プロローグ
俺、九条蓮は、気がつくと見知らぬ場所に立っていた。
……いや、立っているというより、立たされている。
「さあ、始まりました!突如現れた新たな挑戦者!名前は……九条、蓮!一体どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!」
どこからか響く実況のような声。耳をつんざく観客の歓声。
何だ、これ。
頭が混乱している俺の目の前には、獰猛な視線を放つ異形の戦士が立ちふさがっている。
「おいおい、マジかよ……」
気が付けば俺は、奇妙な剣を握りしめていた。手にしっくりくる感触がなぜか不気味に安心感を与える。
『バトル、スタート!』
機械的なアナウンスが響いた瞬間、異形の戦士が咆哮と共に襲いかかってきた。
――冗談だろ。
しかし、身体は瞬時に反応していた。剣を振り上げ、襲い来る刃を受け流す。
重い。
圧倒的な衝撃とともに、全身に痺れるような痛みが走る。
「くっ……!」
観客の歓声が一段と高まり、俺は瞬時に理解した。
これは本気の殺し合い。
どういう理屈かはわからない。
だが、今、この瞬間、俺に許されているのは――
「……戦うしか、ないんだよな?」
答える者はいない。
だったら、仕方ない。
深く息を吸い込み、俺は剣を握り直す。
バトルしかない世界で、俺の新たな人生が幕を開けた。