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第7話 ジャングル村のコーデと黒騎士

 コーデは社会見学という形でインペリウム学園を1年間、外部で単位を取る形になる。

 護衛の黒騎士はそのまま、戦闘力を買われて、ジャングル村周辺のモンスター退治やセキュリティをお願いした。


「ヒール」


 光属性の回復魔法ヒールをコーデにかけるウイル。


「これで【鑑定】の負荷が軽くなるはず」

「本当ですか? ありがとうございます」


 普段、目から発火して発光する英雄スキル【鑑定】が自動的に発動してしまうコーデだったが、ウイルがヒールをかけたことによって任意発動に切り替わる。今までの1万人以上のステータスを見ていたコーデの負担がグッと減った。コーデは感謝を覚えた。


「ウイル様には何度お礼を言っていいか分かりません」

「大丈夫。お礼は働きぶりに期待している。ジャングル村の村長として村を統治して政治利用し、そのまま帝国の皇帝の野望、世界統一を打ち砕こう」

「はいっ。お父様の王国の侵略を止め、神々のドラゴン山脈への不敬を悔い改めさせます」

「よし。手続きが終了したらさっそくジャングル村に移動しよう」


 1時間後。ウイル、コーデ、黒騎士、の3人が準備を整える。


「姫様。私はまだその男を信用できません」


 重厚で高い声を出す黒騎士。中身は女性だった。


「大丈夫です。私の【鑑定】スキルによってウイル様のステータスは確認しました。信頼できるお方です」

「失礼しました。姫様。ウイル殿。これからよろしくお願いします」


 黒騎士もインペリウム学園の1年生だったため、同じ年。ウイルはタメ口を使った。


「雇い主とはいえ、同じ年だからタメ口で大丈夫。黒騎士さん。これからよろしく」

「はいっ」


 準備が終わり、トイレを済ませると、3人で風魔法の飛行を使い、ジャングル村まで飛んだ。

 ジャングル村は帝国の僻地にある危険エリア。モンスターが多く、治安が悪い。人がほとんど住んでいないエリアだった。ウイルはジャングル村を観光地にすべく動いている。キャストを孤児や戦争被害者、難民から大量に安く雇い、食料を提供している。ジャングル村に着くと、コーデが驚きの声を上げた。


「まあ、家はまだないのですね」

「あいにくテントで生活しているものばかりです」


 ジャングル村はインフラが整っていない。電気や水道がなければ、火を起こしたり、川水をろ過して水道代わりにしたりしている。まだできて1か月のできたてほやほやの村。ウイルはコーデにジャングル村の開拓を一任した。


「最初にすべきは家をつくることです。私の【鑑定】でキャストのステータスを確認して適材適所に仕事を振り分けましょう」

「ありがとう。コーデ。できたらウイル商会の社長探しをついでにしてくれたら助かる。こっちに来て」


 ウイルはジャングル村の中央に人を集めてキャストにコーディリア=インペリウムを紹介した。会場は大騒ぎ。一国の第三皇子が僻地まで来て開拓を手伝ってくれるというので村民のボルテージが上がった。村長と認められたコーデはさっそく一人一人と対話して【鑑定】を使い、人材を適材適所に振っていく。だいぶ時間がかかりそうだった。

 そこへ黒騎士があらわれる。


「ウイル殿。少々頼みがある」

「何?」

「模擬戦をしませんか?」


 模擬戦闘。お互いが決闘方式で木剣を持ち、相手とバトルする熱い展開。ウイルは快く引き受けた。


「分かりました」


 周囲の村人がざわめき立つ。モンスターを退治していたウイルと第三皇子の護衛が模擬戦とはいえ木剣で直接戦うのだ。観戦客が増え、中にはオッズを貼り銅貨を賭けあう者まであらわれた。

 コーデが泣き顔をする。


「ひどいです。ウイル様。私も見たい」

「コーデはお仕事を頑張ってください」


 ジャングル村の中央から少し離れたところで、ウイルと黒騎士が移動する。黒騎士が誰にも聞こえないように声を落としながら疑問を口にする。


「ウイル殿は光属性なのでしたね?」

「ああ、コーデと黒騎士殿以外には、まだ知られたくない。秘密にしておいてくれ」

「かしこまりました」


 光属性は闇属性の領域で力が半減する。半減したまま全力の黒騎士とどこまで戦えるのか見物だった。

 二人が位置に着く。対面するウイルと黒騎士。両方の腕には木剣が握られている。

 村人の誰かが言った。


「始め!」


 重い鎧を着ている黒騎士が先に動いた。


「姫様の信じているウイル殿。どれほどの腕前か私の前で見せてください。ヤァ!」


 物凄い速さで突進してくる黒騎士。彼女もまた、勇者クラス。帝国の四天王にはなれないが、第三皇子の護衛を任されるほどの傑物。ウイルは本気で、黒騎士の木剣を自分の木剣でいなした。

 数度、打たれあう木剣。甲高い音がジャングル村でこだまする。魔法の使用は禁止していないが、ここで風魔法を使うのは失礼に思えた。体術だけでウイルは黒騎士に挑む。

 お互いの剣の腕は互角。光とか闇とか、男性とか女性とか、些細な事。勇者クラスの木剣での模擬戦は互角のまま続く。

 先に音を上げたのはウイルだった。防戦一辺倒になり、しりもちをついてしまう。

 すかさず黒騎士の木剣が追撃を出す。ウイルが飛び上がって左に避けると、元いたウイルの後ろの木が黒騎士の斬撃によって真っ二つに斬られた。

 追撃、追撃、追撃。黒騎士の猛攻が続く。そして、ついにウイルの木剣が折れた。


「そこまで。勝者、黒騎士様!」


 盛大な拍手が起こる。鳴りやまない雨のごとき拍手。立ち直ったウイルと黒騎士が握手する。


「私の頼みを聞いてくれてありがとう。ウイル殿。楽しい試合だった」

「こちらこそ。善戦できて良かった」

「ああ、疲れた」


 兜を取る黒騎士。ウイルと村人は驚く。黒騎士の顔は、コーデと比べても遜色ないほどのべっぴんさんだった。

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