第七話
黒鋼獅子の巨体が跳ね上がり、俺の頭上へと影を落とす。
「……ッ!」
反射的にその場を転がって回避。次の瞬間、獅子の前脚が地面を砕き、石片が四散した。
一撃の威力が尋常じゃない。だが、その鈍重さと力任せの動き――見えてきた。
「お前、パワーはあっても、隙だらけだな」
俺は素早く立ち上がり、足元に魔獣の脚が戻ってくる瞬間を狙った。
「跳べっ!」
低く構えて助走をつけ、一気に跳躍。黒鋼獅子の背中に飛び乗る。
「ここなら届く……!」
剣に全力を込め、獅子の首元を狙って振り下ろす。鋼の毛皮が硬く、刃が弾かれそうになるも、俺は力を込めて押し切った。
「喰らええぇぇぇっ!!」
ガリガリと火花を散らせながら、剣が肉を裂いて深く沈む。
黒鋼獅子が悲鳴とも怒号ともつかない咆哮を上げ、狂ったように暴れ出した。
だが――ここまで来たら、俺は止まらない。
「倒れろッ!!」
最後の一撃を首元に叩き込むと、黒鋼獅子はついに崩れ落ちた。
巨体が地面を揺らしながら横倒しになり、静かに消えていく。
深く息を吐きながら、俺は膝をついた。
「っはぁ……やっぱ、戦いってのは……キツいわ……」
観客の歓声が轟き、勝者としての名が再び呼ばれる。
だがその時、俺の耳に奇妙な声が届いた。
『彼が、あの"異界の者"か……』
――誰だ?
視線を巡らせるが、誰の口も動いていない。
それは、まるで……心に直接響くような声だった。




