第二十話
もう一人の“俺”が、ゆっくりと歩みを進めてくる。
姿形は完全に同じ。顔、体格、声、すべてが“俺”だ。
「……本当に、俺なのか」
「俺はお前の未来。可能性。選ばれなかった、もう一つの存在」
“もう一人の九条蓮”がそう呟き、剣をゆっくりと構える。
「この世界は戦いの果てに、ただ一人の“意思”を望む。お前か、俺か、どちらかが“本物”になる」
「そんな理屈、納得できるかよ……! だが、それでもやるしかないんだな」
「当然だ。俺たちは戦うために、ここまで来たんだろ?」
――分かってる。コイツは、俺だ。だからこそ容赦はできない。
「行くぞ!」
俺たちは同時に跳び出した。
剣と剣が激しくぶつかり合い、空間が震える。
互いの技、速度、反応――すべてが完璧に拮抗している。
「……やっぱり、強えな……!」
「お前も、な」
一撃、一撃が魂を削る。だが、俺の中に芽生えていた。
――あの全ての戦いは、この瞬間のためだったんだ。
ヴァルドの魔力、レオンの剣技、ユウトの暗殺術、シヴィアの疾走、オーバーロードの気圧。全てを融合させた俺の今が、ぶつかっている。
だが、“もう一人の俺”もまた、それを持っている。
「なら、あとは……」
「……魂の差、だな」
二人の声が重なり、剣が最後の軌道を描いた。
閃光。
空間が切り裂かれるような一閃が走った。
静寂。
次の瞬間、倒れたのは――




