第十四話
シヴィアの動きは、今までのどの敵とも違っていた。
一歩踏み出した瞬間、視界からその姿が消える。
「っ……消えた!?」
反射的に背後を振り向いた。だが、遅い。次の瞬間、鋭い一撃が背中をかすめる。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされながらも地面に着地し、剣で態勢を立て直す。
「速すぎる……!」
その言葉通り、シヴィアはまるで霧と一体化したかのように自在に姿を消し、現れる。
「“神域”の敵に、常識は通用しないと思え」
淡々と告げる彼女の声が、霧の中から響く。
「だったら、こっちも常識なんて捨ててやるよ!」
俺は黒鋼獅子から得た筋力強化と、レオンの剣速スキルを同時に発動させる。
身体が限界まで研ぎ澄まされ、全神経が戦いに集中する。
「――そこだッ!」
刃と刃が交差する。
今度は受けられた。いや、ギリギリ“読めた”。
俺の成長にシヴィアの目が僅かに細まる。
「……ふふ。面白いわね、君」
言葉とは裏腹に、双剣の動きはさらに鋭さを増していく。
ただの速さじゃない。“技”が詰まった動き。
それを真正面から受け止め、切り返すたびに、俺の中の何かが確かに進化していた。
――これが、“神殺し”への入り口。
そして、この女はそれを見極める者。
「俺は通る! ここを超えて……その先へッ!!」
全力の剣を、渾身の気合と共に振り下ろした。