一本目・ダンディ時計兎を探しているわ
看板が立っている。
『プリティピーマン牧場、ここから』
それが読めたのか、または読めなかったのか少女は看板を一目見て通り過ぎた。
左右にピーマン畑が広がり始めるが、少女は気にも止めず足を進めていた。
「ピーマン、ピーマンいかかがすかぁ〜」
道中にて男と鉢合わせる。
少女の歩みは止まらない。
「おっとお嬢さん、ここから先に進むならわかってるよな?」
男は少女の前に立ち塞がった。
少女は初めて男の方を見る。
男は肩紐が付いた板を持っていて、そこには山盛りのピーマンが置いてある。
「ねぇあなた、ダンディ時計兎がどこにいるか知ってる?」
少女は男に聞いた。
「ああん? 知らねぇよそんなもん。それよりもお前、ここを通りたかったらどうすればいいか分かってるのか?」
「わからないわ」
「ん〜じゃあ教えてやるよ! ここはプリティーピーマン牧場! 売ってるモノはただ一つピーマンだ! ここから先に行きたかったらピーマン買うんだょお!」
「ピーマンを買うお金がないわ」
「んだとぉ〜? シケたこと言って通ろうとしてんじゃねぇぞクソガキが!」
男が少女に掴み掛かった時、
「何やってんだこのシャバ僧がぁあああ!」
男の顎を拳が撃ち抜く。
一体誰が、いつの間に、どこから。
答えはピーマンだった。
男が売っていたプリティーピーマン。
それが手足が生えて身長150センチほどになる。
「おまえ! そんなんだからピーマンは子供から嫌われるんだよハゲ! ただでさえ人気のないピーマンの地位を落とそうとするな!!」
「す、すいません兄貴!」
「大丈夫かいお嬢さん」
「うん、大丈夫だわ」
ピーマンは笑顔で聞いた。
「お嬢さんは……ピーマン好きかい?」
「うん、大好きさ☆」
少女の笑顔に偽りはなかった。
その答えにピーマンも男も驚いた。
「……ま、まじかよ。こんな手足の生えたピーマン見てもピーマンが好きと言えるなんてどうかしてるぜ」
「黙ってろター坊! ……お嬢さん、育ちがかなりいいと見える、こんなところにくるもんじゃねぇ」
「私はダンディ時計兎を探しているわ」
少女は男にも聞いた事をピーマンにも聞いた。
「オレが知らんことをター坊が知っているとは思えねぇ。悪いなお嬢さん力になれねぇ」
「仕方ないわ」
「お詫びと言っちゃなんだが、ここから先に進みたいのなら、エモノの一つでも持っていたほうがいい。オイ、このの前の商品余ってるヤツ持ってこい」
男は返事一つで走り出し、エモノを持ってきた。
「兄貴、持ってきました」
「コイツを持っていきな」
「これは何?」
「ザ●マシンガンだ」
●クマシンガンだった。
ジ●ン公国で誕生した宇●世紀初の●ビルスーツ用マシンガン。モデルは形状からロ●ア軍のD●-28機関銃かイギ●ス軍のル●ス軽機関銃のどちらかだとされている。
銃身上部に取り付けられているドラムマガジンから120mm(もしくは105mm)弾を給弾する。射撃時は可動式のフォアグリップを握る場面が多い。またストックを使って近接戦闘を行った例も存在する。
名前の通り、本来はザ●IIと●クI用の装備であるが、『1st』本編でもグ●やド●(リッ●・●ム)が装備し、他の●宙世紀を題材にした作品にも大体登場してくる。
「いいんすか兄貴、これ流したのバレたらヤバいっすよ」
「だぁってろ! この子の目を見てみろ。迷いのないまっすぐな目を……俺たちが走り出した頃……こんな目をしてたじゃねぇか。忘れちまったのか?」
「あ、アニキィぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!!」
ピーマンの言葉に目と鼻と口からありったけの液体を漏らす男だった。
「私銃は使えないわ」
「な、なんだって!」
「な、なんだって!」
少女の体は小さく、成人男性用に考えて作られた銃は扱えるものではなかった。
「こいつは盲点だったぜ……」
「でも兄貴、これ以外のエモノは今在庫にないっすよ」
「そうか仕方ねぇ……こいつを持っていきな」
ピーマンは自身の頭を開き、そこから取り出したのは『豚足』だった。
「左後ろ足だぜ」
「ありがとうと思うわ」
「あ、あ、あ、あ、ああにき! こんな貴重なモノを渡しちまうんすかぁああああ!?」
「だぁってろター坊! コイツを扱うのはそんじょそこらの猛者じゃできねぇ。この豚足はヤバい、ヤバすぎる。俺でも、ましてやお前でも力に飲まれちまうだろう。だがな……オレにはわかる。お嬢さんの育ちの良さ。このお嬢さんなら力に飲まれず、コイツを正しく使うことがでるって確信しちまったんだ」
少女はもらった豚足(左後ろ足)をポシェットにしまった。
「それでは失礼するわ」
一礼をすると、少女は進むべき道を違えずに進み始めた。
男は敬礼をする、
ピーマンはタバコを吸い、重荷が降りた後の一服は格別にうまかった。
「そうだお嬢さん! 名前はなんて言うんだ!!」
ピーマンの問いに少女は振り返って答えた。
まつ毛の長い可憐な少女、
青いワンピースにピナフォアのエプロン、
青い瞳に金色の髪、
小さな口から紡がれた名は、
「アウバトーレ・ロドリゲス8世と名乗るわ」
「そうか、アリスか!」
「アリス、いい名前っすね!」
この長い旅で出会った者は皆、少女の事を誰もがアリスと呼んだ。
少女がダンディ時計兎と出会うまでの長い旅は、まだ始まったばかりだ。
ーー続くーー




