第二部 第七話
「やっぱり」
そう呟いた背の高い女性の冒険者が立っていた。
すごい迫力だ。
前世の近所の病院の大先生の奥さんみたいに若い女性の看護婦さんをけん制してるみたいに仁王立ちである。
腕を組んで立っているだけで、若い女性の看護婦さんや看護事務さんが次々と辞めていくらしいので、それに等しい迫力を初めてこちらの世界で感じた。
むう、高身長で、凄く引き締まった身体で、言うならば豹のような筋肉。
魔法使いなのに、恐らく剣も相当な腕だ。
パウルさんより上なのではと思ったぐらいだ。
ちなみに近所の大病院の大先生は奥様が無くなられた途端に息子さんより若い看護婦さんと再婚した。
そういう風に相手を変えるのは、ロザンネさんが生きてる限りは無理。
そう、俺の頭に深くそれは印象付けられた。
「貴方が、陛下が褒めてたテンフィンガーね? で、結論はどうなったの? 」
そう答えたが、その一言一言に変な回答をしたら、俺に死を覚悟させるくらい迫力があった。
なんてこった。
これは怪物だ。
決して逆らってはいけない。
「ええと」
俺がパウルさんを見ると目を伏せるし、アンナさんも目を伏せるし、アリアーネ嬢も目を伏せた。
それなのに、ちらちらとパウルさんもアリアーネ嬢も縋るような目で俺を見る。
汚ねぇ。
俺に振るのかよ。
「どちらなの? 」
さらにロザンネさんの巨大な威圧が倍くらいかかったような声がする。
うーん、怖すぎる。
だけど、それで浮気するのもな。
でも良く考えたら、俺、関係ないじゃん。
仕方ない、強い方に味方するか。
あると言うなら、これがアチアチカップルのアニサキスの愛の裁きだ。
俺がキラリと目を光らせて手を合わせた。
相手に寄り添うスキルコミニュケーターを使った。
これでロザンネさんは俺の言葉を受け入れててくれるだろう。
何しろロザンネさんが一番欲しい答えを出すのだ。
俺はこのスキルコミニュケーターで相手の欲しい言葉が立ちどころに分かった。
「あの女が悪いんじゃないですかね」
俺がアンナさんを見て話す。
そもそも、これが、彼女の欲しかった答え。
こんな恐ろしいロザンネさんも彼を愛しているので彼が悪いと言う事が出来なかったのだ。
どうやら、心の抵抗があるみたい。
だから、パウルさんに寄ってきた浮気相手を恨みたいし、どちらが悪かったかどうかは、実はどうでも良いのだ。
俺は早く終わらせたい一心で、それを使ったのだ。
「泥棒猫がぁぁ! 」
欲しかった答えを貰ったロザンネは剣を抜いて、アンナの腹をさくさくと刺した。
ああ、前世の俺と同じになっちゃうんだなとしみじみ思った。
まあ、前世と違うのはギルドに優秀なヒーラーがいるのでアンナさんはすぐに治されて死ぬことは無いけど。
ぶっちゃけ、アンナさんが死なないのを知っててロザンネさんは刺したのだろう。
パウルとアンナの二人に別れる決意を即すために。
結果的に衛兵が来て大騒ぎになった。
「まあ、そう言うしかないですよね」
そう悪魔が俺に囁いた。
「悪いんだけど、女性関係が全くない俺にそういうの聞くのがおかしいし」
俺がそう肩を落として答えた。
まあまあとアリアーネ嬢が慰めてきた。
「だから、やっぱり、そういうとこで女性とそういう体験をして、そういう扱いを慣れないと駄目なのかね? 」
俺がそう呟いたら。
「それは命に関わりますよ! 」
アリアーネ嬢が俺に警告してきた。
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が俺に執着している。
それを言いたいようだが、そもそも着任の時にしか会っていないのだ。
いくら何でもあり得ないよね、そんな事。
だから、俺のアチアチカップルのアニサキスのコードネームがそこそこ有名らしいので、それを変更させない為のアリアーネ嬢の誤魔化しだと思っていた。
知らなくて良い真実を知ってしまう、その時までは。
本当の恐怖はこれから始まるのである。




