第二十一話
……“もう一人の俺”だった。
膝をつき、手から剣が滑り落ちる。
俺は息を荒げながらも、立ち尽くしていた。右腕がしびれ、全身が痛む。それでも、まだ剣を握っていられる。
「……そうか。お前が……選ばれたか」
倒れた“俺”は、静かに微笑んでいた。
「最後まで……お前でよかった」
その言葉と共に、彼の身体は光の粒となって空へ溶けていく。
「……じゃあな」
呟く俺の目に、うっすらと涙が浮かんでいた。
――自分を倒すって、こういうことか。
玉座の男が立ち上がる。
「選別は完了した。お前こそが、この世界を超えるに相応しい“意思”」
「……それで? この先に何がある」
「次元の彼方。世界の根幹。全てを創り変える力だ」
「そんなもん……欲しくもねぇな」
玉座の男が目を細める。
「では、何を望む?」
俺は答えた。
「戦いじゃない、生き方がしたい。
誰かを傷つけ続ける力じゃなくて――誰かを守れる力が、欲しい」
静かに頷いた男は、空間に一筋の光の道を開いた。
「その選択もまた、“神”の資格に等しい」
「……そうかよ」
俺は剣を背に収め、一歩ずつ、その光の道を歩き出した。
終わった。
だが――これは、始まりだ。
バトルしかなかった俺の異世界生活。
それが、ようやく“生きる意味”に変わろうとしていた。




