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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SNS時代のメリーさん

作者: K

 その男の趣味はSNS上で人を攻撃することだった。

 20代独身。アルバイトで食いつなぐさもしい日々を送る男の唯一の気晴らしが荒らし行為だった。友人もおらず家族とも疎遠なため彼にはこれ以外の楽しみがなかったのである。


 業者からアカウントを買い、気に入らない発言をしているアカウントを見つけるとクソリプを送りまくり、ブロックされても何度もアカウントを変え相手が鍵をかけるまで追い込んだ。


 そんな行為を何度も続けていたある日、男の元に一つのリプライ送られてきた。

 そのリプライには、


「私メリーさん、今○○駅にいるの」


 と、だけ書かれ、駅の写真が一枚添えられていた。その駅は男の最寄り駅だった。


 ちょうどその頃、男は割とフォロワー数の多いアカウント主とレスバの真っ最中であり、他にもたくさんの人が男にリプライを送っていた。だからそのメリーさんと名乗るリプライも多くの人の目についた。


 何故、俺の最寄り駅を知っているのか? 男は言いようのない不安を感じた。偶然の一致なのか? 男は今まで特定されるのだけはあってはならないと細心の注意を払ってきた。


 だからこれは偶然だと思い込む他なかった。男はメリーさんに返信した。


「今時メリーさんとか古すぎワロタ。てかどこの駅だよ」


 

 次の日、男は仕事で疲れて家に帰ってきた。

 スマホで再び同じ人への中傷を行おうとSNSを開いた。するとまたメリーさんを名乗るアカウント主からリプライが送られていた。


「私、メリーさん。今あなたの職場の前にいるの」

 

 男は添付された写真にゾッとした。

 そこは彼が働く物流倉庫だった。これはいったいどういうことか? 何故職場がバレているのか全く身に覚えがなかった。


 彼とレスバしていた他の人たちも面白そうな出来事に注目し始めた。

「これまじ?」「特定班怖すぎw」と言ったリプライがメリーさんのアカウントについていった。


 これはもう絶対に特定されている。

 男は確信した。他の人が見ている手前、特定されていることは隠し通さなければならない。

 もはやレスバなど頭になかった。


 次の日、男は仕事を休んで自宅アパートにいた。

 午後7時。メリーさんがまたリプライを送ってきた。


「私、メリーさん。今あなたのアパートの前にいるの」


 そこには男の住むアパートの写真が添えられていた。

 男は持てるものだけ持って逃げ出すようにアパートを飛び出した。


 その晩はアパート近くのビジネスホテルに泊まった。さすがに特定していたメリーさんとやらでも、場所が変われば困るはずだろう。

 翌日も部屋から一歩も出ずに部屋の隅でスマホを凝視しながら、そして7時がきた。


 通知が鳴る。恐る恐る通知を見る。


「私、メリーさん。今あなたの部屋の前にいるの」


 心臓が早鐘のように打ち出した。男はドアに目を向けた。添えられた写真は紛れもなくこのホテルの部屋のドアだった。再び通知が鳴る。


「私、メリーさん。今あなたの後ろにいるの」


 その画像には男の後ろ姿が写っていた。

 後ろは壁のはず。じゃあこの写真は? 不意に男の首に冷たい手の感触があった。男の意識はそこで途切れた。



「しかし、これは一体どうなってるんだ?」


 翌日、ビジネスホテルに現れた刑事はその惨状に言葉を失った。

 男は死体となっていた。チェックアウトを済まさないことを不審に思った従業員が部屋に行くと男は死んでいた。


 部屋は血の海だった。

 男の首から上はもぎ取られていたのである。


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