第十三話
ゲートをくぐった瞬間、周囲の空気が一変した。
冷たい霧のような気配に包まれ、視界は白く霞んでいる。
「ここが……“最深層”の入り口か」
足元は黒い石畳。空はない。ただ果てしない霧と沈黙が広がる空間。
だが、進むべき道だけは明確に存在していた。
一本の、黒い道。
「誰が用意したんだよ、こんな場所……」
歩き出すと、霧の中から無数の影が蠢く気配がする。
それらはまだ姿を現さない。だが、確実に“何か”がこちらを監視している。
数分歩いたところで、前方に人影が見えた。
「また誰かいるのか……!」
剣を構える俺の前に現れたのは、女だった。
銀髪に深紅の瞳、黒いボディスーツのような戦闘服をまとい、手には双剣を携えている。
その姿は一見して人間に見えるが、漂う気配は“それ以上”だった。
「ようこそ、挑戦者。私は試練の門番」
女は静かに名乗ると、双剣をゆっくり構えた。
「通行権を持つ者よ、ここから先は“神殺し”の資格が試される」
「……神殺し、だと?」
まるでゲームみたいな言葉。
だけど、この世界でそんな言葉が出るってことは、冗談じゃ済まされない。
「通るなら、私を倒して行け」
シヴィアの双剣が閃き、霧が裂けた。
「なら、行くしかねぇだろ!」
俺は剣を振り上げ、最初の“神域戦”に突入した。