とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語- 短編・甘くてほろ苦いパンケーキ
金髪の青年が一人、甘く香ばしい匂いを漂わせながら宿屋の厨房で何やら料理を作っていた。
フツフツとパンの生地にポツポツが出てきたところで――
「よっと」
「おぉ〜! アッシュ、すごいじゃん!」
「あはは、ありがとう、アリス」
嬉しそうに笑う白髪の少女、アリスに彼はニコリと笑いながら盛り付けたパンケーキを差し出す。
最近旅の間に作っているとても甘く柔らかなパンケーキ。それはとても至福で優しい味がするそうで、それがかなり気に入っているのか、彼女はよく、僕に作って欲しいとお願いしてくることが多い。
目の前で盛られた雲のような生クリームとフルーツを乗せたパンケーキをを見てキラキラと目を輝かせる。
「今日も作ってくれてありがと!いっただきまぁーす!」
「どうぞ、お召し上がれ。にしてもそれで7つめだよ? あんまり食べすぎると、エドワードに怒られるんじゃないかい?」
「ふっふーん! いいのよ、いいのよ。だって今日エドワードはグレンと一緒に出てるんだし、お留守番は私とアンタだけじゃない。食べれるだけいーっぱい食べとくの! それに、アンタが言わなければバレないわ!」
(匂いでバレるとは思わないのかなぁ…)
上機嫌で食べているアリスを見て僕も思わずつられて笑う。彼女といると本当に飽きない。ニコニコと笑ってて、作ったものを美味しそうに食べる姿は作った身でからしても嬉しく思う。
「まぁ、まだ食べたかったらまた言いなよ。いくらでも作るからさ」
「やったわ! いっぱい食べるからね!」
「あはは、食べてもいいけど、無理して食べたらお腹壊しちゃうよ?」
「ふっふっふっ、アリスさんの無限の胃袋、舐めんじゃないわよ」
ドヤッとして笑う彼女に思わずアッシュも吹き出しそうになっているが、そのまま彼女の正面に座る。
コーヒーカップのみ置いて味わっていると、僕の顔を彼女がジッと見てきていた。
「どうしたんだい? アリス」
「え、あ、その、アンタは食べないの?」
「僕? んー、僕はいいかな」
「えー! 一緒に食べようよ!」
「僕は大丈夫だよ。だって、君が美味しく食べてる姿見てるだけで十分だからね」
そう言われたアリスは顔を真っ赤にする。耳まで真っ赤にしながらアリスは山盛りに置かれたパンケーキに隠れて小さく唸っていた。
「今日も平和だねぇ」
「そ、そうね……!」
クスクスと笑いながら可愛らしい姿を見て、僕も苦いコーヒーに口をつけながら、何ともない今日も素敵な一日を過ごす。
今回は短編の企画ということで参加させて頂きました。
もしよろしければ本編の方も見ていただけると幸いです。
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ではまたどこかでお会いしましょう。




