第一部 第十二話
「刺客です」
ケインが呻いた。
「やはりですか……」
そう俺も呻く。
暗殺するところを見られたら刺客は、俺も間違いなく消すだろうな。
戦うしかないか。
俺も仕方なく、剣に手をかける。
「やれやれ仕方ないな」
「俺達のリーダーを殺されるわけにはいかない」
そうヴィクターとヨーゼフが戦闘隊形になった。
「見たところ、なかなかの使い手だと思いますが、貴方のコードネームは誰なんです? 」
ケインがそう聞いてきた。
「いや、そんなの無いから」
「でも、ピジョンバットを使っていらっしゃる」
ケインがそう話す。
困ったもんだな。
「ひょっとして、公国の情報関係の方なの? 」
俺が呻きながら、聞いた。
そうしたら、ケインが頷いた。
本当に困ったもんである。
「言えません」
俺がそう答える。
「となると、コードネームを言いたくない系の方ですね」
ケインがそう唸る。
何でやねん。
そんな分け方あるのかよ。
「まさか……アチアチカップルのアニサキスさんですか? 」
ケインが覗き込むように聞いた。
「あああああふふふふあああああふあああふあああああああああああああ! 」
俺が叫ぶ。
なんで、そんなに有名になってんのぉぉぉ!
「な、なんだって? 」
「あのテンフィンガーの中の最強と呼ばれるアチアチカップルのアニサキスかよ」
そうサザーランドとヨーゼフが騒ぐ。
「いつから俺が最強になったぁぁぁぁぁ? 」
俺が思わず絶叫した。
もうこれで誰かばれちゃうわけだが、叫ばざるを得なかった。
いくら何でもおかしいだろうに。
怒りで震えが止まらない。
誰だ、そんなガセネタを流しているのは!
「いや、そういう世間の噂です。ヴィーゼンブルク公のお家騒動や、モラヴィアの悪魔騒動を片付けた最強のテンフィンガーだと」
ケインが冷静に話す。
「それと、愛を裁くものとか言う噂もありますよね。アチアチカップルのアニサキスさんと言えば」
サーラまで興奮気味だ。
「ええええええええええええええ? 」
変な声が出る。
どんな噂だよ。
前世は痴話騒ぎで刺されて死んだ男なのに。
「これは勝てるのでは? 確か、相当特異なスキルをお持ちとか」
「おいおいおいおいぃぃぃぃ! 」
全部バレバレやんけぇぇぇぇぇぇ!
誰だ情報をモレモレしてるのはっ!
「おおっ、ここだ」
「間違いない」
俺が叫んだせいかもしれないけど、十人ほどの黒いマントを羽織った、あからさまに特異な戦闘集団が現れた。
間違いない、手練れの刺客だ。
スキルコミニュケーションがあるせいか、俺は現状での彼我の戦力差を冷静に見分けることができた。
微妙であるが、現状ではこちらの個々の技能はともかく数で勝てないかもしれないラインだ。
絶対負けるとは言わないが、この手の連中はそうなると暗殺対象のバンだけを狙う動きを見せるだろう。
どんな犠牲を出しても、目的を果たそうとするはず。
仕方あるまい。
こうなると使うか。
「悪いんだけど、ここからの事は他言無用にお願いします」
俺がそう言って、皆に口止めをした。
すでに十人の刺客は散開して俺達を囲む動きだ。
俺はバンの周りの仲間の護衛としての忠誠心を利用するつもりだった。
「スキルコミニュケーター。我が言葉をもとにお前達の大切なものであるバンを守れ」
俺が強く念じるとともにそう呟いた。
言葉の輪が彼らの頭にすーっと螺旋を描いて入っていく。
バンの仲間たちの目が変わる。
本気の目だ。
そしてバンの仲間達がドクンと揺れた。
彼らに俺のスキルが効いた証拠だ。




