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第5話 コーディリア=インペリウム

 ウイルはインペリウム学園の園長に会った。社会見学として3名の生徒を雇用したいと伝えた。給料はゼロ。食事や宿、粗品を渡す条件として、タダ働きしてもらう。インペリウム学園の生徒が就業体験することによって将来のキャリアを見極める意味合いが強い。また、貴族では学べない平民や領民の気持ちを知ることができる。インペリウム学園の屈指の人気イベントだった。

 中年の園長は困った顔をした。


「いきなりやってきた子どもに、私たちの大事な生徒を任せることはできません」


 信用が足らないのだ。初対面の相手をアポイントメントなしで会ってくれるだけ懐の深さが伺える。これ以上を園長に求めるのは酷かもしれない。しかし、ウイルは、ウイル商会がいかに素晴らしいかを力説した。また、ジャングル村の開拓が帝国の経済に有意義であることを熱弁した。


「そこまで言うならば生徒に直接の勧誘を認めましょう」

「ありがとうございます」


 園長に生徒の名簿を貸してもらい、ウイルはページをめくる。めぼしい生徒はいないか? 経済や経営にすぐれ、戦力となる剣士や魔法使いはいないかを血眼になって探した。


「!?」


 すると、一人の生徒の名前が目に入る。


「コーディリア=インペリウム?」

「ああ、落ちこぼれ姫ですか?」


 この国の第三皇子。帝国のトップ現皇帝の娘。王国出身のウイルでも聞いたことがある名前だった。

 園長はコーディリアのことを落ちこぼれ姫と呼んだ。一体、なぜ?


「学力も魔法の才能も平均点。そのくせ無駄なことに熱中し、帝国の政治経済に一切興味のない姿に、ついたあだ名が『落ちこぼれ姫』です」


 きっと平凡な生徒なのだろう。園長がここまで言うのはすごい。帝国が帝国で皇帝の耳に入れば罰則は免れない。


「優秀な第一皇子と第二皇子と違って、コーディリア様は一般的な才能しかおありではありません」


 園長からコーディリアのことを一通り聞く。学園きっての落ちこぼれ姫。会ってみたいと思った。


「ぜひお会いしたい。この目でどんな生徒か確かめてみたい」

「コーディリア様はきっと断られると思いますが。物は試し。呼んでみましょう」


 園長は書状を作り、魔法の鳥を召喚して、そのまま手紙を持たせて飛ばした。

 魔法の才能のある中年の男なのだと、改めて評価するウイル。コーディリアが来るまで魔法の談笑をした。園長に爵位を買う予定であるという話をすると、


「ウイル様。貴族になられましたら、ぜひ来年はインペリウム学園に入学してください。お待ちしております」


 と歓迎された。

 15分後。学園長室のドアがノックされる。


「コーディリアです。学園長様。いらっしゃいますか?」

「ああ、入ってくれ」


 第三皇子のコーディリアは平民出身の園長にも丁寧な対応をする。落ちこぼれ姫というからには横柄でお馬鹿な娘かと思ったが、一定の教育は受けているようで細かい所作はさすがだった。

 三回ノックされたドアから、見目麗しいコーディリアと護衛の黒騎士が入室する。

 スカートを持ち上げて、丁寧な挨拶をするコーディリア。


「初めまして。ウイル様。コーディリア=インペリウム。この国の第三皇子です」

「初めまして。コーディリア様。ウイル商会とジャングル村を作ったウイルと言います」


 黒髪ロングに黒色の瞳。コーディリアとウイルは握手する。目が合った瞬間、コーディリアの黒色の目が光を放ち、発火する。


(英雄スキルの具現化現象?)


 ウイルは目が光を放ち、発火する現象を知っていた。英雄のみに与えられたスキルの具現化。固有スキルだ。


(何をされた?)


 焦るウイル。握手した手を離したところ、数秒間。体に違和感はない。英雄スキルは英雄の限定スキル。知っている者は少ない。ウイルはコーディリアに直接、聞くことにした。


「スキルを発動しましたか?」

「――まあ!?」


 コーディリアは両手で口を隠しながら、驚嘆する。そして、


「学園長様。ウイル様と二人で話したい。席を外してもらって大丈夫ですか?」

「分かりました」

「黒騎士も出て行ってください」


 園長はそそくさと学園長室を出ていく。インペリウム学園の序列では上でも、世間的に見たら平民。園長は魔法のできる平民なのだ。世間的に見たら第三皇子のコーディリアの方が上だった。また、黒騎士は数秒間、コーディリアとウイルの顔を交互に見た後、困ったように頷き、そして、退室した。

 ウイルは再度、聞く。


「スキルを発動しましたか?」


 コーディリアは姿勢を正した後、自分が英雄スキルの使い手であることを認める。


「私の英雄スキルは【鑑定】です。光の君」


 【鑑定】のスキル。相手の名前や個人情報から、得意、不得意までも何もかもを見通す神の力だった。

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