第十五話
剣と双剣が激突し、衝撃波が霧を一瞬で吹き飛ばした。
「……ほう」
シヴィアの目が驚きを含んで細まる。俺の一撃が、彼女の防御をかすめ、切っ先が肩を裂いたのだ。
「やっと届いたか」
「否。届かせた、の間違いね」
シヴィアは口元に微笑を浮かべ、血の滴る肩を気にせず、再び構える。
――タフだな。
だが、確実にダメージは通っている。なら、このまま押し切る。
「もう一発、いくぞ……ッ!」
俺は全身の力を込めて踏み込み、剣を真っ直ぐに振るった。
だがその瞬間、シヴィアの気配が消えた。
「しまっ――」
背後。直感が告げるままに身体をひねる。
ギリギリのところで彼女の双剣を受け止めると、腕にビリビリと痺れが走った。
「いい勘してる。でも、それだけじゃダメ」
シヴィアの双剣が連撃となって襲いかかる。まるで踊るような剣技。
受けるたびに削られる体力。意識が遠のきかける――が。
「まだ……だ!」
黒鋼獅子の耐久力、ヴァルドの魔力耐性、レオンの応用剣技。すべてのスキルを一点に集中させる。
「――貫けえええッ!!」
霧を切り裂くように放った一撃が、シヴィアの懐に飛び込み、その防御の内側を突いた。
双剣が弾かれ、彼女の胸元に鋭く命中する。
「っ……く、ふふ。まさか、ここまでやるとは……」
倒れることなく、ゆっくりと膝をつくシヴィア。
「君には、“扉”を開く資格がある。……進め、神殺し候補」
その言葉と共に、霧が左右に割れ、黒い石の門が姿を現した。
俺は深く息を吐き、剣を収めた。
「……次は、どんな敵が待ってるんだ?」
疲労を抱えながらも、俺の足はすでに前を向いていた。