第一部 第十四話
「俺が一番バンを愛しているんだっ! 」
「いや、俺だっ! 」
「俺を選んでくれっ! 」
ヴィクターとヨーゼフとサザーランドがそう叫び続けていた。
勿論、フルチン勃起のままだ。
バンは日ごろの無邪気な陽気さは消えて、異様なものを見たように後ずさりをしていた。
「ああああ、ついに、ついに夢にまで見たっ! 」
目をキラキラさせて、サーラがそれをうっとりと見ていた。
後で聞いたら、サーラは腐女子だった。
ずっと、この展開を夢見て、待っていたんだそうな。
サザーランドの心を見た時にバンに愛を語る映像は無かったが、そう言えば、いちいちバンの子供のように無邪気で得意そうに微笑んでいるシーンはたくさんあった。
彼にとって大切な愛する人の可愛い一面だったのだろう。
そういう意味だったのか!
じりじりと熱い戦いが目の前で始まっていた。
ヴィクターとヨーゼフとサザーランドは互いをけん制しながらバンにじりじりと近寄っていた。
俺のスキルコミニュケーターで彼らの目を見ると三人ともが辛抱タマランと出ていた。
むう、何という展開!
「こ、これは、どうなるんですか? 」
ケインが動揺しまくった目で俺を見た。
「……愛の形はいろいろですから」
などと、俺が仕方ないのでキリリとした表情できっぱりと言った。
「こ、これが愛を裁くものと呼ばれたアチアチカップルのアニサキスの愛の裁きなのね」
サーラが興奮していた。
そういえば、スキルコミニュケーターで本音を引き出したらとんでもない愛の地雷を引き出してしまって、しょうがないから、愛の形はいろいろですから……とか言ってしれっと誤魔化して、その修羅場から去ってほったらかしにして帰ったりしていたな。
こんな誤魔化しをする奴が愛を裁くものとか呼ばれるとか世の中おかしいわ。
バンは三人にのしかかられて、服をびりびりに裂かれながら悲鳴を上げてダンジョンのさらに奥の奥に走っていった。
勿論、ヴィクターとヨーゼフとサザーランドはフルチン勃起でそれを追っかけて行った。
俺とケインは唖然として、サーラはうっとりとして、それを見送った。
しばらく俺とケインは無言だった。
それではっと俺が気が付いてサーラに声をかけた。
「……あの、もし、冒険者グループを解散するなら、これをお使いください」
俺が冒険者グループの解散申請書をサーラにそっと渡した。
誰がバンを掘るにしろ、もう元には戻れないだろうな。
そう、遠い目でバンが逃げて行ったダンジョンの深い階層の方をしばらく見ていた。
「……では、わたしはこれで」
「イッツ、クールッ! 」
サーラがうるうると俺を見て感心していた。
さっさと逃げるしかできることは無いし、サーラに解散申請書も渡してある。
俺のサポーターとしての仕事は俺の中では完了だ。
ケインはただ茫然とその場に立っていた。
彼の意識が戻る前にダンジョンをそっと出よう。
そして、入り口の係官に命じて馬を借りて早く王都に戻ろう。
そう強く強く思った。
「さらばイボ豚の炙り焼き。また次の機会に」
そう静かにぽつりと呟いて。
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数日後に王都のギルド本部に俺宛でケインから手紙が来た。
ギルドキングダムに居れなくなったバンは父親の元に逃げるように戻ると、公国を継ぐことになったそうだ。
誰が結局、彼を掘ったかは書いてなかった。
俺は手紙をふうとため息をついて仕舞うと早くこのコードネームを変えないと本気で思った。




