中には喉が渇くので水を飲みすぎるという事で、少ししっとりしたこの饼(餅)を使うのだそうだ。


 中国の兵糧食として使われたのは唐代あたりからのはず。


 ちなみに、中国の古代兵糧食のメインはずっと粟である。


 粟は酷い痩せた土地でも作れて、不味いけど栄養価は高い。


 さらに、普通で倉庫に保管しても8年持ち、上手くすると20年以上も持つ。


 それに比べてずっと日本は糒であり。


 これはアルファ米みたいなもので、実は美味しい。


 日本人ってやっぱり白米に拘るんだろうなとつくづく思う。


 前世の話だから、今は関係ないけどさ。


「まあ、ダンジョンに入るのに匂いをさせるわけにはいかないから」


 俺が饼(餅)をかじりながら現実逃避の考えを巡らせていたら、余程がっかりして食べてるように見えたのかバンが俺を見て笑った。


 いやいや、こんな現地についた、そろそろ夕方になるのにダンジョンに普通は行くかよと言いたいけど、サポーターの立場では言えないよね。


 そう泣きそうになって黙った。


 仕方ないので、イボ豚の炙り焼きはダンジョンの後の楽しみにしよう。


 あたりに充満するイボ豚の炙り焼きの香ばしい匂いをかぎながら、皆と泣く泣くでダンジョンに向かった。



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